雇用契約書と労働条件通知書、どちらが正式な書面?

 

同じものが2つあるの?


採用時に交付する書面は色々とありますが、その中には働く条件を定めた書類があります。

契約の期間、働く場所、勤務時間、休み、給与、交通費や雇用保険、社会保険に関することなど。こういったことを書面にして、使用者と労働者で勤務条件をすり合わせていくのですね。

その際に作るのが雇用契約書、もしくは労働条件通知書です。

雇用契約書は働く条件を書面化した書類です。一方、労働条件通知書も働く条件を書面化した書類です。ちなみに、労働条件通知書には厚生労働省から雛形が用意されています。これは雇用契約書としても通用するものです。

 
しかし、これだと「いや、それじゃあ、どっちの書面を作ったらいいの?」と迷ってしまいますよね。どちらも同じ書面ならば、どちらか片方だけで足りるんじゃないかと思うのは当然です。

働く条件を決めた文書を作るのが目的ですから、書類の名称は乱暴に言えば何でも通用します。雇用契約書や労働条件通知書だけでなく、勤務条件通知書という名称でもいいですし、就業条件通知書という名称でもいいわけです。労働契約書、就業契約書、業務契約書など、色々と思いつきますが、肝心なのはその中身です。

  • 契約期間
  • 就業の場所
  • 従事すべき業務の内容
  • 仕事の時間、休憩時間
  • 休日
  • 休暇
  • 賃金
  • 退職
  • 雇用保険や社会保険に関すること

これらの内容が含まれていれば、それは雇用契約書であって、その他どのような名称であっても雇用契約書として扱われるのです。ちなみに、ここでは雇用契約書という名称を使いましたが、この名称も他のものでも構わないのです。

 

 

1つの契約に2通以上の文書を作らない。


雇用契約書であれ、労働条件通知書であれ、実務ではどちらも同じものとして扱われています。

この2つの違いを説明する人もいますけれども、雇用契約書は使用者と労働者が合意した文書、労働条件通知書は使用者が一方的に渡すもの。そういう説明もありますが、このような誤差程度の違いを説明する意味はなく、肝心なのはその中身です。違いを説明してしまうと、それぞれ別の書面なのかと誤解を招きますが、どちらも同じものです。

ただし、労働条件通知書には労働者側が署名する欄や押印する欄が設けられておらず、使用者と労働者で合意した内容なのかどうかという点で疑義を生ずる可能性はあります。この点をクリアするために、労働条件通知書の題名を雇用契約書と書き直し、さらに使用者と労働者が署名、押印する欄を作るのも一案です。


文書の中身で働く条件(先ほど列挙した内容)を決めているならば、それは使用者と労働者との間で働く条件を決めた文書になります。

それゆえ、雇用契約書、労働条件通知書と2種類ありますが、どちらか片方だけを作れば足ります。

「あえて選ぶならばどっちがいいんですか?」と気にする人もいるでしょうが、好みで決めていただいて構いません。ちなみに、私が好きなのは雇用契約書です。雇用という名称の方がフォーマルな感じがしますのでこちらを選びます。

働く条件を書面化する。まずはここが大事です。社員数が増えて大きな会社になると、採用の手続きもチャンとしてきて文書を作成するのですけれども、小規模な会社やお店だと、履歴書と面接だけで採用手続きを終わらせてしまうような雑なところもあります。そういう職場では、まず書面を作るところから始めると良いですね。先ほど示した厚生労働省の雛形文書を使うのもオススメです。


雇用契約書も労働条件通知書も、両方を作ってしまうと、どちらが優先されるのか、正しいのか、混乱を招きます。

労働条件通知書を出して、その後に雇用契約書を出したとしたら、受け取った方は、「どっちが正式なものなの?」と思ってしまいます。それぞれで全く同じ内容ならば、2通も作る必要はなく、どちらか片方だけで足ります。もし、それぞれで違う内容だったら、どちらの内容が適用されるのか分からなくなりますよね。

どちらの書面を出しても構いませんが、どちらか片方だけを作るようにしなければいけません。

「ただの条件通知だから、正式な書面じゃないでしょ?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、内容は雇用契約そのものです。単に通知するだけの書面ではなく、正式な契約書になります(文書をナメてはいけない)。また、正式な契約書ならば1通で済むのに、わざわざ条件通知の書面まで出す手間をかける必要はありません。

1つの交渉に契約書が2通あれば、契約の当事者は自分にとって都合が良い方を選ぼうとしますから、契約内容に対してお互いにズレが生じます。


雇用契約書と労働条件通知書、作るのはいずれか1つだけです。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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