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春に仕事が多いと、社会保険料も増える?





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春に仕事が多いと、社会保険料も増える?






社会保険料が決まる仕組み。

社会保険料は、毎月の給与、夏や冬のボーナスで決まると思っている方は多いでしょうが、それはある程度は正しいです。

「ある程度は正しい」というのは、収入に連動するのが社会保険料なのですけれども、1年に1回、1年分の社会保険料を決める手続きがあるのです。

毎年、6月1日から、労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届を準備する時期になります。今が5月の末ですので、時期としてはちょうど今ですね。

給与明細を見ていただければ分かりますが、毎月の健康保険料と厚生年金の保険料はずっと同じになっているはずです。一方で、雇用保険料は、チョコチョコと保険料が変動しているはずです。

4月から6月、この3ヶ月に支払われた報酬を平均して、年間の報酬を概算し、それに基づいて1年間の社会保険料が決まる(これを「定時決定」と言います)。そのため、毎月の給与がちょっとだけ増減しても、社会保険料の額は変わらないのですね。



春に仕事が多いと、社会保険料も増える?

4月、5月、6月の収入で1年分の社会保険料が決まるならば、もし、春の時期に仕事が増えるような職種の場合どうなるか。

給与は翌月払いであることが多いので、例えば、3月に働いた分が4月に給与として支給されます。そのため、4月から6月の収入は、それぞれ1ヶ月前の仕事に対するものと考えられます。となると、3月、4月、5月の仕事が多い場合に、社会保険料が増えてしまうわけです。

3月から5月というと、春の初めから春の終わり、もしくは初夏までの時期になります。この時期に忙しくなる仕事というと、どのようなものがあるでしょうか。

3月はホワイトデーや卒業式がありますし、4月は入社や入学式、5月はゴールデンウィーク。これらに関連する商売を営んでいると、3月から5月までの仕事が多くなるかと思いますが、短期的にガッと仕事が増えるよりも、春の時期に集中して業務が増えるような職種の方が今回の例としては分かりやすいでしょう。

梅とかお茶なんてのはどうでしょう。

4月、5月には自宅で梅酒を作る方もいらっしゃるでしょうから、梅の農家の人は春の時期は忙しそうです。

お茶も、4月末から5月に新茶を摘みとって加工するでしょうね。茶葉農家の人も春の時期に仕事が増えるのでしょう。

梅農家も茶葉農家も、春から初夏にかけて仕事が多くなり、社会保険料が増えて悩んでいるのではないでしょうか。

梅を収穫して、選別して、出荷する。お茶も、摘み取って、選り分けて、乾燥させてと、私は経験したことがありませんが、その大変さは想像できます。

業務量が増えて、朝早くから暗くなるまで作業を続け、残業も増える。となると、社会保険料も増えます。さらに、休日も出勤するとなると、割増賃金も出るので、さらに保険料を上昇させます。

しかし、時期が過ぎれば、仕事は減ります。お茶は新茶だけではありませんけれども、お茶といえば新茶と考える人もいるぐらいですし、最も力を入れるのは春に作る新茶のはず。

10月ぐらいまでは茶葉を収穫できるのですが、秋から冬は茶摘みをしないので仕事は減ります。こんな時期でも社会保険料は春時期と同じだったら、「う〜ん、、」となってしまう。

忙しい最盛期の報酬を基準として社会保険料を決められてしまうと、それが1年間を通して変わらないのは困りますよね。仕事の量に応じて報酬も変動するのですから、社会保険料もそれにあった水準であって欲しいところです。しかし、最も報酬が高くなる時期を基準とされてしまうと、他の時期には収入に占める社会保険料の割合が高くなってしまい、可処分所得が減ってしまいます。

こんなとき、どうするか。通常通りの定時決定で社会保険料が決まってしまうと、妥当な水準よりも高い保険料が1年間続いてしまいます。




毎月の保険料が3万円高くなる。

定時決定で社会保険料を決めると歪な結果になる場合、例外として他の方法で社会保険料を決めることになります。定時決定で決められない場合は、保険者算定という手続きでもって、行政側で社会保険料を決めます。

保険者算定というのは、通常の手続きで社会保険料を決めると、どうしても不都合な場合に例外として別の方法で保険料を決めるものです。

先程の例のように、季節に合わせて仕事をする場合、春から初夏にかけて仕事が多くなる職場だと社会保険料では不利な扱いをされてしまいます。


例として、毎月の収入を以下のように想定してみましょう。

1月:30万円
2月:30万円
3月:30万円
4月:40万円
5月:40万円
6月:40万円
7月:30万円
8月:30万円
9月:30万円
10月:30万円
11月:30万円
12月:30万円

やけに単純化していますけれども、まぁイメージしやすいようにするためですので、ご容赦を。

4月から6月は月40万円ですが、他の月は30万円です。春時期は、早朝出勤や残業、休日出勤で他の月よりも収入が増えていると考えてください。

この場合、社会保険料は月収40万円を基準に計算されてしまい、それが1年間続きます。

お茶の生産、加工となると、場所は静岡県が妥当でしょうか。静岡県の健康保険料を調べると、月収40万円だと、保険料は40,549円。月収30万円の場合は、保険料は29,670円。比べると、毎月1万円ほど違いがありますね。

静岡県の健康保険料はこちらから調べられます。
標準報酬月額 簡易閲覧表(H28/4 - )(リンク切れ)
令和3年度保険料額表(令和3年3月分から)全国健康保険協会

厚生年金の保険料は、月収40万円で、保険料は73,094円。月収30万円の場合は、保険料は53,484円。こちらは月額で2万円の差があります。

厚生年金の保険料は以下のリンクから見れます。
標準報酬月額 簡易閲覧表 厚生年金(H27/9 - )


両方を合わせると、月に3万円の差がありますから、少なくない額です。

4月から6月の保険料としては妥当な額なのかもしれませんが、他の月は保険料を3万円多く支払っている状態になり、月の収入の10%を余分に保険料として支払うことになります。

これは、やはり困りますねぇ、、。


中には、意図的に社会保険料を減らすために、4月から6月までの給与を少なくするなんてことをする会社もあるでしょう。これは社会保険料を削減する手法として知られているものです。

ところが、社会保険の仕組みというのはそう単純ではなくて、意図的に保険料を低くしても、後から修正される仕組みがあります。収入がグッと増えたり、また減った場合には、「随時改定」という手続きで社会保険料が修正されるんですね。先ほどのものは定時決定でしたが、こちらは定期的に社会保険料を決める手続きではなく、その都度、収入の変動に応じて社会保険料を変更するものです。

ここで、「じゃあ、先ほどの例でも随時改定で社会保険料が修正されるんじゃないの?」と思うところ。確かに、収入に10万円の差があれば、おそらく随時改定で後々に社会保険料が修正される可能性はあります。

とはいえ、この随時改定という手続きは、ある程度のタイムラグがあって、収入が増減したことがハッキリした段階で実行されるものですから、しばらくは高い社会保険料を支払うことになってしまいます。もちろん、高く社会保険料を支払ったからといって、後からキャッシュバックされるなんてことはありません。




年間で報酬を平均して、社会保険料を平準化する方法がある。

4月から6月までの収入がやむを得ず増えてしまう場合、増加した収入を1年間で均して、社会保険料が実際の収入に合った水準になるようにする手法があります。

先ほどの例だと、4月、5月、6月は、残業や休日出勤により、他の月よりも収入が10万円多くなっていますが、この増えた分を他の月に分配して、社会保険料が実態よりも高くならないようにします。

増えた収入は合計で30万円(10万円 × 3ヶ月)ですので、これを12ヶ月で分散させます。すると、1ヶ月あたりでの収入は、32.5万円(30 +(30÷12)= 32.5)になり、これを基準として社会保険料を算出します。

32.5万円ならば、健康保険料は31,648円。厚生年金の保険料は57,049円です。

月収40万円だと、保険料は40,549円で、厚生年金保険料は73,094円でしたから、その差は、113,643 - 88,697 = 24,946円です。約2万5千円ほど保険料が下がります。

4月から6月の収入を他の月に分散させるのは、先ほど書いた保険者算定という手続きによります。定時決定で社会保険料を決めると、どうしても実態に合わないので、上記の例のように年間で収入の増加分を平準化して社会保険料を算定する。これを修正平均法と言うらしいですが、社会保険料を決める1つの方法としてあります。

金融業界でも、株式を分割して、それによって株価が上昇し、その一時的な株価上昇を利用してM&Aができないようになっています。これは株価を、上昇した一時点で評価するのではなく、一定期間で平準化させて、実態に合った水準に修正しているわけです。

社会保険料の修正も株式分割時の株価に似ています。



仕事や収入の増減で、社会保険料は変動しないため、場合によっては、先ほどのような方法で、保険料を決めないといけないのですね。

雇用保険料のように、毎月の収入に連動して保険料が決まれば、4月から6月の収入で1年間の保険料を決めることもありませんが、労働保険とは違い、健康保険と年金は恒常的に支出が発生する制度であるため、収入、つまりは保険料の部分もなるべく固定して、収支を見通しやすくしておかないといけない都合があります。


先ほどのように、年間で収入を平準化して保険料を決める方法は、どこの会社でも適用されるというものではなく、定時決定で社会保険料を決めると、実態に合わず著しく不当になる場合に限られます。






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