book930(ブラック企業にならないためのチェックリスト。その1)

 

労務管理で何らかの不備があると、すぐにブラック企業と言われかねない情勢ですが、ではどうすれば問題を回避できるのか。

こういう部分で不備が多いという点をピックアップして、どういう問題が起こるのか、どうすれば防げるのか。今回はチェックリスト形式で書いてみましょう。

 

Check:採用時に約束した労働条件と採用後の労働条件に相違がない。

採用するときには、雇用契約書なり雇入契約書なり、何らかの書面で働く条件を提示します。そして、その提示された条件で働くわけですが、採用のときに提示された条件とは違った内容で社員を働かせている会社もあります。

つまり、契約と実態の間にズレがあるのが問題の核心部分です。

契約で約束した内容と実際の就労内容が合致しているのが正常で、これがズレていると、契約の方が正しいのか、実態のほうが正しいのか、スッタモンダするわけです。

例えば、1時間2000円の給与で契約したのに、働き始めると、なぜか1時間1700円になっている。こうなると、「2000円のはずなのに、なぜ1700円なのか」と揉めます。

商売のやり取りでも、契約に基づいて1つ500円で2万個を発注したのに、発注先が1つ800円で2万個と勝手に契約内容を変えてきたら、文句を言うでしょう? それと同じです。

契約と実際の就労内容を合わせる。当たり前のことなのですが、これができていない会社もあります。


 

Check:36 協定を締結し、毎年有効期間内に労働基準監督署へ届出をしている。

残業や休日労働をするには、36(さぶろく)協定という労使協定を締結する必要があり、これを締結して、書面を労働基準監督署に届け出ておく必要があります。

残業したら残業代を払えばそれでいい、というものではなく、事前にどれぐらいの残業ができるようにするのかを36協定で決めておく必要があるわけです。

例えば、1日に可能な残業は2時間まで。1ヶ月ならば27時間まで。このように、どこまで残業できるのかを決めておくのが36協定なのです。

 



Check:時間外労働が 36 協定で定めた延長時間の範囲内に収まっている。

残業の時間には限度があって、「残業代をチャンと払っているんだから、何時間でも残業できるんだ」というわけではないのです。

例えば、1日に2時間まで。1ヶ月では27時間までと決めている場合、残業できるのはここまで。これ以上、残業をした場合は、労働基準法32条違反になります。

「36協定を出しているから、自由に残業できるぞ」と勘違いしている人もいるようですが、36協定は、残業を可能にする効果は確かにありますが、無制限に残業してもいいという効果まではありません。

協定の中で、何時間までと具体的に上限を決めますから、それ以上は36協定を締結していても超えられないのです。

36協定違反は労務管理の不備でも多い箇所で、労働基準監督署からの是正指導で指摘されやすい部分です。

 


Check:労働日ごとの始業・終業時刻をタイムカード、IC カード等の客観的な記録に より確認している。

タイムカードやICカードで管理しなければいけないものではなく、その他の方法でもOKです。ただし、記録が正確であることが必須です。

タイムカードを使っているからといって、正確に時間が記録されている保証はありません。記録された時間に、カードが打刻機に入れられたというところまでは分かりますが、誰がカードを入れたのか(本人以外の者がカードに記録した可能性がある)、カードを入れるべき時間に入れたのかどうか(始業前から仕事をしていたとか、終業後も仕事を続けていたとか)、など不正な操作をする余地はあります。これはICカードを使っていても同じです。

人間が作った道具ですから、タイムカードであれICカードであれ、生体認証を使うものであれ、誤った使い方をすれば道具は本来の効果を発揮しません。

私が学生の頃に経験したことですが、市販のノートに勤務時間をボールペンで書き込む職場があって、今思い出すと、随分と経済的な方法だったなと感じます。

1冊100円程度で販売されているノートに勤務時間を自分で書く。そういうシンプルな管理方法でしたが、不正に時間が書き換えられることはなく、「勤務時間を短く書け」と要求されたこともありませんでした。

記録している情報が正確であれば、ノートでもタイムカードでもICカードでも構わないのです。正確であれば。

 



Check:自己申告制による場合、従業員に対し、適正に自己申告をするよう指導し、必要に応じて実際の労働時間と合致しているか実態調査を行っている。

タイムカードなどを使わずに、自己申告で労働時間を記録するのもOKです。ただし、これも記録された内容が正確であればという前提です。

どういう形で自己申告しているのかは職場ごとに違うでしょうが、何らかの台帳に自分で記入するというスタイルが主流でしょうか。

先ほど書きましたが、たとえ市販のノートに労働時間を自分で書き込んでいたとしても、書いた内容が正確であれば何の問題もありません。

正しく記録されていれば、手段はさほど重要ではありません。

 


Check:時間外労働が繁忙期でも最大月 80 時間以内に収まっている。

残業時間の上限に対する規制について政府内では検討されていますが、原則ラインは月45時間まで、年間で320時間まで。これが残業時間の上限になります。

ただし、臨時的な特別の事情がある場合は、さらに延長できる余地があり、年間で720時間まで、月単位では80時間以内が上限になります。

「臨時的な特別の事情」という部分が物議を醸す部分ですが、月に45時間まで、年間で320時間までのラインを超えなければ、大丈夫という水準です。

ただ、月45時間の残業でも長すぎるぐらいで、月に20日勤務するとすれば、1日あたり2時間ほど残業するわけですから、1日の労働時間は10時間ほどになります。

年320時間を12月で割れば、1ヶ月あたり約26時間ですので、36協定で残業の限度時間を設定するならば、月26時間までとしておけば、年320時間を超えませんので、安全なラインに収まります。

 

上記以外にもまだチェックポイントはありますが、別エントリーで書くことにします。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所