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時給900円の人間。時給1,300円の人間。その違いは?

<ラオックス不法雇用>爆買い火付け役 利益優先のツケ

ラオックスの元店長を不法就労で逮捕 高額報酬で留学生にも人気

ラオックス社長を書類送検 留学生を不法就労させた疑い


不法就労というと、「またブラック企業か」と思うところだが、今回はちょっと事情が違う。

残業代未払い、クリスマスケーキを無理やり買わせる、おせちの販売にノルマ(売れなければ自分で買う)など、働く側が嫌がることをするのがありがちなケースですが、今回は働く側が望んで働いており、企業側を責めにくいところです。

家電量販店に外国人客がワンサカとやってくる場面がテレビに映し出され、今では「爆買い」という表現まで作られるほどです。

出入国管理及び難民認定法に違反したとのことですが、外国人留学生は日本の学生と違い、就業時間に限度が設定されています。


外国人雇用に関するQ&A


Q4    留学生をアルバイトとして雇うことは可能ですか。

(A)
 留学生は、資格外活動許可を受けた場合、アルバイトを行うこ とができます。したがって、その留学生が許可を受けているかどうかを確認し、許可を受けている場合はアルバイトとして雇うことができます。
 資格外活動許可を受けている場合は、パスポートに許可証印又は「資格外活動許可書」が交付されていますので、それを確認してください。
 留学生については、一般的に、アルバイト先が風俗営業又は風俗関係営業が含まれている営業所に係る場所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます(当該教育機関の長期休業期間にあたっては、1日8時間以内)。
 なお、資格外活動の許可を受けずにアルバイトに従事した場合は、不法就労となりますので注ご意下さい。



勤務時間が1週で28時間以内と制限されており、週5日で勤務する場合、1日あたり6時間弱で勤務して、上限を超えないようにしないといけないのですね。ちなみに、日本人学生の場合は上限はなく、1週30時間でも40時間でも可能な限り働けます(高校生には制限がありますが)。

中国人客がお店にやってくるならば、接客する従業員も中国人の方が商売をやりやすいでしょう。日本人従業員だと、どうしても中国語の壁があり、お客さんが聞きたいことを十分に聞けません。

3カ国語が話せれば時給1300円ぐらいはもらえるそうですが、日本語、中国語、英語。この3ヶ国語を使えれば、家電量販店だとエースになれるでしょうね。外国人客に対応できるのはスタッフの強みですから、労働者の付加価値が高くなり、報酬も多くなります。

薄利多売の家電量販店だと、普通に仕事をしている人だと時給900円ぐらいでしょうから、時給1,300円も支払うということはそれだけ貴重な人材なのでしょう。

この時給だと、働いている本人は、なるべく長い時間働きたいという希望を会社に伝えるのは当然です。会社側も、日本人よりも活躍する中国人従業員に優先して働いてもらいたいと考えます。法律には違反したものの、商売感覚としてはマトモです。

不法就労、不法雇用という言葉が使われていますけれども、会社側と労働者側、お互いに何か困っているわけではなく、お互いに納得の上で仕事をしていたので、一方的に会社側を責めにくいのが今回の事例です。

両者の思惑が一致し、適材適所で人材を配置した結果、就業時間の上限を超えて勤務してしまった。不法就労というと、労働者を搾取しているイメージを抱きがちですが、今回は労働者側が進んで長時間労働を求めたのが原因でしょうね。

法律に違反した部分は修正しなければいけないものの、中国人留学生に対する労働市場における需要の高さを鑑みれば、もっと長時間にわたって勤務できる方が実態に合っているように思えます。

実態を法律に合わせるのか。それとも、法律を実態に合わせるのか。この点は労務管理の分野だけでなく他の分野でも同じ問題が生じますが、悩ましいところです。

1週28時間を超えるとなると、働いている本人は何も問題ないでしょうが、週30時間以上働くとなると、社会保険に加入することになりますし、中国と日本との間にはまだ社会保障協定も締結されていません。あえて週30時間を超えないように、週28時間以下に基準を設定し、制度に合わせて就業しているのが現状です。

外国人客がもっと日本に来ると、労働市場での人材に対する評価も変わってくるのでしょうね。希少な資源を高く評価するのが人間の社会ですから、他の人よりも希少な労働者となれば、家電量販店でも時給1,300円で評価されます。

時給900円で評価される側になるか。それとも、時給1,300円で評価される側になるのか。今回の話は示唆に富む事例ですね。

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所