book850(他の人とルームシェアする時の住宅手当をどう決めるか)

 


世帯主、契約者に限定するのか、同居人も対象にするのか。


住宅手当を支給する対象者を判定する場合、賃貸借契約の契約者本人かどうか、世帯主かどうか、さらに住民票の写しを見るなどでチェックしますよね。

賃貸住宅のみを対象にする場合や、分譲マンションや一軒家も対象にする場合、支給額の決定方法をパーセンテージにするか定額にするか。さらには、家賃を同居人と分担するルームシェアを住宅手当の支給対象にするかどうか。

あとは、夫婦別世帯にして、夫、妻、両方が世帯主になり、それぞれ別の会社から住宅手当を受け取れば、ダブルで住居費が補助されるケースも想定されますね。



今回は、ルームシェアで家賃を支払っている人に対する住宅手当が話の本題です。

ルームシェアの場合、同居人が契約したものを本人が家賃の一部を負担し、お互いに費用を分担するケースがあります。例えば、月額家賃10万円のところに2人で住めば、単純に折半して、1人あたり5万円の家賃を支払う。

家賃を支払うという点は他のケースと同じですが、ルームシェアで問題になるのは、契約者なり世帯主が誰なのかという点です。

よくあるケースならば、世帯主なり契約者が住居費用を支払うので話は単純です。しかし、ルームシェアの場合は、世帯主や契約者が住居費用の全てを負担しているとは限りません。



先程の例を利用すると、月額家賃10万円のところに2人で住み、それぞれ5万円ずつ分担して負担している場合。この2人のうちどちらかが世帯主なり契約者になっているはずです。別世帯で2人とも世帯主という可能性もありますが、今回は世帯主は1人ということにしましょう。

世帯主がAさん。同居人がBさんだとしましょう。

AとB,この2人に住宅手当を支払うとなると、この時点でも色々なことが頭に思い浮かびますよね。それぞれ別の会社に勤めている会社員だったら。Aさんが自営業で、Bさんが会社員だったら。さらに、Aさんが会社員で、Bさんが自営業ならどうか。

家賃の負担比率も、必ずしも5:5とは限りませんよね。この負担比率を3:7とか6:4などに変えることもあり得ます。10:0という可能性もありますね。

この場合、どうやって住宅手当の支給対象者を決め、さらに支給額を決めるのか。

 

 

 

 

管理するのは労務管理。管理しないのも労務管理。


契約者なり世帯主に対象者を限定すれば、問題を解決するのは簡単です。

Aさんが世帯主で会社員の場合、住宅手当の支給対象者になり、住居費の50%、上限は7万円まで会社が手当を支給するならば、家賃10万円の半分、5万円が住宅手当になります。

もし、Bさんが世帯主で、Aさんは同居人だったら、支給対象者には該当しないので、家賃の一部を負担していたとしても、住宅手当は支給されません。

AとBはルームシェアしているとの想定ですから、Aさんは10万円全てを負担しているとは限りませんね。半分ならば5万円ですし、7:3ならば7万円になっているはずです。

もし半分負担の5万円であるならば、住宅手当で5万円支給されていますので、自分の負担分と相殺して、Aさんの実質的な家賃負担は0円になります(もちろん、Bさんは5万円のまま)。

本人が負担しているのは5万円なので、その半分である2万5千円が住宅手当なんじゃないかと思うかもしれませんが、本人と同居人の間でどのような取り決めがあるかどうかを会社が知るのは無理です。そもそも、ルームシェアしているのかどうかすら正確には分かりませんし(会社に知らせる義務も義理もない)、家賃の負担割合についても本人たちしか知り得ない事柄です。

ゆえに、Aさんに住宅手当を支払う場合は、家賃10万円を基準に計算することになります。



では、Aさんが世帯主で、Bさんは同居人である場合に、Bさんの方に住宅手当を支給するかどうか。

対象者が「契約者か世帯主」でないといけない条件が設けられていれば、この時点で同居人は対象外になります。

しかし、会社によっては、同居人の立場で家賃を支払っている人にまで住宅手当を支払うところもあるようで、ここが問題を複雑にしています。

契約者でなければ世帯主でもない同居人のBですが、この人にまで住宅手当を支給するとなると厄介な点があります。

賃貸借契約書や住民票の写しで実態を把握できない人に住宅手当を支給すると、本当はルームシェアなんかしていないのにしていると申告する場合があるでしょうし、家賃の負担割合も本人の判断でコロコロと変えられます。

3万円の家賃ならば、住宅手当はその50%で1万5千円ですが、家賃が5万円、7万円と変わっていくと、住宅手当もそれに連動して変わりますよね。家賃の負担割合は同居している人と相談して好きに変更できるものですから、住宅手当も当事者の好きなようにお手盛りで決められます。

だから、住宅手当を支給する対象者は、契約者なり世帯主にキチンと限定しないと、ルームシェアしている人が出てきたときに混乱します。



上記以外にも、夫婦でも世帯を別にしているケースがあり、世帯主が2人存在することもあります。この場合は、夫がA社で住宅手当を受給し、妻がB社で住宅手当を受給すると、ダブルで住宅手当を受け取るなんてこともあり得ます。ただ、同居人の情報をチェックしていれば、手当の支給対象から外されるとも思えますが、住宅手当の支給対象者を「世帯主もしくは賃貸借契約の契約者本人」と書いていると、会社は別であっても、夫婦がお互いに住宅手当を受け取る可能性もゼロではないでしょう。


このようなことが可能なのかはハッキリと分かりませんが、賃貸借契約の賃借人が共同名義になっていれば、上記の夫婦と同じような結果が生じることも想定できます。



平成28年の今年は、通勤手当の非課税枠が月15万円まで拡大し、通勤ラッシュが解消する見込みは薄いです。

職場に近い場所で住む場合に限定して住宅手当を支給すれば、通勤ラッシュで時間と体力を浪費することもなくなりますので、通勤手当よりも住宅手当を充実させる方が望ましいでしょう。

片道1時間かけて新幹線に乗って通勤するなんてヘンなことをせず、職場に近い場所に住むほど住宅手当が増えるような設計にして、職場と住居を接近させる方が賢明です。



ただ、住宅手当には上に書いたように、支給対象者、支給額をどのように調整するかという点で課題があります。割増賃金のように法律で決まったものではありませんから、住宅手当を用意するかどうか、誰を対象にして、金額をいくらにするか、全て企業側で決められます。

支給条件にどれぐらい絞りをかけるか。緩くするのか、厳格にするのか。

ガチガチに条件を組み上げて管理する労務管理もアリと言えばアリです。しかし、あえて条件を緩くして、抜け穴のようなものが生じても誤差の範囲と考えて対処するのも労務管理です。



 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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