book909(交通費補助をゼロにすれば、通勤ラッシュは解消する。)

 

企業は当たり前のように社員の交通費を補助しているが、通勤ラッシュなり通勤時の苦痛を生み出している原因は交通費ではないか。

電車の本数が少ないとか、通勤時の人の流れがどうのこうのとか、そういうところは本当の原因ではなくて、通勤ラッシュが起こる最大の原因は通勤手当ではないかというのが私の見立て。



交通費全額補助。求人情報を見るとよく書かれていることなのですが、交通費が補助されると、人は通勤コストをタダだと勘違いしてしまう。電車やバスに乗る費用を自分で負担しないので、無料で電車やバスに乗っていると感じてしまう。

交通費が全額補助されていると、タダで電車に乗れていると錯覚し、通勤に伴うコストが無いと思い、遠い場所から職場まで移動する。

NHKの2015年 国民生活時間調査では、通勤時間の往復が平均で1時間19分。片道だと約40分かかるとのこと。

http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/20160217_1.html
2015年 国民生活時間調査

1回の通勤で、往復合計で1時間19分も捨てている。月に20日出勤するとすれば、24時間20分の時間を通勤で捨てていることになる。つまり、1ヶ月に約1日分の時間を通勤だけで浪費しているわけです。これは勿体無い。

時間、体力、気力を消耗し、後には価値が残らない。それが通勤であって、ゼロにできるならばそれに越したことはない。



平成28年度の税制改正大綱では、さらに通勤手当の非課税枠を拡大しました。以前は月10万円までが非課税だったが、平成28年4月以降は月15万円まで非課税で処理できるようになった。

https://www.nta.go.jp/gensen/tsukin/index2.htm
通勤手当の非課税限度額の引上げについて

月に15万円まで非課税にして、新幹線で通勤することまで想定しているのだが、これはもう狂気の沙汰だ。どうしてそんなに遠い場所から通勤するのか。もっと職場の近くに住まないのか。

通勤手当の非課税枠を広げれば、もっと通勤手当を出してもいいと考えるわけだから、人はもっと遠い場所から通勤しようとする。その結果、通勤環境をさらに酷いものにしてしまう。

都心から離れると、不動産コストが下がるので、借金して一軒家を買ってしまう。交通費が全額補助されるので、郊外に家を探す、もしくは新しく建てる。さらに、一軒家を買うとなると、住宅ローンを組むでしょうから、長期のローン、20年とか30年払いにしてしまう。ちなみに、フラット35は35年ローン。

そして、家を買った途端に、遠方地へ転勤になる。もう笑うしかないほどの悲劇です。



通勤ラッシュを解消したければ、交通費を支給しないのが最善の策でしょう。ただ、交通費をゼロにするだけだと困りますので、その代わりに住宅手当を支給する。

通勤手当と違って住宅手当ならば、住居に住む価値が残ります。つまり、住んでいる間はずっと便益を享受できる。交通費を補助されて電車に乗っても、便益は電車に乗っている間だけですし、あの苦痛な満員電車に乗るためにお金を払っているのですから、快適さなどありません。

通勤手当を月に5万円受け取って、苦痛を感じる方を望むか。それとも、住宅手当を毎月5万円受け取って、快適さを感じる方を望むか。あなたならどちらを選ぶか。

電車に乗っている時間よりも自宅にいる時間の方が長いはずですから、住宅手当の方が通勤手当よりも多くの便益を享受できるのは当然です。



交通費が補助されないならば、電車の乗って遠くから職場には行きません。自腹で交通費を出して職場に行くような人はまずいないでしょう。となると、半ば強制的に職場の近くに住まないといけなくなる。

交通費が出ない職場というと、さもダメで冷たい職場のように思えますが、住宅手当を出すならば、これは良い職場です。

補助の対象を賃貸住宅に限定して、住宅ローンで社員が苦しまないようにするのもいいですね。

さらに、職場から自宅までの距離に応じて住宅手当の額を増減させる。職場から近いほど手当が多く、離れるにしたがって手当が減る。こうすると、より職場に近い場所に住む方が有利ですので、なるべく職場近くで住まいを探すでしょう。手当の額も、実費の半額まで補助して、上限は5万円とか。対象者は賃貸借契約を締結している本人に。

通勤で社員を消耗させないように、徒歩、もしくは自転車で通勤させる。さらに、通勤で使う自転車の購入費を補助するのもいいでしょう。住宅手当を受け取っている人に限定して自転車購入費を補助すれば、職住近接へさらにインセンティブを強められます。



通勤するインセンティブを減退させて、職場の近くに住むインセンティブを強めていく。


以上のように、交通費を補助しなければ、通勤ラッシュは解消する。というのが私の仮説です。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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