国民年金の保険料全額免除と納付猶予、審査基準の違いは?

 

国民年金の保険料は、平成29年度では月額16,490円。年間だと197,880円です。

この保険料は毎月納付してもいいですし、前払い、いわゆる前納も可能です。

物を買う時も同じですが、まとめて支払うとディスカウントされるのが通例です。例えば、1個150円のりんごを1個だけ買うよりも、10個まとめて買うほうが1個あたりの価格が安くなりますよね。1個だけだと150円ですが、10個まとめて買うと、1個あたり100円になる、なんてこともあります(100円だと安すぎますかね?)。

国民年金の場合は、6ヶ月分を前納する、1年分を前納、さらに2年分を前納、という3つのメニューがあります。より多く納付する方が割引額も多くなり、6ヶ月分を前払いすると1.13%割引(1ヶ月づつ納付する場合と比較して)。1年分を前払いすると2.09%の割引。2年前納だと3.95%の割引になります。

「え〜! そんなもん? しょぼいなぁ〜」と感じるでしょうが、りんごを買うのとは違いますからね。公的な支払いでのディスカウントは渋いんです。そうは言っても、40万円を銀行に2年間貯金しても利息で15,000円も付きませんからね(銀行の金利などせいぜい0.1%程度で、雀の涙よりも少ないぐらい)。そう考えれば、お得です。

2年間で15,000円割引になる国民年金保険料

国民年金保険料の「2年前納」制度|日本年金機構

 

平成29年4月から、クレジットカードでの前納もできるようになり、2年分の保険料、約40万円ほどを一気に納付すれば、15,000円ほどの保険料割引があり、さらにクレジットカードのポイントも付く(ポイントの付与率が1%だと4,000ポイント)でしょうからオイシイ納付方法ですね。

保険料の支払い方については日本年金機構のウェブサイトで説明されています。
国民年金保険料に関する手続き(日本年金機構)

さらに付け加えると、コンビニなどに納付書を持っていって支払う方法以外に、銀行の口座から支払えるPay-easy(ペイジー)も利用できるんです。ゆうちょ銀行も対応しています。

ネットバンキングからペイジー支払いで保険料を支払えば、銀行の残高から直接に支払えます。雨の日でも、夜遅くでも、ネットからポンと決済できるんですね。コレ、本当に便利です。

どうせ支払うならば、割引なりポイントなりが付く方法の方が良いですし、コンビニや金融機関に行かなくても済むペイジーもオススメです。

 

 

全額免除の基準では、全員の所得が審査対象に。


さて、国民年金の保険料には免除や納付猶予、納付特例という制度があり、基準を満たすと免除なり納付猶予を受けられます。

ただし、誰でも免除や納付猶予を受けられるわけではなく、申請すると審査があり、基準に当てはまると免除なり納付猶予されます。

まず、国民年金の保険料を全額免除されるには、所得基準を下回る必要があります。


審査する際には、【(扶養親族の数 + 1 × 35万円)+ 22万円】この計算式で判定していきます。

例えば、3人家族の世帯があるとして、本人(弟)、兄、世帯主(父親)、という3人の家庭だとしましょう。「母親はどこに行った?」というツッコミは無しでお願いします。

この場合に、弟である本人が国民年金保険料を全額免除されるには、家族3人がそれぞれ所得基準を満たしている必要があります。

本人(弟):40万円
兄:50万円
世帯主:120万円

仮に上記のような前年所得だったとします。


まず、本人の所得基準から判定します。計算式は、先ほどの【(扶養親族の数 + 1 × 35万円)+ 22万円】を使います。

(0 + 1 × 35万円)+ 22万円 = 57万円
※扶養親族はいないので0になる。

この57万円以下だと全額免除の対象になります。


本人の収入は40万円なので、57万円以下になり、所得基準を満たします。



次に、兄の所得を判定すると、計算式は本人である弟と同じで、
(0 + 1 × 35万円)+ 22万円 = 57万円です。

兄の所得は50万円なので、57万円以下となり、所得基準を満たします。


 

最後に世帯主の所得を判定すると、

(2 + 1 × 35万円)+ 22万円 = 127万円です。
■兄と弟を扶養していると仮定。

世帯主の所得基準は127万円以下で、世帯主の収入は120万円ですから、所得基準を満たします。


このように、本人、兄、世帯主、全員が所得基準を満たすと、国民年金の保険料が全額免除されます。

家庭にいる全員の所得を審査するのが全額免除の特徴です。

 


 

納付猶予ならば、本人と配偶者の所得が審査対象。


一方、全額免除ではなく納付猶予の場合は、本人と配偶者の所得で判定します。

上記の例だと、本人(弟)と兄、世帯主なので、本人に配偶者はいません。となると、本人である弟の所得だけが審査対象になります。


計算式は先ほどと同じで、

(0 + 1 × 35万円)+ 22万円 = 57万円

です。

本人の所得は50万円で、57万円以下となり、納付猶予のための所得基準を満たします。



兄と世帯主の所得は審査の対象にならず、本人が所得基準を満たしているので、この時点で保険料の納付猶予の対象となります。

全額免除は全員の所得で判断し、納付特例は本人(配偶者がいる場合は配偶者を含む)の所得で判断する。これが違いです。

この納付猶予制度ですが、平成28年6月までは30歳未満の人が対象で、平成28年7月以降は50歳未満の人が対象になりました。

 

 


免除、猶予されても、後から納付できる。


免除なり猶予を受けると、もう保険料を納付しなくてもいいだろうと思う人もいるでしょうが、後から保険料を納付しないと年金は増えません。

ただ、全額免除だと、本来の額の半分だけ年金額に反映します。とはいえ、免除された期間の保険料を後から納付しないと満額にはなりません。また、納付猶予の場合は、年金額には反映されませんから、そのまま放置していても年金は増えません。

年金を受け取るには、年金に10年以上加入している必要があります。この10年の中に、全額免除の期間や納付猶予の期間は含まれます。例えば、納付猶予された期間が3年あれば、それは10年の中に含まれますから、あと7年分、加入期間が増えれば年金を受給する資格は得られます。

ちなみに、大学生の方だと、「学生納付特例制度」を申請している方も多いでしょうが、この納付特例の期間も10年に含まれます。そのため、大学4年間を納付特例で過ごした場合は、卒業時点で年金に4年加入したことになります。

ただし、この4年間は、年金を受給する条件である10年間には含まれますが、年金額には反映されませんので、卒業時点での年金は0円です。なお、後から過去の保険料を追納すると年金の額に反映されます。

後から追納するときは、古い期間から先に支払いが充当されます。例えば、平成29年の4月から10月までの分が納付特例で処理されているとします。その後、数年経って追納するときは、先に4月分から納付していきます。「9月分と10月分から先に払うよ」と新しい方から納付してしまうと、保険料が還付されてしまいます。そのため、追納する時は「古い期間から先に」というルールです。

追納するには前もって『国民年金保険料追納申込書』を書いて、どの期間の文を追納するのかを指定します。

ここで、「追納しないというのもアリ?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、確かに追納しないという選択肢もあるにはあります。4年分の加入期間だけ作って、年金額には反映させない。

納付特例であって未納ではないので、納付するように督促は無いですけれども、追納の案内は郵便で来ます。

国民年金の半分は税金ですから、仮に月7万円の国民年金を受け取るとすれば、半分の35,000円は税金を受け取っている状態になります。国民年金は税金のキャッシュバックだと考えれば、保険料を支払って、将来時点で年金を受け取っても良いのではないかと思えます。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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