保険証の発行・回収が不要。健康保険証を廃止してマイナンバーカードに移行。

 

会社に入社して、社会保険への加入手続きを済ませると、後日、健康保険証を会社経由で受け取ります。

社会保険には、「被保険者資格取得」という手続きがあって、この手続きをすると、健康保険と厚生年金に加入します。ちなみに、健康保険と厚生年金はセットで加入しますから、健康保険だけ入って厚生年金には入らないという選択(逆の場合も同様)はできないようになっています。

book796(年金に加入せず、健康保険にだけ入りたい。)

資格取得届を出して(社会保険に入る手続きのこと)、その後に健康保険証が発行され、保険証は会社に届くので、会社経由で本人に渡す。本人が保険証を手に入れるにはこのような流れになっています。

この手続きですが、まず1日では終わりません。資格喪失届を出して、当日に保険証を発行してもらい、本人に渡すまで。これを1日で完結するのはなかなか大変(というよりもおそらく不可能)。

すぐに保険証が手元に来ないとなると、数日ですが、その間に医療機関を利用した場合は10割負担で建て替えておくことになります。

数日の間ですから、その時期に医療機関に行くとは限りませんけれども、保険証が手元にないと何だか不安に感じる人もいるでしょう。

社会保険に加入する手続きをして、保険証を手に入れるまでにタイムラグが生じる。現状の保険証カードを使っていると、どうしてもこの点は避けられないのです。

しかし、マイナンバーカードならば、資格取得届を出して(これも電子申請で可能)、個人データを書き換える(協会けんぽや組合健康保険に加入したとのデータを記録する)と、手続きが終わります。会社側からデータを送信して、受付側でチェックした後、本人の個人データを更新すると手続きは終わりです。これならば、1日どころか、手続きから保険証が使えるようになるまで1時間で完結してもおかしくないほど早く終わるでしょう。

保険証になるマイナンバーカードは本人が常に持っていますから、新たにカードを発行しませんし、会社経由で本人に渡す必要もなくなります。会社に保険証が届いていても、事務を担当するオネーサンが休みで、「明日に渡すわ」と言われて、保険証が手元に来るのが遅れる。

健康保険に加入していれば、健康保険そのものは利用できますから、必ずしも保険証が手元にないと困るというものでもないです。けれども、保険証を持たないまま病院に行くことに抵抗感がある方もいるはずで、「全額負担しても後から保険の分は返ってきます」と言われても、なかなか抵抗感なり不安感は払拭しにくいところなのです。

 

 

保険証を回収しない。資格喪失後の利用も防げる。


退職するときには、保険証を回収する作業があります。

退職日までは健康保険証を使えますが、その翌日以降は使えなくなりますので、会社に保険証を返します。この保険証は会社から健康保険協会に送りますから、ここでも一手間かかるわけです。

「まだ保険証が手元にあるから使っちゃえ」なんて人もいて、「コッソリ使えばバレないよね?」と思って使っちゃう人もいるようですが、利用記録は医療機関に残りますのでバレバレです。

資格喪失後(退職して社会保険から脱退した後)に健康保険を使ってしまうと、この対応も面倒です。

資格喪失後に利用される金額は、大阪で年間約10億円。東京だと年間で約30億円になります。これを全て不当利得として返還請求していくとなると、件数も多いですし、時間と費用もかかります。

健康保険協会や健康保険組合は不当利得を返還するように請求しないといけないですし、本人も後からお金を支払わないといけなくなります。

3割負担の人ならば、残りの7割を後から健康保険側が回収します。回収するには法的手続きになりますから、時間と費用がかかります。

マイナンバーカードが保険証として使えるならば、保険証を回収しなくていいですから、回収に伴う時間や費用も必要なくなります。

資格喪失届を出して(社会保険から抜ける手続きのこと)、データ(被保険者資格の保持、不保持を識別するもの)を書き換えれば、それでマイナンバーカードは保険証として使えなくなります。

予め資格喪失届を受け付けておき、データの変更を予約しておけば、日付が変わって退職日の翌日になった瞬間に健康保険証としての機能がストップします。これならば資格喪失後に健康保険を使ってしまうこともないでしょう。

さらに、被保険者資格の取得、喪失で手続きをすると、マイナポータルで受付結果を掲載する。このようにすれば、お知らせ情報として、どこの会社経由で、何月何日に雇用保険(または社会保険)の被保険者資格を取得したかを本人が確認できます。

社会保険に入っているハズなのに入っていなかったなんてことも、マイナポータルでの通知があれば防げるのではないかと思います。このようなチェック機能は大事です。

 

 

協会けんぽだけでなく、組合健保、国民健康保険でも同様に。


協会けんぽだけでなく、企業単位や業界単位で運営している健康保険組合でも保険証をマイナンバーカード化できますし、国民健康保険でも保険証をマイナンバーカードに切り替えていけます。

保険証を発行しているところが問題の原因で、保険証を発行、回収するという作業をなくせば、資格喪失後の利用を防げますし、資格取得後に健康保険をすぐに利用するのも容易です。

加入者側(本人、事業所)に回収作業をさせると、返さないまま使い続ける人が出てくるので、回収に伴うリスク(医療サービスを提供することにより発生した債権を回収できずに不良債権化)を避けられません。

組合健保や国民健康保険でも、2017年時点では保険証を発行しており、協会けんぽと同様に、発行時、回収時に問題が起こります。

 

 

医療機関にICカードリーダーを設置。


保険証を窓口に出されると、有効な保険証だと考えて受付をしてしまいますから、ここで弾くのは難しいでしょう。

しかし、マイナンバーカードならば、ICカードリーダーにカードをかざすと、ネットワークを経由してデータベースに照会し、健康保険の被保険者資格があるかどうかが医療機関の窓口で分かります。

病院の受付にICカードリーダーを置いて、そこにマイナンバーカードをピッとかざす、あとは暗証番号を入力する。これで保険証の確認と本人確認ができますし、来院の受付もできますので、医療機関ごとに個別に発行している診察券のようなものも必要なくなりますね。余談ですが、診察券を失くす人は多くて、同じ患者に対して何度も診察券を発行している病院やクリニックもあるでしょう。そういう負担もマイナンバーカードを使うとなくなります。

また、ハローワークにもICカードリーダーを置いて病院と同じように対応(雇用保険の被保険者資格を照会)できますし、年金事務所でも同様(年金の被保険者資格を照会)です。

公的な書類や手続きを省略するのがマイナンバーカードの目的ですから、行政機関でもっとガッチガチにマイナンバーカードを利用して欲しいところです。


マイナンバー関連で真っ先にやるべきなのが、健康保険証の廃止とマイナンバーカードへの移行でしょう。反対する理由を考えつかないほど便利です。

健康保険証を廃止するとなると、早くても1年ほどはかかるでしょうが、保険証を回収し、マイナンバーデータに保険証データを紐つけた後は、マイナンバーカードを保険証として使っていくのが望ましいでしょう。

発行や回収の負担だけでなく、加入する健康保険によって保険証が違うという点もクリアできます。協会けんぽ、組合健保、国民健康保険、後期高齢者医療制度、それぞれ別々に保険証を出しているのですが、これもマイナンバーカード1枚で済みますからありがたいことです。


 

 

他の書類もマイナンバーカードに集約。


健康保険証だけでなく、他の書類もマイナンバーカードに一本化する余地があります。

まず、雇用保険に加入したときに受け取る被保険者証。雇用保険は、俗称だと失業保険と言われますが、これも保険証が発行されます。昔は細長くて小さい紙で、これがまた失くしやすい。本当に小さくて、縦が3cmぐらいで、横が17cmぐらい。失くしちゃった経験がある方も少なくないはず。

雇用保険の被保険者証なんて滅多に使わないものですから、失くしやすいんです。使う場面というと、教育訓練給付制度を利用する時、あとは介護や育児で休業して給付を受ける時、さらに失業時ぐらいです。普段は押入れや棚の奥にしまっているので、いざ退職後に、「雇用保険の書類どこにいったかな?」と探し出す。これはよくあるパターンです。


年金手帳も利用頻度が低くて失くしやすい書類です。雇用保険の被保険者証と並ぶほど利用頻度は低いので、「おや? 年金手帳が見当たらないが、、、」なんてことになり、再交付の申請をする。

年金記録はねんきんネットで閲覧できますし、個人属性の情報はマイナンバーカードに紐つけて管理できます。



年金手帳や被保険者証をなくすと再交付手続きが必要ですが、これもマイナンバーカードを使っていれば紛失しません。もともと書類を発行しませんから、失くす余地がありません。さらに、再交付のための手続きそのものも不要になります。


他には、入院して手術するときに発行を申請する限度額適用認定証もマイナンバーカードに集約できます。現状では、認定証を発行してもらうには、申請書を書いて、健康保険協会に送り、3日後か4日後に限度額適用認定証が届きます。それを病院の窓口に持っていくのです。

マイナンバーカードを利用すれば、認定証を申請するのはマイナポータル経由でできますし、申請書類を出す必要は無く、マイナンバーのデータベースを書き換えれば認定の適用が完了します。もともと簡単な手続きですので、1時間どころか、早ければ30分もあれば申請から認定まで終わるのも不可能ではないでしょう。


本人通知制度の設定もマイナンバーカードとマイナポータルで対応可能です。本人通知制度とは、第三者が住民票の写しなどの書類を取得した場合、本人に取得の事実を伝えるという仕組みです。

現状だと、市町村の窓口まで行って手続きしないといけないのですが、マイナポータルで設定できるようになれば便利です。この本人通知制度ですが、初期設定で第三者が個人情報を取得できるようにしているところも問題で、初期段階では第三者が本人の個人情報を取得できない設定にしておく方が望ましいのですけれども、そうなっていません。必要であれば、後から設定を変更し、第三者による住民票の写しや戸籍に関する情報を取れるようにする。こういう細かい制御をするには、やはりマイナンバーカードとマイナポータルを使っていくのがベストです。

さらに、どこの誰が自分の個人情報を取得したのかをマイナポータルでお知らせする機能もあると安心です。


公営図書館の入館証も改善の余地があります。これも図書館ごとに個別に発行しているので、入館証を図書館ごとに作らないといけません。これもマイナンバーカードで代用して、入館ゲートにかざして中に入るようにすればいいでしょう。ゲートを設置するために費用がかかりますが、個別にカードを発行しないため入館証の管理が簡素になりますし、図書を無断で持ち出せないようにするゲートと入退館ゲートを兼用すれば費用も下がるのではないかと思います。

 


 

マイナンバーカードを紛失したらどうする?


あれもこれもマイナンバーカードに集約していくと、確かに利便性は向上します。しかし、マイナンバーカードを失くした時にどうするかが課題となります。

健康保険証、診察券、年金手帳、図書館の入館証、身分証明書など、これらを一度に全部紛失するようなものですから、紛失対策は考えておかないといけないところです。

「だったら、マイナンバーカードに集約せず、今のままでいいんじゃないの?」という考えもありますが、書類やカード、証明書の類が複数ある方が失くしやすいです。あっちに保険証、こっちに年金手帳、そっちに診察券と、バラバラに管理する人もいますので、だったらマイナンバーカードだけをガッチリと管理しておけばいいのです。

マイナンバーカードを紛失したときは、一時的にケータイ電話にマイナンバーカードのバックアップ(バックアップ用情報を固めたQRコードを画面に表示するなど。QRコードは市町村の窓口で発行)をセットし、カードが再発行されるまでそのバックアップを使っておくというのも一案です。カードが発行されれば、QRコードを無効化し、その後は新しいカードを使ってもらう。

もしくは、Apple Payのように、スマートフォン本体だけでマイナンバーカード機能を使えるようにするのも良いでしょう。カードそのものは自宅に保管しておくので紛失する可能性を低くできます。また、スマートフォンを紛失したときは、マイナポータル経由でマイナンバーカードの認証を解除して、スマートフォン経由でマイナンバーカード機能を使えないようにする。

 


 

公的手続きを簡単にするのがマイナンバーカードの役割。


ポイントカードとして活用とか、社員証として使うとか。そういう話も出てきていますが、この手の使い方は、乱暴に言ってしまうと、どうでもいい部分です。

マイナンバーカードを民間利用するのは後回しでいいですし、本人確認書類として使う場合を除いて民間利用ができなくても困りません。

他のもので代替できない部分をマイナンバーカードでその役割を担ってもらいたいですので、すでに優れた選択肢が存在するものを代替する必要はないでしょう。

ポイントカードなど数え切れないぐらい存在するし、今更、新たに1枚、新しいポイントカードができたところで利用しようとは思いにくい。

マイナンバーカードでポイントを貯めて買い物?

社員証も、すでに使っているものがあるでしょうから、あえてマイナンバーカードで代替する必要もない。

「税や社会保障の分野で利用する」という話で導入したマイナンバーですから、民間レベルでの利用に抵抗感がある方も多いはず。ポイントカードや社員証で使うという話が出てくると、「公的な手続きに限って使うんじゃなかったの?」と感じる方もいらっしゃるでしょう。

先ほど書いたように、公的な手続きや書類をマイナンバーカードで代替するだけでもまだ実現していないものが大半ですので、ポイントカードだの社員証だのと話すまでに、まずは公的レベルでの処理をマイナンバーカードに集約するのが優先です。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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