残業時間に上限はあるが、それを超えた後がハッキリしない。

 

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残業時間には上限がないと思われているフシがあるが、実際には無制限ではなく、上限はある。

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf
時間外労働の限度に関する基準


例えば、1ヶ月ならば、月に45時間が法定時間外労働の限度となる。勤務日数が月に21日であるならば、1日あたり平均で約2時間の残業までならば36協定で対応できる。

ただ、この限度時間に関する基準を超えたらどうなるかというと、特にペナルティはない。労働基準監督署からの指導はあるものの、その後の対応が曖昧なのが現実。

もちろん、指導しても改善せず、限度時間を超え続ければ、さらに踏み込んだ対応をするケースも過去にはあったが、全ての事業所が対象というわけではない。いわば一罰百戒のようなもの。



法定労働時間を超えたら、法律に違反する。しかし、36協定を締結すると、違法状態をクリアして法定労働時間を超えて働けるようになっている。例えるならば、開けてはいけない扉をヒョイッと開けて通しちゃうようなもの。


警察と労働基準監督署を同じようなものと考え、「もっと労働基準監督署が取り締まればいい」と考える人もいるが、両者を同じと考えるには無理がある。

両者の間で最も違っているのは人員数。労働基準監督署は職員数が少なく、警察署とは比べ物にならないほど。1つの労働基準監督署で、場所によって違うだろうが、所属している職員数は20人ぐらいじゃないか。

私がとある場所の労働基準監督署に行った時は、フロアを見渡しても確か3人か4人しかいなかった。他の部屋やフロアにも職員はいたと思うが、数えるのは難しくないほどしかいなかったはず。

一方、警察署にいけば、入口付近からすでに警察官がいるし、受付周辺にもたくさんの警察官がいる。この段階ですでに20人ぐらいは頭数が集まるはず。他の部屋なりフロアに行けば、さらに警察官がいるから、1つの警察署で100人ぐらいの人員がいても何ら不思議ではない。

何らかのトラブルで警察に連絡して来てもらうと、最初は3人だったのに、次から次へと応援の警察官がやって来て、気付いたときには17人もいたなんてこともある。人数で相手を圧倒すれば、トラブルを解決するのが早くなるため、すぐに応援を呼ぶのが警察官の特徴。



労働基準監督官の採用数は年間で200人。試験で合格するのは400人ほどいるが、公務員は他の職種と併願受験ができるため、合格したからといって全員が労働基準監督官を選択するとは限らない。そのため、定員よりも多めに合格者を確保している。

一方、警察官試験の受験者は毎年10万人ほど。少なく見積もって、受験者の10%が警察官になると仮定すれば、1年間で追加される警察官は1万人。

全国で200人、もう一方は10,000人。両者で処理能力がどれほど違うか。人数だけを基準にすれば、処理能力には50倍の差がある。



特別司法警察職員として扱われる労働基準監督官なので、警察官と同様の司法警察としての権限を行使できる。捜査(現場では「臨検」と言われる)したり逮捕することも可能だ。

36協定の提出状況、労働時間数、法定帳簿のチェックなど、監督官が実施し、何らかの不備があれば逮捕するのではなく、正常な状態へ是正するように勧告する。


チェックして勧告するのが労働基準監督官の主な仕事で、警察官のように簡単に逮捕令状を裁判所に出してもらい、ホイホイと逮捕するようなものではない。まずは指導して、是正してもらう。その時点で改善されればそれで問題は終わるが、それでもモチャモチャと問題を長引かせる企業があれば、さらなる指導と続く。

労働基準監督署を廃止して、警察署に一元化し、警察官と同じような動きをする労働基準監督官になれば話は別だが、両者はどちらも公務員ではあるものの、種別が異なるし、役割も違う。

限度時間の上限を超えても、ハッキリとどう対処するのかが曖昧であるし、職員数も少ないとなれば、警察官のようなイメージで労働基準監督官を想像していると期待はずれになる。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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