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book883(残業の上限を月60時間、100時間にするならば、割増賃金を上げる)

 


法律違反を許すのが36協定。


「残業に時間制限を設けろ」
「一律に時間を制限するな」

この二者対立が続いているが、時間外労働に関する話をまとめておこう。


2017年3月時点では、どのような残業規制になるかというと、1ヶ月では60時間まで。年間では720時間。さらに、繁忙期は月100時間まで残業が可能になる。この線で話しが進んでいる。

この制限時間の長さをどうするかでモメているが、月60時間でも長すぎるぐらいで、1ヶ月の勤務日数が21日だとすると、1日あたり最大で3時間弱ほど残業ができることになる。フルタイム勤務の基本時間である8時間に残業を載せると、単純計算では1日12時間弱の労働時間になるわけだ。



本来は、1日8時間を超えて働いたら法律違反。また、1週40時間を超えて働いても法律違反。これが正しい判断。

1日では8時間の制限時間内で仕事を終えないといけないし、1週間では40時間の制限時間で仕事を終えないといけない。本来はこの基準だけで十分なはずなのだが、36協定という「免罪符」で労働時間に対する制限時間は形骸化してきた。

36(サブロク)協定というのは、労働基準法36条を根拠にした労使協定であるため、通称で「サブロクキョウテイ」と呼ばれる。

http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/36_kyoutei.html
時間外・休日労働に関する協定届(36協定) | 東京労働局


この労使協定で、例えば、1日に延長できるのは2時間まで。1ヶ月では27時間までという形で労使間で合意する。この場合だと、1日に法定労働時間を超えられるのは2時間まで。つまり1日10時間勤務(ベース部分の8時間を含む)までは可能というわけだ。一方、1ヶ月の場合は、法定労働時間を超えられるのは27時間までなので、仮に1ヶ月の勤務日数が21日だとすると、ベース部分の時間が8時間 × 21日 = 168時間。ここに27時間を加えて、月に195時間まで勤務が可能になる。

本来ならば、1日8時間、1週40時間を超えれば、それは違法労働なのだけれども、36協定で、法律に違反しても罰しないという特例を与えている(免罰効果)。法律違反であることは確かだけど、罰則を受けない。これが36協定の効力。法律違反を許す労使協定なのだから、冷静に考えると異常な協定だ。


さらに、36協定に特別な条件を入れ込むと、労使間で決めた制限時間を超えられる仕組みもある。これを「特別条項付き36協定」と言う。具体的な内容は、下記の平成10年告示の内容を読んでいただきたい。

ノーマルタイプの36協定ですら法律違反なのに、さらにその協定で決めた基準を超えることもできるとなると、重度の法律違反と言うべき状態になる。



黒いものを白いと言い続けて、残業するのが当たり前という価値観、雰囲気を作り上げるきっかけになったのが36協定なのだ。



平成10年の労働省告示(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf)では、法定時間外労働は月45時間(1年間では360時間)までと決めたが、2017年3月時点で話し合われている基準は、月60時間で、1年では720時間。

新基準だと、月あたり上限時間は、告示の限度時間に比して30%ほど増加し、年間だと2倍まで増加する。

今までとは違い、上限を超えた場合には罰則を付けるようなので、その点では進歩ではあるけれども、やはり時間数が長い。

平成10年告示で示した限度時間は月45時間だったので、長時間労働に対して規制を強めるというよりも、むしろ規制を緩和しているんじゃないかと感じる。

 

 



割増賃金率を上げて妥協する選択肢もある。


上限時間を引き上げていくならば、割増賃金の増加で妥協案を探るのもありだ。

法定時間外労働に対しては、25%増が基本だが、例えば月45時間を超えたら50%増にするとか、金銭的ペナルティを課すのはどうか。上限時間を下げられないならば、金銭的に制約を課すわけだ。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1e.pdf
労働基準法の一部改正法が成立 ~ 平成22年4月1日から施行されます ~

平成22年度から施行された改正法では、月60時間を超えた場合には割増賃金率が50%になるように決まった。これを月45時間まで引き下げて、平成10年告示のラインと揃える。さらに、企業規模を問わず50%割増の対象にする。

告示で示した限度時間を捨て去るならば、労働者サイドはこれぐらいの交換条件を要求してもいいぐらいだ。

上限時間を下げられないならば、割増賃金の支給率を引き上げる。これならば残業の抑止効果もあるだろうし、労働者サイドも妥協できると思う。




 

 

何をもって残業とするか。


ここからは余談だが、どういう状態を残業とするかについて書いておこう。


労務管理での残業の定義は、

「1日8時間を超えて働いたら残業」
「1週40時間を超えて働いたら残業」

労務管理での残業の定義はコレ。

例えば、1日5時間勤務の人が、ある日に、勤務時間が5時間17分になったとか、5時間44分になった場合は、これも残業と考えられているフシがあるけれども、法的には残業ではない(1日8時間を超えていないから)。

決まった時間を超えたら残業。この理解は正しいけれども、法律的な意味での残業かどうかは別の話し。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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