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book812(平成28年10月からパートタイマーが社会保険に加入する際の疑問点)

 

曖昧な基準は基準にあらず。

 

パートタイム労働者が社会保険に加入するには、今までの加入条件だと、フルタイム社員の人と比べて、勤務時間と勤務日数が4分の3以上(通称「4分の3基準」)である場合に、パートタイマーの人でも社会保険に加入していました。

 

ただ、この4分の3基準というのは曖昧なところがあって、「おおむね4分の3」という基準なので、「おおむね」という言葉は「だいたい。およそ」という意味で使われるため、社会保険に加入する基準で使う表現としては合わないものでした。

 

基準なのだから、ハッキリとしていないと意味が無いですよね。物事を比較したり判断するために使うのが基準なのですから、「だいたい」とか「およそ」などという要素を持ち込むと混乱してしまいます。

 

2016年10月以降は、「1週の所定労働時間」と「1月の所定労働日数」が4分の3以上であれば社会保険に加入するとの基準に変わります。

 

1週間単位での所定労働時間だと、パートタイムの人には分かりやすいですし、1ヶ月の所定労働日数ならば、フルタイム社員だと1月に21日か22日ですので、その4分の3、1月に16日か17日が基準日数と分かります。

 

所定労働日数と所定労働時間は、就業規則や雇用契約で決めるものですが、ここで1つ難点があります。

 

就業規則や雇用契約で条件を決めているにもかかわらず、例えば、週2日で契約しているのに週5日働いているとか。他にも、週17時間で契約しているのに、実際は週29時間働いているなど。書面で決めた内容通りに勤務していない会社では、契約上は社会保険に加入しないけれども、就業実態を勘案すると加入しなければいけないようなケースも出てくるでしょう。

 


所定労働時間と、実際の労働時間を合わせる。所定労働日数と実際の労働日数を合わせる。

 

「何を当たり前のことを」と思うかもしれませんが、その当たり前ができていない会社があります。

 

就業規則や雇用契約の内容通りに勤務する。時間や日数を増やしたい、また減らしたい場合は、契約を更改する。契約と実態がズレないように揃えてください。

 

 


社会保険に加入する基準が2つになる。

 

4分の3基準は今までどおり存続し、さらに2016年10月以降は、5つの条件(以下、5要件)を満たした場合も社会保険に加入します。

 

5要件とは、

1.週20時間以上で契約。
2.1年以上、雇用される見込み。
3.賃金が月額88,000円以上。
4.学生以外。
5.500人以上の社会保険加入者がいる企業。

です。

 

つまり、4分の3基準に当てはまるか。もしくは、5要件に当てはまるか。このどちらかに該当すると、パートタイマーの人が社会保険に加入するわけです。

 

4分の3基準では加入しないけれども、5要件では条件を満たすので社会保険に加入する、という場面も出てきます。

 

ちなみに、この5要件ですが、どれか1つ(もしくは複数)だけ当てはまるだけではなく、5つ全てに当てはまる必要があります。

 

 

半年ごとに契約を更新したら、1年の雇用見込みは無し?

 

上記、5要件の中には、1年以上雇用される見込みという条件があります。

 

パートタイマーの中には、半年ぐらいで契約を更新している人もいらっしゃるはず。

 

ここで悪いことを考える人がいて、契約を更新するときに数日、時間的間隔を開けちゃえば1年以上の雇用見込みが無いものと扱えるんじゃないかと思いつく。

 

契約期間をちょっと中断させて、社会保険に加入させないようなズルい方法ですが、加入するかどうかは杓子定規に判断するものではなく、就業の実態や契約の実態を勘案して判断します。

 

そのため、契約の間隔をちょっと開けてやろうなどと小狡いことを考えても無駄です。

 

 

 

収入要件は、月収を使い、年収は参考程度。

 

賃金が月額88,000円以上という点も5要件の中に入っています。

 

ここで、年収106万円という基準を使うのかどうかが疑問となります。

 

8.8万円 × 12ヶ月 = 105.6万円。四捨五入すると106万円になります。そのため、月収だけでなく106万円という年収基準もあるんじゃないかと思うところですが、5要件で使う基準は月収だけです。

 

月額88,000円を年収ベースに換算すると106万円になりますが、年ベースではなく月ベースの賃金で条件を判定します。

 

ちなみに、この88,000円には残業代は含まれません。時給で賃金が決まるならば、正味の時給部分で88,000円に達する必要があります。

 

ちなみに、社会保険料を計算する際には、報酬月額という数字を使いますが、報酬月額には手当なども含めて計算するので、社会保険の加入で使う月額賃金とは少し違います。

 

 

 

条件を満たさなくなった場合は脱退か?

 

4分の3基準であれ、5要件であれ、何らかの事情で条件を満たさなくなったら社会保険から脱退(被保険者資格の喪失)するのか。ここも疑問を抱くところです。

 

例えば、月収が88,000円を下回った場合。他には、1週間の労働時間が週20時間を下回ったような場合です。

 

この点は実務でも難しいところで、一時的に月収88,000円を下回った場合でも資格喪失するのか。それとも、一時的なものならば喪失しないのか。また、先週は週18時間になったけれども、他の週は週26時間以上でキープできている場合、一時的にでも週20時間を下回ったら資格喪失するのか。それとも、一時的なものならば喪失しないのか。この程度の判断が微妙なのです。

 

社会保険に加入しなければいけないのに加入していない。
社会保険に加入する必要はないけれども加入していた。

 

前者の場合は未加入なので色々と問題が起こりますが、後者の場合は社会保険料を支払ってキチンと加入しているので、保険料が発生している点を除けば、特に問題はありません。

 

条件を満たさずに加入したところで、何か不都合なことがあるわけではなく、健康保険証はチャンと使えますし、年金の保険料も年金額に反映されます。


契約や勤務実態がガラッと変わったならば別として、一時的に賃金や勤務時間が変動しても、すぐには社会保険から脱退はしません。

 


(参考)
リーフレット「事業主の皆様へ 短時間労働者に対する適用拡大が始まります」(PDF 4,810KB)
http://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2016/0516.files/20160516.pdf
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(PDF 931KB)
http://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2016/0516.files/0516.pdf

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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