読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

book859(広告代理店の社員は典型的なホワイトカラー)

 

広告代理店 電通の残業実態がニュースになり、労働局が司法警察権を行使して家宅捜索するまでに問題が発展しました。

残業時間を過小に申告するのが常態化していたとのことですが、残業時間が月100時間、200時間と言われても、どこからどこまでが労働時間なのか曖昧なのがホワイトカラーの仕事。


広告代理店の仕事というと、メディアと広告主をマッチングするだけかと思いきやそうでもないのが実際のところ。

 

電通の正体

 

業界でのシェアが高まっていくと、アレもコレもと仕事が電通に回ってきて、純粋な広告代理店業務だけではとどまれないポジションになり、何でも屋のような立場になっていく。

担当する仕事の範囲が広がって曖昧になると、幾何級数的に仕事が増え、仕事の時間も青天井になる。

同業他社の広告宣伝を引き受けるのも電通の特徴で、本来ならば利益相反が起こるため同業では1社だけ引き受けるところ、2社以上引き受ける。例えば、携帯電話会社の広告宣伝をする場合、NTTドコモから発注を受ければ、同業であるKDDIやソフトバンクモバイルからの依頼は受けないようにするところ、電通だと依頼を受けてしまう。


広告宣伝の内容が同業他社に知られると効果が薄れるため、広告代理店1社につき同業から受注するのは1社だけにして情報を隔離する。しかし、電通では担当部署を分けて社内で同業他社の情報が横に流れないようにしている(詳しくは、上記『電通の正体』を参照)。

 

 

事業所の中で全ての仕事が完結するようなものではないでしょうから、取引先との会食は仕事なのかどうか。自社ではなく相手先企業のイベントに参加した場合は労働時間に計上するのかどうか。帰宅途中に飲食店に入って、ミーティングを続けるようなこともあれば、その時間は労働時間なのかどうか。


労働基準法は、工場労働のような、仕事と労働時間、成果物がハッキリと分かる仕事をベースに作られたものです。そのため、広告代理店のような裁量度の高い仕事、成果物をハッキリと把握しにくい業務、仕事の時間とそうではない時間の境目が曖昧な働き方には馴染まないのが欠点なのです。

例えるならば、子供の頃に着ていたときは、ピッタリと自分に合っていた服ですが、体が大きくなった大人になって、昔、自分に合っていた服を着ようとしても合わないようなものです。子供の頃に合っていた服は、大人になれば合わなくなってくるものです。



ホワイトカラーの仕事は何が仕事で何が仕事ではないのか。この境目の曖昧さが最大の問題点です。目を瞑って居眠りしていても労働時間、同僚とミーティングで談笑していても労働時間、取引先と会席料理を食べて話している時間も労働時間、企画内容を考えながら散歩している時間も労働時間になってしまい、右から左に労働時間として計上されてしまいます。

だからこそ、『高度プロフェッショナル労働制』というものが登場しつつあるのですが、今、このタイミングで高度プロフェッショナル労働制について話題にしても、感情的に潰されるのがオチです。ただ、労働基準法の骨格をそのまま維持して、高度プロフェッショナル労働制という特例ルールを強引に入れ込もうとしているのですから、大人が子供服を着ようとしている点は変わっていません。

長時間労働なり過労死が問題として大きくなると、高度プロフェッショナル労働制を導入する時期もさらに遅れるでしょう。


広告代理店の仕事と労働基準法は、言うなれば水と油みたいなもので、両者を馴染ませるのは至難の業です。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所