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単年度で年金の運用を評価しても意味は無い。

 

保険料として集めた年金資金は、年金積立金管理運用独立行政法人が資金運用しています。

1日単位や1週間単位、1ヶ月単位や1年単位で儲かった損したと一喜一憂するデイトレーダーとは違い、長い期間にわたって運用するのが年金資金です。

www.gpif.go.jp



この年金資金の運用ですが、運用損が発生すると、必ずと言っていいほどメディアは揚げ足を取ります。過去にも、2000年、2001年頃のデフレ期に年金資金も損失が増えましたが、その頃も確かメディアが反応していた記憶があります。また、2008年のリーマン・ショックの頃も収益が減っていました。

損失よりも利益が増えたほうが良いのは確かですが、金融資産は価値が変動するものですから、好況のときもあれば、イマイチな時もあります。

年金資金の良いところは、四半期ごとや単年度で収支を確定して精算する必要はなく、何年も持ち越して運用を続けられる点にあります。「今年中に3億円のプラスを出さなきゃ」、「四半期の締めまでには470億円以上のプラスをキープしておかないと」などという締め切りが年金資金にはありません。

稼ぐ運用ではなく、負けない運用をするのが年金資金ですので、予め決めたポートフォリオにしたがって、資産の持ち分を調整しながら運用を続けていきます。

外国株式の割合を増やしたのが原因と言われていますが、10年ほど前は、ポートフォリオに占める外国株式の割合は14%ほどで、平成27年度は外国株式の割合は23%ほどまで上昇しています。一方で、収益率の低い国内債券は、以前は50%を超えるほどの割合でしたが、今では40%を下回る状況です。

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平成27年12月末時点



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「もっと収益を増やせ」、「積極的に運用せよ」、「年金資金で稼げ」などと散々リクエストされて、やむなくポートフォリオを変更した結果です。株式の割合が増えればボラティリティも上昇しますから、約140兆円を運用し、5兆円の損失が出たとなれば、その割合は3%強です。

年金資金の30%なり半分が吹っ飛ぶような状況ならばメディアが騒いでも分かりますが、資産全体に比して3%程度の損失が出たぐらいならば、外国株式の比率を増やしたことを織り込んでも、想定の範囲内でしょう。



1年で運用が終わるものではなく、年金資金の運用は長く続くものですから、単年度ではなく累計でプラスであれば良いのです。現時点でも約50兆円ほどの累積収益(貯金のようなもの)があるのですから、数兆円の損失が単年度で発生しても十分に受け止められます。


単年度でマイナスになると、ここぞとばかりにニュースにするが、プラスになったときはダンマリ。これがいつものパターンです。

ネタとしては使い古されているので、今ではさほど報道されなくなったが、未だにこの手の話を持ち出す人がいるので、小さなニュースにはなります。

ちなみに、外国株式の価値が低下すれば、ポートフォリオ理論に従って、外国株式を買い増しするのが年金の運用なのです。金融を苦手とする人からすれば、「株価が下がると株を売るんじゃないの?」と思うところでしょうが、実際は買い増しします。

株価が下がれば、資産全体に占める株式の割合が低下するので、株式を買い増しする。一方、株価が上がると、資産全体に占める株式の割合が上昇してくるので、決まった水準になるまで売却する。つまり、株式の保有比率を一定にするため、株価が下がった時に買い、上がった時に調整のために売却する。こうやってポートフォリオを安定させるわけです。


平成13年度からの運用状況については、下記のウェブサイトで分りやすく示されています。

www.gpif.go.jp




年金資金の運用について分かりやすい説明をした本には、『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント―ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ智恵 』があります。

古い本ですが、金融に関する専門的な前提知識を必要とせず、年金の資金がどのように運用されているかを説明しています。この分野に興味がある方は、読んでみると良いでしょう。

 


貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント―ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ智恵

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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