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book846(パートタイマーが社会保険に加入しないメリットもある。)

 


加入する利点があれば、加入しない利点もある。



今は平成28年の9月で、翌月の10月から社会保険に加入するパートタイマーの人が増えます。

週20時間以上勤務していて、月収88,000円以上の人は社会保険に加入するようになります。

加入対象者が増える制度変更であるため、加入するメリットについて色々と情報が流れていますが、加入しない場合にもメリットがあることはあまり伝えられていません。

社会保険に加入すれば、色々と保険給付があって、年金も増えるのだから、利点ばかりのように思えますよね。


確かに、国民年金だけでなく厚生年金も上乗せされますし、傷病手当金も対象になりますし、出産関連の給付も対象になります。

保険料を支払うわけですから、それに見合った便益を得るのは当然ですので、社会保険に被保険者として加入すれば給付内容が充実します。



では、社会保険に加入せず、今の状態をキープしたらどうなるか。

例えば、夫が会社員で、妻がその扶養になっている場合。妻はパートタイマーとして社会保険に加入するのが得策か、それとも加入しないほうがいいのか。


「社会保険に加入する = 給付が充実」
「社会保険に加入しない = 給付が貧弱」

単純に考えるとこのようになりますが、扶養になっているパートタイマーの人というのは、ちょっと特殊な立場なのです。

 




パートのおばちゃんは毎月30,000円のお小遣いを貰える。


夫の扶養になっていると、年金では「3号被保険者」と扱われます。3号被保険者とは、毎月16,260円の保険料が不要になる被保険者区分です。ただ、「不要」といってもいわゆる免除とは違います。保険料は0円ですが、16,260円の保険料を支払ったものとして扱われます。つまり、3号被保険者は、毎月16,260円のお小遣いを貰っているようなものなのですね。

さらに、健康保険で被扶養者になっていると、こちらも毎月の保険料が不要になります。会社経由で健康保険に加入する場合であれ、市町村の国民健康保険に加入する場合であれ、毎月の保険料が必要ですが、被扶養者にはそれが不要です。本来ならば、毎月10,000円とか15,000円ぐらいの保険料が必要なのですが、それが0円になります。もちろん、病院に行ったときは自己負担の3割は必要です。

国民年金で16,260円を節約し、さらに健康保険でも15,000円程度を節約できる。この時点で毎月30,000円ほどの特典が用意されています。

もし、会社経由で社会保険に加入すると、この2つの特典を放棄しないといけません。厚生年金の保険料は給与から天引され、健康保険料も給与から引かれます。

扶養の時は毎月プラス30,000円だったのが、会社経由で自分が被保険者になると、マイナス30,000円になる。この2つの差は毎月60,000円です。


社会保険以外にも、税金の分野では、配偶者の場合は配偶者控除を利用できます(しばらくすると、夫婦控除という制度に変わる予定のようです)。


年金保険料が0円になり、健康保険料が0円になる。さらに配偶者控除も使える。

これらの既得権を放棄してまでパートのオバちゃんが社会保険に加入するかというと、なかなか悩ましいところです。毎月30,000円のお小遣いを貰える権利を放棄してまで社会保険に加入するかと言われれば、「いや、今のままでいい」と判断する気持ちも分かります。

保険料が0円なのに便益を受けられるとなると、3号被保険者制度や被扶養者制度は、低所得のパートタイマーに対するベーシックインカムのような効果を発揮しているのではないかと思えてきます。

今回の制度変更で、1号被保険者から2号被保険者になる人、さらに3号被保険者から2号被保険者に切り替わる人が出てきますから、3号被保険者制度の対象者は減っていきます。



私の予想ですが、いずれ3号被保険者制度は廃止され、1号被保険者と2号被保険者に集約されるのではないかと思います。

健康保険でも、被扶養者に対して毎月3,000円とか5,000円の定額負担を求めるような制度変更がされる可能性もあります。


配偶者控除については、2016年の9月時点で、廃止して夫婦控除という制度に変更するかどうかが話し合われていますので、もう風前の灯です。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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