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book855(残業時間の制限には2つの勝手口がある)

 

36協定、よくよく考えると非人道的…前厚労相 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)


36協定(サブロクキョウテイ)では残業を抑止できないところか、無制限に残業ができる手段になってしまっていると指摘されることもありますが、一応ながら残業の時間には上限があります。

残業代(法定時間外労働に対する割増賃金)を支払えば、何時間でも残業はできるというわけではなく、時間数には上限が設定されています。

労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準 | 大阪労働局



例えば、1ヶ月という期間ならば、残業時間は45時間まで。仮に1日8時間で、1ヶ月に21日勤務した場合、8時間 × 21日で、勤務時間は168時間です。ここに36協定を適用すると、残業時間として45時間まで加算できるので、168 + 45 = 213時間まで働けます。


本来ならば、1日8時間、1週40時間までしか働けない(労働基準法32条。以下、32条)のですが、36協定を締結すると、勝手口ができあがり、32条の制限を超えられます。

1日9時間なり10時間も仕事をすれば、それは32条違反なのですが、36協定を締結すると32条違反ではあるものの罰則が適用されなくなります。



さらに、36協定の中に限度時間(1ヶ月の期間ならば45時間)を超えて労働時間を延長できるように特別な内容を含めると、2つ目の勝手口ができあがります。

特別な内容というのは、通常タイプの36協定とは違って、労働時間をさらに延長しないといけない臨時で特別な事情がある場合には、36協定の限度時間をさらに超えて残業できるというものです。つまり、36協定には、「通常タイプ」と「特別タイプ」の2種類があるんですね。



32条の法定労働時間が玄関口だとすると、残業の限度時間が1つ目の勝手口。さらに、36協定に特別な条件を入れ込むと、2つ目の勝手口を作れるのですね。

「1日の仕事時間は8時間までです」と言い、ピシャっと玄関口を閉める。けれども、36協定を締結すれば、玄関口とは別に勝手口を作れるので、8時間を超えた場合には、その勝手口から出入りできます。そのため、玄関口が閉まっても、「勝手口から出入りできるから大丈夫だ」と思わせてしまうのですね。

さらに、特別タイプの36協定を締結している職場だと、2つ目の勝手口を作れますので、玄関口、1つ目の勝手口、この2つが閉じられてしまっても、2つ目の勝手口がありますから、ここから出入りできます。


勝手口を2つも作れるとなると、32条で法定労働時間を定めた意味は一体何なのかと思うのも無理のないことです。玄関口をシッカリと締めても、勝手口がガバガバなのですから、玄関を締めても意味がないのですね。



労働時間に上限を設けているのに、その上限規制を抜けられる手段を用意している。どっち付かずのルールを設けると、どちらの面でもグズグズになります。

残業時間に上限を設定するならば、その上限を超えてはいけないと法律で決めてしまわないと、この問題は解決できずにずっと続きます。

限度時間のメニューも多すぎる感じがあり、1週間、2週間、4週間、さらには3ヶ月や1年という期間で限度時間が分かれているのも複雑です。

残業時間の上限は1ヶ月に45時間まで。特別条項の組み込みも禁止し、これ以上は問答無用で違法。これぐらいシンプルな制限にしないと、現場まで浸透しないでしょう。

 
季節によって繁閑の差が激しい業種(主に第一次産業)に対応するならば、業種限定で限度時間を緩和するのも妥協案として考えられます。


 

山口正博 社会保険労務士事務所
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© 社会保険労務士 山口正博事務所