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単年度で年金運用の損失を指摘するのは無意味。

 

mainichi.jp

 

 民進党の山井和則国対委員長代理は6日の記者会見で、公的年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)の2015年度の損失が約4兆7000億円に上るとの党独自の試算を公表。GPIFの運用実績の公表は夏の参院選後になるため、「年金損失隠し、第2の消えた年金問題だ」と政府を追及する考えを示した。

 安倍政権は14年10月にGPIFの投資比率を見直し、債券よりリスクが高い株式投資を24%から50%に引き上げた。同党の試算では、国内債券で2兆6000億円の利益が出たが、株式は株価下落の影響で6兆8000億円の損失、外国債券も5000億円の損失となった。見直さなかった場合の損失はゼロだという。

 これに対し、菅義偉官房長官は6日の記者会見で「政権交代以降、14年度まで運用益は38兆円のプラスだ。トータル的に見れば大幅なプラスになっている」と反論した。

 

 

年金の保険料を集めて運用する組織がGPIF、年金積立金管理運用独立行政法人です。保険料を集めて年金受給者に右から左へ渡しているだけでなく、余裕資金を運用し、その運用益を年金の財源に組み込み、保険料の負担を和らげる。そのような目的があります。

 

2015年度の運用損失が5兆円弱ほどあったと指摘している民進党ですが、年金の運用実績を単年度で評価する意味はありません。

 

1年で決算を迎え、集めたお金を全部ゼロにするわけではなく、何年も制度を運用していくのが年金制度ですから、単年度での運用実績ではなく、累積での運用実績で評価するのが実態にあっています。

 

運用実績については、GPIFのウェブサイトでも掲載されています。

 

www.gpif.go.jp

 


平成13年から平成26年までの累積で、運用収益は約47兆6千億円です。

 

リーマン・ショックが起こった頃、平成19年度、20年度には、株式市況が悪化し、国内株式で約5兆円(単年度)ほどの運用損、外国株式で約2兆円から4兆円の運用損が発生しています。

 

その結果、平成19年度には単年度で6兆円弱ほどの損失が発生し、翌年、平成20年度には10兆円弱の損失が発生しました。

 

この頃にも、年金が消えただの、失われた年金だのと、色々と言われたり、書かれたりしたと記憶しています。

 

単年度で運用損が発生すると、時の政権にツッコミを入れるネタとして利用されるのが恒例化していて、今回も同じパターンです。

 

平成17年度は国内株式が盛況でしたし、平成24年度から26年度までは大幅なプラスで運用益が発生しています。

 

平成24年度:約11兆円のプラス。
平成25年度:約10兆円のプラス。
平成26年度:約15兆円のプラス。

 

たった3年で36兆円も運用益を積み上げた実績があります。

 

 

年金の資金を運用する手法はルールに基いて行われています。ポートフォリオ理論というものに基づいていて、個人投資家のように恣意的に運用していません。

 

ポートフォリオ理論というのは、簡単に書くと、例えば、国内債券を20%、国内株式を40%、外国債券を20%、外国株式を20%、というように投資配分を決めておき、常にこの配分を維持するように資産を売買するものです。

 

リーマン・ショックの時のように、株価が下落すると、資産全体に占める株式の割合が低下しますので、株式を買い増して、決まった配分比率、上記の例だと国内株式で40%、外国株式で20%まで株式を購入していきます。

 

株価が下落して、仮に、資産に占める配分比率が国内株式で21%まで低下し、外国株式で14%まで低下したとすると、21%から40%まで配分比率を上昇させるには国内株式を買い増す必要があります。また、14%から20%まで配分比率を上昇させるには外国株式を買い増す必要があります。

 

つまり、株価が下落すると、さらなる損失を恐れて株式を売却するのではなく、逆に買い増しする。これがポートフォリオ理論に基づく運用なのですね。


年金の運用がポートフォリオ理論に基づくことについて書かれた本もあります。

 

 

貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント―ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ智恵

 

随分と前に発行された本ですが、私も読みましたので、その分かりやすさは覚えています。


単年度で損失が出ると政権の揚げ足を取るためにネタとして使いますが、運用益が出るとダンマリするのが恒例行事です。

 

いつものことですから、この件が選挙に影響することは無いでしょう。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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© 社会保険労務士 山口正博事務所