台風が来るぞ。店は臨時休業だ。


お客さんが来ないなら、店を閉める


雨が降ればお客さんが少なくなり、晴れると多くなる。天気が影響する商売は色々とあります。

レストランなどの飲食店、ショッピングセンターなどの小売店、さらには屋外のアミューズメントパーク(ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなど)、その他にも雨で来客数が減る商売はあるでしょう。

夏から秋にかけて、台風がやってくるシーズンになりますから、その時期は商売をやっている人には悩みが1つ増えます。


もし、あなたがレストランを経営しているとすれば、台風が来ると、おそらく店には閑古鳥が鳴くはず。いつも通りにお店を開けていても、来るお客さんは数名程度。いつもならばお昼の昼食時間にはお客さんが行列をなし、夜の7時を過ぎれば店の中はワイワイガヤガヤと活気が溢れるはずです。しかし、店内はガラガラ。

雨が降り、風がビュービューと吹いているのに、あえてレストランに行ってハンバーグランチを食べたいとは思いにくいでしょうし、夜のディナーで赤ワインを飲みながらサーロインステーキを食べるなんて気持ちにもなりにくいものです。


営業時間が10時から22時だったとして、いつもどおりに店を開ければ12時間営業ですけれども、台風の日に晴れた日と同じように店を開けていても、思ったようにお客さんは来ません。晴れた日ならば、来客数が300人だとしても、台風が来れば、おそらく1日で50人ぐらいまで減るでしょう。

お客さんが少ないならば、店の経営者としては、「じゃあ、営業時間を短縮するか」と考える。「明日は台風だから臨時休業にしちゃうか」なんて思ったりする。お店の従業員に対して「明日、出勤だったよね? でも、台風だから休みにしてくれる?」と伝える。

レストランに限らず、台風が来ると、アチラコチラのお店でこういうやり取りがあるものです。



 

働いていなくても給与が必要?


お客さんが来ないのですから、営業時間を短くして店を早仕舞いするのは正しいですし、臨時休業で丸々休みにしてしまうのも1つの方法です。さらに、台風が来る日に出勤する予定の人を休ませるのもアリです。

営業時間を変えたり、休みにしたりなど、それ自体は構わないとしても、そうするためには下準備が必要です。

台風がやってくる当日に出勤する人を休ませたり、営業時間が短くなったために早退させたりすれば、給与を払わなくてもいいと思ってしまうところですが、実際は給与を支払う必要があります。

例えば、10時から15時まで出勤する人を、台風を理由に会社の判断で休ませれば、5時間分の給与を支払わないといけません。また、営業時間が22時までのところ、20時で店を閉店した場合は、20時から22時までの2時間分の給与を支払わないといけなくなります。

「え? 働いていないのに給与が必要なの?」と思うところですが、契約で決めた時間は働けるようにしないといけませんので、会社の判断で勤務時間を減らした場合は、足りない時間に相当する給与を支払わなければいけないと法律で決まっています。

お店が台風で壊れて営業できなくなったならば別ですが、お客さんが少ないからという理由で臨時休業にしたり、営業時間を短縮したりした場合は、給与を支払わないといけなくなります。


ここで、あなたがレストランの経営者だとして、料理を作るための材料を仕入れる立場だとしましょう。鶏肉を100kg、ビーマンを10kg、玉ねぎを40kg、これらを業者に発注しました。納期は明後日ですが、納品日の朝になって「やっぱり鶏肉は30kgだけでいいわ」と精肉店に伝えたらどうなるか。

精肉店の人は「いや、ちょっと待って下さいよ。100kgで注文されていたから、もうモノは用意してしまっているんです。今更、変更されても困ります」と言うでしょう。

注文を受けた精肉店の立場ならば、「注文を受けたものをチャンと用意してお客さんに渡さないといけない」と思って品物を用意したのですから、直前になって数量を変更されては信頼を裏切られた形になります。

こういう場合は、注文後は途中キャンセルできませんとか、キャンセルの場合は注文額の80%をキャンセル料として頂きますという類の条件を付けて、相手からの一方的な変更を抑止します。


雇用契約でも、会社側から一方的に「いつもは22時閉店だけど今日は20時まで」と言われ勤務時間を減らされたり、「明日は台風が来るから休みで」と言われ出勤できなくなった場合には、6割以上の給与を会社は支払わないといけなくなります。実際に仕事をしていなくても。

 

 

足りない時間は他の日でフォローする


ここで、「いや、そうは言っても、お客さんが来ないのに店を開けていてもしょうがないじゃないの」と思うところです。

そりゃあ、そうですよね。お客さんが来るから店を開けるのであって、来ないならば開ける理由もなくなります。お客さんのためのお店ですからね。


じゃあ、店を休みにしてもいいよね。閉店時間を早めてもいいよね。従業員を休ませてもいいよね。そう考えるのも無理のないことです。しかし、従業員を早く帰らせたり、休ませたりしても給与は払わないといけない。

では、「じゃあ、どうするの?」と。


契約で決めた勤務時間をそのままポーンと休みにしてしまうのはダメなのですから、こういう場合は出勤時間なり出勤日を振り替えます。

もし、22時勤務までのところを20時に短縮した場合は、2時間足りませんので、他の日の勤務時間を2時間延ばします。月曜日に営業時間を2時間短縮したならば、翌日の火曜日の勤務時間を2時間長くするとか、火曜日と水曜日でそれぞれ1時間ずつ長くして2時間にするなど。不足した勤務時間を他の日で補填すれば良いのです。

また、お店を臨時休業した場合は、他の休日を出勤日に変えると、臨時休業日の勤務時間を穴埋めできます。

このように振り替えて勤務できるようにすれば、仕事をしていないのに給与を支払うことも回避できます。

いけないのは、何のフォローも用意せずに、単に閉店時間を早めたり、臨時休業したりする対応です。足りない勤務時間は他の日で補填する。これがミソです。


お店の側では、いつもの定休日を特別営業日に振り替えて営業をしてもいいですね。臨時でお店を閉めてしまったので、普段は提供していない特別なランチメニューを用意する。また、ディナー時間帯に来店したお客さんにはスープを無料で提供する。

こういう特別な出来事があると、「またこのレストランに来ようか」とお客さんは思うわけです。台風で売り上げが減っても、後からこうやって挽回するのも手ですね。

災いを転じて福となす、という言葉がありますが、都合の良いように流れを変えていけばいいのです。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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