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刑務所の中で働く方がラク? 部分を見て全体を見ないヒトたち。

 

www.nishinippon.co.jp

 

刑務所内で労働している受刑者の働く時間が1日7時間という話だが、これを羨ましいと思えたら、それは言うなれば「木を見て森を見ず」な状態だ。

法定労働時間が1日に8時間までなので、企業で設定する所定労働時間もそれに合わせて1日8時間に設定しているところが多い。そのため、1時間短い7時間で刑務作業を終えている受刑者はラクだと思えてしまうのも分かる。



しかし、普通の仕事と刑務作業では、前提条件が違う。

企業では収益を得るのが目的の1つだが、稼ぐ必要がないのが刑務所。刑務作業に対する報酬はあるものの、最低賃金も適用されないため、1ヶ月経っても数千円だ。

刑務作業であって仕事ではないし、矯正を目的としているのであって稼ぐのが目的ではない。



刑務所の中はエンタメ不足で、お菓子を食べたり、映画を観たり、運動したりという程度のイベントでも嬉しく思えてしまうほど。

四六時中、スマホをいじくりまわすなんてことはできないし、スマホゲームなんて1秒たりともできない環境だ。ケータイ電話に触る機会すらないだろう。

行きたいところに行くこともできない、食べたいモノを食べたいときに食べられない。見たいものを見たいときに見れない。

確かに、刑務作業の時間数だけを考えれば、1日7時間でキッチリと終わり、残業も無いのだけれども、刑務作業以外の環境を考えれば、とてもハッピーな境遇とは言えない。


部分(刑務作業)だけを見ると良さそうに思えるが、行動範囲が限られるのがツライ。

 
私ならば、1日7時間労働でも刑務所で生活するのはイヤだが。単調な生活が好きじゃない。


また、労働時間だけで仕事を評価してはいけないという点も大事。

1日7時間労働と1日8時間労働。どちらがシンドイかと聞かれれば、おそらく100中90人以上は後者だと答える。提示された情報が労働時間だけなので、それだけで評価せざるを得ないのは確かだ。

労働基準法が労働時間をベースにして設計されているため、労働時間で評価するなと言っても難しい話。

では、さらに情報を追加してみよう。小休止はなく、コーヒーブレイクもない、同僚と談笑する時間は1秒も無い。そういう環境で1日7時間の刑務作業をしなければいけないとしたらどうか。

また、労働時間は1日8時間、場合によっては残業で1時間なり2時間も延長されるけれども、自分の気が向いたときにブレイクタイムを入れ、休憩時間じゃないのに小休止で一服し、ミーティングと称した雑談タイムで時間を浪費する。表向きはシンキングタイムだけれども、実際は居眠りをしているだけ。そのような8時間だとしたらどうか。

ここまで読んで、1日7時間労働と1日8時間労働、どちらがシンドイかと聞かれれば、あなたはどちらだと答えるか。

労働時間の長さだけでは、仕事の負荷は分からない。何に対して時間を投入したかによって負荷が変わるので、時間の使い方までセットにして考えないと、労働時間の数だけで判断すると実態を見誤る。



社会復帰したあとの仕事に耐えられないという指摘があるようだが、1日7時間も(休憩は入るだろうが)延々と同じような作業を続けるのだから、忍耐力はあるのではと思える。

全ての作業が終わらなくても、時間内に作業を終える刑務所。一方、時間内に終わらなくても、時間オーバーしてでも作業を完了させる一般社会。前者は時間を優先し、後者は仕事を優先している。

時間を優先すれば、ある程度の仕事を放棄しないといけないし、仕事を優先すれば、ある程度の時間を放棄しないといけない。

単純なトレードオフだ。




山口正博 社会保険労務士事務所
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