あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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給与振込の手数料は会社負担か本人の負担か。

手数料

 

 

給与振り込みの手数料は300円です。えっ!?

給与の受け取り方法は会社ごとに違っており、現金で支給するところもあれば、給与振込みにするところもあります。さらには、給与の締め日や支給日もバラバラです。

会社によっては、入社時に給与を振り込む銀行を指定するように案内されることがあり、金融機関名、支店名、名義を所定の書類に書いてもらい、さらに通帳かキャッシュカードのコピーを会社に提出する。そうすると、給与が銀行に振り込まれるように設定されます。

ただ、振込口座の設定には若干のタイムラグがあり、最初の1ヶ月目や2ヶ月目は現金で支給して、その後は振り込みという会社も私の経験ではありましたね。


給与を金融機関に振り込んでもらうにあたって、その手数料をどうするかが会社によって異なります。

会社が手数料を負担してくれるものだと思いがちですが、これが必ずしもそうではないのです。




給与を銀行に振り込む手数料は必ずしも会社負担とは限らない。

会社が費用を負担し、本人は何も負担する必要が無い会社。手渡しの場合は費用は必要ないが、振り込みにする場合は、その手数料は本人負担という会社。他には、会社指定の金融機関の場合は手数料は無料だけれども、それ以外の金融機関を指定した場合は300円など。これは会社ごとに違っています。

もちろん、振り込み費用を本人の負担にしても法律に違反するようなことはありませんから構わないのですけれども、「給与振込みの手数料は会社持ちだ」と思っていると現実は違っているなんてこともあります。


私が経験したところでは、会社が指定する銀行に振り込むならば無料というケースがありました。指定外の金融機関を選択した場合は1回に150円から300円ぐらい必要だと説明を受けた記憶があります。おそらく、指定されていた銀行は、その会社が取引先にしている銀行だったのだと思います。

取引銀行だと、会社は融資契約を締結してお金を借りて銀行に利息を支払っているのでしょうから、その恩典として社員向けの給与振込み手数料を無料にしていたという可能性があります。もちろん、これは推測ですが、融資で得た利益をキャッシュバックする手段として振り込み手数料を無料にしても、銀行には利益が残るでしょうから、非現実的な取引ではありません。


他にも、よく知られている銀行はOKだけれども、信用金庫はダメという会社もありました。高校生の頃の経験ですが、「給与を振り込みにするから、銀行の通帳を持ってきてくれ」と会社の事務担当者から言われたので、後日、信用金庫の通帳を持って行ったら、しばらくして「信用金庫は振り込まれへんねん。だから、給与はキャッシュで渡すわ」と対応されたことがあります。

なぜ信用金庫には振り込みできないのか説明されませんでしたが、おそらく通常の商業銀行のネットワークと信用金庫のネットワークは別々に運用されていて費用が高いとか、そもそもシステム的に振り込めないなどの制約があったのかもしれません。もう20年ぐらい前のことですから、今は信用金庫でも振り込めるようになっているのかもしれません。


もちろん、どこの銀行でもOKという会社もあります。メガバンクOK、地方銀行もOK、信用金庫もOK、労働金庫もOK。そんな会社もあるはずです。

しかし、どこの会社でも同じようになっているとは限りません。振込手数料が不要なところもあれば必要なところもある。指定の金融機関ならば手数料は無料だけれども、それ以外は有料とか。有名な銀行には振り込めるけれども、信用金庫はダメとか。


小規模な会社だと、銀行振り込みではなく現金で渡すことが多いです。おそらく銀行の手数料でボリュームディスカウントが効かないため、社員数が少ない会社で振り込みにすると割高になる。だから、茶色の給与袋(茶色以外の袋を使っているお店もあった)で毎月の給与を渡すのかもしれません。他にも、ただ単に振り込みがメンドクサイという理由もあるかもしれませんが。

他にも、毎月の給与は振り込みだけれども、賞与は手渡しという会社もありますね。給与はさほどの額ではないけれども、賞与はドッサリと束になるので、手渡しにすると、受け取った人は「貰った」という感覚を得やすいらしいです。帰り道に強盗に襲撃されないかが心配ですけれども、満足感を演出する手法としては上手ですね。





 

「全額払い」なんだから1円も負担しないゾ。

給与を受け取る方法は主に2つあり、1つは手渡し、もう1つは金融機関への振り込みです。

私の経験では、こじんまりしたお店や会社だと手渡しする傾向があり、規模が大きくなると振り込みになります。

手渡しだと受け取ったときのボリューム感が嬉しいのですが、振り込みで支払ってもらったほうが安全で便利ですので、今では振り込みの方が好みです。

振り込みを利用すると手数料がかかりますが、この手数料を会社が負担するのか、それとも社員本人が負担するのか。この点について、時折話題になります。

給与は控除されず全額キチンと支払われるものであると、労働基準法24条(以下、24条)には書かれています。

24条
『賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。』

法律に全額と書かれているのだから、振込手数料を給与から引くのはダメだと言いたいところです。

手数料を会社負担にする理屈としては、全額払いなんだからと文字通りに解釈し、振込手数料は会社が負担するべきと言えます。


でも、何だか腑に落ちない感じもあります。

手数料を本人負担にする理屈をつけられないものか。全額と条文には書かれているが、それは振込手数料であっても侵せないものかどうか。

過去に給与振込の手数料について書いたことがありますが、スポーツイベントの運営を代行する会社で給与口座を指定するとき、選択する銀行によって手数料が違っていました。確か、みずほ銀行を選ぶと手数料は無しで、それ以外を選ぶと210円とか315円の手数料が必要でしたね(消費税は5%でした)。

学生の頃のことですから、「まぁ、手数料はかかるよね」と思い、納得していました。


僅か数百円の手数料について、ムキになって考えるほどではないですが、少し頭の体操をしてみましょう。



会社が手数料を全額負担するのが賢明。

社員負担にする理屈としては、いくつかありますが、その1つとして、振り込みの便益を受けているのだから、その費用を負担するべきというものがあります。

振り込みによる便益を受けるのは会社ですが、会社だけでなく振り込みを受けた社員本人にも便益は及んでいるのだから、その便益に対する対価を支払うのは当然だ。給与を受け取る手間、持ち運ぶ際の危険を回避できるのだから、社員本人は振り込みによって便益を受けているので、その対価として手数料を負担するわけです。

他には、実際に要した費用を請求しているだけであって、全額払いには反しないという主張もあります。例えば、飲食店では食事が提供されるところがありますが、賄いだからといって必ずしも無料ではなく、店によっては1回あたり300円というように自己負担があります。

学生の頃に、イタリアンチェーンで働いていたとき、そこで食事を取ると、1回あたり300円の自己負担がありました。パスタ1つで1,100円、1,300円という単価のお店でしたから、それを300円で食べれるとなると格安です。

食事代は給与から控除されていましたが、全額払いという理屈を通すと、これも24条違反だと言えてしまいます。労使協定などがあると控除は可能なのですが、その店では労使協定があるとは知らされていなかったし、雇用契約書もありませんでした。採用時に、「賄いは1回300円」とサクッと伝えられた程度です。

食事が1回300円。それを給与から控除。労使協定などは無し。この場合は24条違反なのかどうか。この判断は微妙です。

お店で食べると1,300円のパスタを300円で食べれたとすれば、会社は材料費を請求しているだけと解釈できます。もちろん、厳密に材料費が300円だったかどうかは分かりませんが、原価が30%だとすると、390円(1,300円の30%)ですから、300円という負担は材料費として妥当なところです。

給与から費用を控除しても、「都度払いや後払いだと手間だから、一括で給与から食事代を支払う方式にしている」と言われれば、社員本人にはむしろ好都合です。

話を戻して、給与の振り込みも、社員本人が振込みによる利益を得ているので、その実費を負担するのは理屈としてはアリです。あくまで理屈ですが。


他には、手渡しと振り込みを選べるようにしていれば、手数料負担を求めてもいいという考えもありますね。手渡しと振り込みを選べるようにして、手渡しを選択すると手数料が発生しない。会社は手数料がかからない選択肢を用意しているのだから、振り込みを選んだ場合に手数料を社員側が負担するのは許される。

似たようなものとして、会社が取引している銀行を指定すれば無料に。それ以外ならば300円負担というものも考えられます。対銀行で法人取引をしていると、相手銀行には融資などで利益が流れているので、無料サービスとして給与振込依頼を受け付ける場合があるでしょうね。

この場合も、会社は手数料を無料にできる選択肢を用意しており、社員側で手数料負担を回避できる余地があるので、手数料を徴収するのは許される。

手数料を負担しない選択肢があるにもかかわらず、あえて振り込みを選んでいるのだから、その費用を負担するのは妥当だ、というわけです。


ここまで色々と書き連ねてきましたけれども、わずか数百円程度のことで、ゴタゴタと時間をかけてモメるぐらいならば、会社で手数料を全額負担するのが賢明です。24条には「全額」と明記されているので、会社が理屈をこねて振り込み手数料を社員負担にするのは困難です。


 

 

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