月に20時間残業、月に80時間残業。どちらがツライか。

 

残業が多いほどブラックな職場で、残業が少ないほど望ましくホワイトな職場。確かに、残業という言葉を聞くだけで、何だか体が重たい感じになるし、時間を使って余計な仕事をしているような感覚もある。

1ヶ月で20時間の残業をした。他方で、1ヶ月に残業が80時間もあった。この両者を時間数だけで判断すると、月80時間の方が負担が大きく感じる。時間差は4倍もあるのだから、しんどさも4倍だろうと推測する。

時間というのは便利な尺度で、1時間あたりナンボと評価する場面は頻繁にあります。1時間あたり何メートル、何キロメートル。1時間あたり単価がいくら。1時間あたりの売上、利益。1時間あたりの来客数。1時間あたりの料金。1時間あたりの時給。1時間あたりの生産量。

時間を軸にして何かを測定すると実に便利です。分かりやすいですし、取り扱いやすいし、数値化しやすい。


では、残業が月に20時間だった人と、月に80時間の残業をこなした人を比較して、本当に後者の方がツライのかどうか。一方で、残業時間が短かった前者はラクだったのかどうか。

仕事の時間数は計測できますし、外部の人でもその数字を評価しやすい。では、その時間を使ってどのような仕事がされていたか。つまり、仕事の密度は分かりやすい形なのかどうか。

どのような仕事に、どれだけの時間を投入したのか。多くの職場ではこの点が曖昧になります。どのように時間を使ったのかがハッキリしないのに、時間数で仕事を評価してしまう。

例えば、飲食店の仕事。お昼のランチタイム、夜のディナータイムになるとお客さんは大勢お店に来ますし、座席も満席になって席に着くまで待っていないといけないときもあります。

しかし、お昼も13時を過ぎてくると、お客さんは減り、14時にもなれば店にはお客さんがいなくなる。この時間になるとお店を閉めて、夜の営業時間になるまで休憩するところもあります。

飲食店でアイドルタイムに勤務していると、「これでお金を貰っていいのか?」と思えるほどの暇な状態。もちろん、その時間帯に働いているスタッフの数は少ないのですけれども、店を閉めた方がいいんじゃないかと思うことも度々でした。そのお店はチェーン店でしたので、お客さんが少ないからといって店を閉めたりしない方針のようで、14時から18時ぐらいまでガラガラでも店を開けていたんです。


飲食店に限らずですが、仕事というのは常に密度が一定ではなく、忙しいときもあれば、暇なときもあります。では、忙しい20時間と暇な80時間。どちらがツライのかというと、ちょっと答えにくくなります。

てんてこ舞いになった20時間は大変そうですし、たいしてやることもなく80時間もの時間を使うのも苦痛。


「長時間労働、月に80時間以上も」という類のニュースを見る機会が増えましたが、いつも考えてしまいます。確かに時間は長いけれども、その時間、どんな仕事をしていたのだろうか。忙しくても、暇であっても、残業が月に80時間以上と伝えられると、どのように時間が使われたかを検証することなく「そりゃあ、大変だ」、「なんて酷い職場なんだ」、「またブラック企業か」みたいな評価をされる。

手待ち時間に雑談をしていても、その時間は労働時間になります。お客さんが来なくてアクビをしていても、その時間は労働時間。目を瞑って居眠りしていても労働時間。道路の左端にトラックを停めて寝ていても労働時間。

どのように時間を仕事に投入しているのか。仕事の密度はどの程度なのか。残業の時間数に評価を加えるには、これらの情報も一緒でないと判断は難しい。

月20時間の残業でヘトヘトになる人もいれば、月80時間の残業でピンピンしている人もいるでしょう。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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