退職を強要されたかどうか。第三者には判断しにくい(Sat.20151003)


アマゾン社員「退職を事実上強要された」 救済申し立て
http://www.asahi.com/articles/ASHB14GHTHB1ULZU00L.html


申立書によると、男性はカメラマンで、2011年10月に正社員として採用され、主に商品の写真撮影を担当していた。15年2月に上司から、仕事ぶりが期待に達していないと指摘され、「退職するか業績改善プラン(PIP)を受けるかしかない」と迫られた。上司は「PIPは退職のためのプログラム。自分なら選ばない」と話したという。

 ユニオンによると、PIPが適用されると、会社が求める水準が達成できなければ、降格や解雇などの処分を受けることに同意するよう求められる。難しい課題を与えられて、退職に追い込まれる例があるという。男性はユニオンに加入。退職を避けるためにPIPを受けることにしたが、「降格・減給には応じない」と申し入れて交渉を続けている。
 

社員側は「退職勧奨された」と言い、会社側は「退職を勧奨していない」と言う。これと同じ問題はAmazonに限らずどこの会社でも起こり得ます。

雇用保険を利用する際には、自主退職か会社都合での退職かによって給付内容が変わります。前者よりも後者の方が失業保険の給付日数が多く、自主的に退職するよりも会社側の理由で退職する方が離職者には有利になります(雇用保険での取り扱いに限れば)。

会社側が求める水準に達していなければ、雇用契約を更新しない、もしくは雇用契約を解除するのが妥当ですが、どのような基準を設け、どのように判定するかは会社内部で決めることですから、第三者が外部から判断するのは難しいのです。

会社が求める水準に達しておらず、このまま雇用を継続しても会社には利益が無いとなれば、契約を解除する自由が企業にはあります。しかし、特定の社員を追い出したいために、あえて無理な条件を提示し、自主退職に追い込むこともやろうと思えばできます。

会社が意図的に自主退職に追い込もうとしているのか。それとも、出来る限り客観的な基準でもって会社が求める水準に達していないから退職を要求しているのか。前者ならば社員側の主張が妥当だと思えますし、後者ならば会社側の主張が妥当と判断できます。

人によっては、半年ぐらい勤務した後、何かと理由をでっち上げて会社から退職を勧奨されたと言い、雇用保険で有利に扱われるように狙ってトラブルを起こすようなケースもあります。

退職を勧奨されたのか、そうではないのか。本当のところは当事者である企業と社員しか分からないので、外部の人たち、今回の場合だとユニオンですが、当事者ではない人が本当のことを把握するのは難しいのです。言った言わないの話になってしまって、どちらが本当のことを言っているのか分からなくなるので、この手の問題で拗れると実に厄介です。

労務トラブルでユニオンが登場するケースが多いようですが、弁護士に依頼するのも選択肢に入れるといいでしょう。「ユニオン=安価、弁護士=高価」と思い込んでいる方もいらっしゃるかもしれませんが、想像しているよりも弁護士を利用する費用は高くない。個人の労務トラブルならば、例えば、着手金で3万円、相手から取れるお金の20%という条件で引き受けてもらえる可能性はあります。月給の3ヶ月分とか6ヶ月分、他には未払いの残業代を過去2年分など、ある程度のボリュームで請求できる案件ならば、ユニオンではなく弁護士のところへ話を持ち込んだほうが早く解決できるのではないかと思います。

ユニオンを利用することを否定しませんが、どれぐらいのカネが動きそうか自分で算段し、金額が少なければユニオン、金額が大きくなりそうだったら弁護士に依頼を持っていけば良いでしょう。

雇用契約を解除しやすくして、金銭で補償する仕組み(例えば、月給の6ヶ月分を支払ってスッと解雇する方法)を用意しておかないと、同じようなトラブルは今後も続きます。

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所