労災対象になった精神障害、件数が過去最多に。

 

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労災というと、仕事中に怪我をしたり、病気になった場合に利用できる制度として知られていますが、肉体的な労災だけでなく、精神的な労災も補償対象にしています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000168672.html
平成28年度「過労死等の労災補償状況」を公表

例えば、作業中に手を切ったとか、骨折したなど、業務との因果関係を証明するのが容易な事故だと、労災の認定もされやすいのです。しかし、脳や心臓関連の疾患、うつなどの精神障害の場合、業務との因果関係を証明するのが難しく、労災として申請しても認定されにくい傾向があります。

平成28年度に、精神障害を理由として労災を請求したのが1,586件。そのうち、労災が認定され支給決定されたのが498件です。認定率としては約30%で、残りは請求が却下されています。


怪我だと、どこで起こったものか、いつ起こったものか、特定しやすいんですね。例えば、職場で重たいものを運んでいるときに、手からものが滑り落ちて、足の上に落下した。その結果、足の骨にヒビが入ったとなれば、これは労災だと簡単に判断できます。

しかし、精神系の疾患だと、業務だけが原因で起こされたものとは限らないのが厄介なところなのです。普段の私生活で、何か心理的に鬱積するところがあり、さらに職場でもウンザリすることが続いた結果、精神障害を発症したとなると、これは業務上の原因によるものなのかどうかを判断しないといけないのです。

私生活上の原因と業務上の原因が混ざりあって精神障害を発症したとなると、どうやって労災の対象になるかどうかを判断したら良いのか困るわけです。

そこで利用するのが、「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」というものです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を策定

目に見える怪我ならば、これは労災、いやこれは労災ではない、と判断しやすいのですが、うつ病などの精神障害になると、判断する人の主観が入りやすく、労災認定されるのかどうかの結論が出るまで長い時間がかかります。申請から認定まで8ヶ月強もかかるケースもあるようで、業務に関連して精神疾患を発症すると厄介です。

労災案件となってしまう前に、水際で防ぐ手段として導入されたのがストレスチェック制度です。自己申告で質問に回答していくのがストレスチェックの主な内容ですが、どれほどの効果を発揮するのかはまだ未知数なものの、労災になる前に対処するきっかけを掴めるならば、それはそれで効果はあるのでしょう。

精神障害の原因となるのは、職場でのいじめや嫌がらせ、セクハラ、パワハラ、過度な長時間労働が主なところですので、これらが起こらないように対策しておくのも労災を防ぐ効果がありそうです。

 

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脳・心臓疾患の労災補償状況より)

脳や心臓疾患で労災を申請する件数が多い業種は、1位が運輸や郵便業(貨物運送)、2位がサービス業、3位が運輸や郵便業(旅客運送)です。

貨物運送というと、トラックで長距離を移動して荷物を運ぶ仕事をイメージできます。通販で購入した商品を運んでいる方々もここに含まれますね。3位の旅客運送は、旅行バスが思い浮かびます。深夜に長距離を移動するバス、数年前に事故があったスキーツアーのバスもここに含まれます。



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精神障害の労災補償状況より)

精神障害で労災請求が多い業種は、医療、福祉がトップで、次に貨物運送が続きます。

福祉や介護の業種がトップとなると、介護サービス業の仕事をしている方がここに入りますね。2位が医療業ですので、医師や看護師の方がここに入ります。




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精神障害の労災補償状況より)
時間外労働との関連性ですが、精神障害の場合は、時間外労働の多さに関わらず、労災の対象者がいます。

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脳・心臓疾患の労災補償状況より)
一方、脳・心臓疾患で労災案件になったものだと、時間外労働の時間数が80時間以上の方が大半です。


ということは、脳や心臓疾患には長時間労働が原因となっている可能性がある一方で、精神障害の場合は長時間労働以外の原因(いじめやパワハラなど)が主となっている可能性があると分かります。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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