年金減額で訴訟。朝三暮四の猿を思い出す。(Wed.20150218)



「年金減額は違憲」と提訴=受給者24人が国相手に―鳥取
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2015021700664


 2013年から始まった公的年金の減額は違憲として、鳥取県の年金受給者24人が17日、国を相手取り、減額取り消しを求める訴訟を鳥取地裁に起こした。
 国は、本来より高い特例水準を解消するため、13年10月から3年かけて公的年金の2.5%減額を決定。原告弁護団によると、特例水準解消に伴う年金減額の取り消しを求め提訴したのは全国初で、今後、全国各地で同様の提訴を予定しているという。
 訴状によると、原告側は、公的年金の減額が生存権を保障する憲法25条などに違反し、政府と厚生労働大臣の裁量逸脱と主張。13年10月の1%減額の取り消しを求めた。
 


年金には「物価スライド制」という仕組みがあり、物価水準と年金の給付水準が連動するように設計されています。これは平成16年からの制度ですから、小泉さんが内閣総理大臣だった頃です。

マクロ経済スライド|日本年金機構マクロ経済スライド|日本年金機構


いかにして年金の給付額を抑えるか。これが年金制度を維持するために最も重要な点ですので、物価に連動して年金の給付水準を変化させていく仕組みは妥当なものです。

平成16年というと、デフレ、デフレとニュースでも新聞でも頻繁に見聞きしていた頃です。福井俊彦氏が日本銀行の総裁で、量的緩和政策についてよく理解できたのを覚えています。私は大学生で、政治経済学部でしたから、大学のゼミでも、当時読んでいた日経新聞でも、デフレと量的緩和、この2つの言葉に頻繁に触れていました。

そのようなデフレの時期にできあがった物価スライド制ですが、本来ならばその頃にキチンと物価に連動して年金を減額していないといけなかった。物価が下落しているのですから、年金の給付額も減る。これが本来あるべき形だったのです。しかし、選挙を気にする政治家からの要望なのか、物価に連動させず、年金の給付水準を維持しました。

年金に関係するのは高齢者であり、高齢者は選挙の時に確実に投票しますから、年金を減らしたとなると、選挙に影響が出る。そのため、物価がある程度上昇するまでは減額を先送りにしようとした可能性があります。


時が経ち、現在は平成27年。そろそろ物価もいい頃合いに上昇してきたし、アベノミクス(という好景気らしき理由?)も相まって、先送りにしていた年金の減額をやろうと決めたのです。

ここで年金の受給者が、年金の減額は憲法25条に違反すると訴訟を起こしたという次第です。


予定通りに減額すれば反発があるので、後にした。けれども、後回しにしたものの、それでも反発があった。

朝三暮四のストーリーでは、嫌なことを先送りにすればハッピーになるのですが、年金では先送りにしてもハッピーにはなりませんでしたね。

朝に3つ、暮れに4つでは怒り。朝に4つ、暮れに3つでも怒る。猿は質量保存の法則に従いますが、年金の受給者は従わない。厄介なものです。


今回の裁判ですが、国側が確実に勝訴するでしょう。先送りにしていた減額を解消しているだけですので、政府や厚生労働大臣の裁量は問題にはなりません。

ルールに基いて物価に年金の水準を連動させていますから、政府や厚生労働大臣が裁量で年金を減らしているのではありません。確かに、年金の物価スライド制の仕組みは難しく、平成16年の段階でキチンと理解できていた人は少なかったかもしれません。そのため、物価スライド制の仕組みを知らない人は、突如として自分の年金が減額されたと思ってしまっているのかもしれません。

減額されても、憲法25条の生存権を脅かすほどの減額ではないですし、裁量逸脱という指摘もトンチンカンです。



山口正博 社会保険労務士事務所
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