読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

book854(手間が増えるだけで固定残業代に利点は無い)

 

固定残業代を勤務手当と表現しカモフラージュ。


未だに固定残業代というものが存在する企業もあるようです。今では、「固定残業代」と聞いただけで、何だか怪しい、残業代の未払いがあるんじゃないか、サービス労働があるんじゃないかと勘ぐられるほど。

固定残業代という言葉に接すると、さも残業代に上限を設定し、いくらでも残業ができるかのように思わせますが、そのようなことはできません。

名称は何でも良いのですが、営業手当とか歩合手当、勤務手当など、残業代らしくない名称でカモフラージュしている会社もあります。


例えば、とある会社では、固定残業代(「勤務手当」という名称を使っていると仮定)を月1万円支払っており、この1万円が10時間分の割増賃金に相当する場合について考えてみましょう。

2016年7月に発生した残業が6時間30分。8月は11時間の残業が発生。さらに、9月は半期決算のため19時間の残業が発生した。

この会社では、毎月、1万円の勤務手当を支給しており、それが残業代として位置付けられ、それ以外には法定時間外労働に対する割増賃金を支払っていない。



7月から9月まで残業が発生しているが、どのような問題があるでしょうか。

なお、残業するための36協定はチャンと届け出ており、協定で決めた時間数を超えていないものとします。

 

 

 

 

残業代はパケ・ホーダイちゃいまっせ。


勤務手当は10時間分の割増賃金に相当するので、7月の残業は6時間30分ですから、割増賃金は足りています。むしろ、余分に支払っているのですから、すわ「この会社はホワイト企業か?」と思ってしまうところです。

しかし、8月と9月については話しが変わります。8月は残業時間が11時間ですので、勤務手当がカバーする時間を1時間オーバー。さらに、9月は、まぁ決算ですし、忙しかったんでしょうね、9時間オーバーです。

では、ここで会社はどのような対応をするか。



「残業代はチャンと払ってるでぇ〜。勤務手当が付いとるやろ、それが残業代や」と言っちゃうのか、

それとも、

「ウチでは勤務手当を残業代として扱ってますけど、8月と9月は残業の時間が10時間を超えてますので、足りへん分は別に支払ってまっせ」

と言うのか。



対応として正しいのは後者です。前者のオッサンは、乱暴な感じの人ですね。関西風にしていますけれども、あくまで一例ですので悪しからずご了承ください。

 

固定残業代の話しをすると、残業代はそれ以上支払わなくてもいいんだと誤解する人が出てきます。しかし、割増賃金というのは、実態に合わせて支給するものですから、残業時間が11時間になれば11時間分の割増賃金が必要ですし、残業時間が19時間になれば19時間分の割増賃金が必要です。

ただ、固定した残業代を支払うことそのものは違法ではありません。上記の例だと、10時間分相当の勤務手当を支給していますが、この点は問題ありません。

問題があるのは、10時間を超えて残業が発生したときに、不足分を別途で支払わない点です。

残業代を固定で支払っても、給与を計算するときには、勤務時間を集計して、実際の法定時間外労働の時間数を把握し、その時間数に応じて割増賃金を支払います。そのため、あえて固定で残業代を支払っても、毎月の給与計算で精算するのですから、手間とリスク(残業代を未払いにしているんじゃないかと疑われる)を増やすだけで利点らしいものはありません。


常に多めに残業代を固定で支払い、実際の残業時間を上回る割増賃金を支払い続け、残業代に関する手間を省くのもアリですが、いずれにせよ給与を計算するわけですから、そのときに一緒に残業代の計算もすればいいだけです。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所