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朝三暮四は繰り返される。デフレでも年金を減らさない。(Thu.20150226)

自民、新年金改革案了承…デフレ時も支給抑えず : 政治 : 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150224-OYT1T50135.html

 自民党の「年金に関するプロジェクトチーム(PT)」は24日、厚生労働省が示した新しい公的年金改革案を了承した。

 厚労省は当初、物価や賃金が下がるデフレ時にも年金支給額を抑制する「マクロ経済スライド」を適用する案を検討していたが、新しい案では適用を断念した。新案は、デフレ時に適用できなかった抑制分は翌年度以降に「先送り」し、賃金や物価が大きく上昇した年度にまとめて適用するとした。

 現行のマクロ経済スライドは、デフレ時には適用できないルールがある。しかし、急速な少子高齢化の下でも年金制度を維持するために、厚労省はデフレ時でも適用するとした当初案をまとめ、同省の社会保障審議会も1月の報告書でルール見直しを支持した。
 



つい先日、年金の減額で訴訟が起こった件について書いたのですが、同じことの繰り返しになるでしょう。

年金減額で訴訟。朝三暮四の猿を思い出す。(Wed.20150218)

 


物価に連動して年金の支給額を調整するのが物価スライド制です。本来ならば、物価が下落した段階で年金の支給額も同じように減額するところですが、すぐには減額せず、物価が上昇した段階で減額することで、年金が減ったという感覚を緩和するのが先送りの目的です。

ただ、減額を先送りにしても、ツケが溜まるだけであって、無くなるわけではないので、いつかの時点で年金を減額しないといけない。

上記のページでは、朝三暮四を例にして書きましたが、猿は騙せても、人間はなかなか簡単には騙せないものです。「今、年金は減らないけれども、後から減るよ」と言われたら、今は何も問題なくても、後になって減額する段階になると、「何で減らすんだ?」、「物価が上昇しているのになぜ年金が減るんだ?」と、物価スライド制のことなんてすっかり忘れてしまう。

忘れたならば思い出せば納得できるでしょうが、そもそも年金に物価スライド制の仕組みがあることをどれぐらいの人が知っているのでしょうか。

ただでさえ年金について詳しい人は少ないのに、一般の年金受給者が物価スライド制について理解しているとは思えません。理解していないがゆえに、年金を減額する段階になって、生存権がどうのとか、行政の裁量逸脱だのとの理由で裁判を起こすのではないでしょうか。


物価が下落しているときに年金を減らさないならば、物価が上昇しているときに年金を減らさないといけなくなる。年金の受給者はこのタイムラグの理由を理解できるのかどうか。

物価を意識せず、自分が偶数月に受け取る年金の額だけを意識している。これが年金の受給者のはず。「おっ! 年金が減っているねぇ、、。まぁ、物価スライドで調整されている分だから仕方ないね」と納得している人がいたら、その人はかなり年金について理解しているのでしょう。

タイムラグを作らず、物価が下落したら、キチンと年金も減らさないといけない。物価の変動と年金の支給額の変動、この両者の間で時間を空けてしまうと、年金の受給者が混乱する。

物価が上昇したときに減額すれば、減らされている感を緩和できるのでしょうが、あくまで先送りしているだけであって、減額されなくなるわけではない。飲食店でのツケである8,000円を後払いにしたからといって、それが6,000円になったりはしない。8,000円はそのまま8,000円です。今すぐには払わなくてよくても、いつかは払わないといけない。年金の物価スライド制もこれと同じです。

年寄りほどキチンと選挙に行く傾向があり、政治家にとって高齢者の票は重要です。そのため、選挙対策として年金の減額を後回しにするという動機もあるかもしれません。2015年の4月には統一地方選挙も控えていますから、2月の今は、年金が減るような施策を後に回そう判断する理由があります。



山口正博 社会保険労務士事務所
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© 社会保険労務士 山口正博事務所