book758(固定残業代は「仮払い残業代」と表現すべき。)

ケータイ料金と同じ?


「月給50万円。ただし、固定残業代を含む」こんな求人は「違法」じゃないの?
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残業代関連の話は終わること無くチョコチョコと出てきますね。

固定残業代、定額残業代、前払い残業代、残業代込みの手当など、残業代を一定の額に固定するような仕組みを採用している企業もあるようで、物議を醸しています。

残業代を一定に固定する話は今に始まったことではなく、随分と前からあって、今でも続いています。


固定残業代制度を導入すれば、法定時間外労働割増賃金の支払いを少なくできる。そう思っている方がいらっしゃるからこそ、固定残業代が話題になるのでしょうね。

ただ、誤解されている点があり、固定残業代はケータイの料金と同じようなものだと考えられているのではないでしょうか。

昔のケータイは、使ったら使っただけ料金を支払う従量制が基本でした。通話料金は高かったですし、パケット通信(懐かしい響き)は繋げただけ料金が発生し、毎月のケータイ代が3万円、5万円に達する人もいました。それにくらべて、2015年現在では、ケータイでネットを使っても月額5,000円程度で定額ですし、さらに音声通話まで定額になり、20年前に比べて遥かに良い環境になりました。

そのようなケータイの料金のように、残業代も定額化できると思われているフシがあります。


固定残業代を悪用する手口についても話が及んでいるようですが、「残業代の正確な金額が分からないように煙幕を張る」これが最大の悪用法です。

いかにして必要な割増賃金を支払わないようにするか。30,000円の割増賃金が必要なところ、何とかして20,000円に減額し、残りの10,000円を踏み倒す。これが固定残業代の狙いです。




固定なのに固定できない。


法定時間外労働に対する割増賃金は、そのルールが労働基準法で決まっており、雇用契約や就業規則で企業が任意に変えられるものではありません。

中には、定額残業代を推奨する人もいて、とある士業の人のウェブサイトで、定額残業代を導入しましょうと書いていたのを思い出します。社労士ではなかったのですが、無理なことを提案しても誰にも利益はありませんから、社労士だけでなく、他の士業の人も残業代を定額化するような提案はヤメておくべきです。


とはいえ、残業代を固定で支払うことそのものは法律に違反せず可能です。ただし、「固定の残業代 > 実際に必要な残業代」という形になっているという前提で。

例えば、固定で毎月、法定時間外労働に対する割増賃金として30,000円を支払われており、とある月に必要な法定時間外労働割増賃金が26,400円だった場合、固定残業代であっても問題ありません。必要な割増賃金以上に支払っていますので、不都合はありません。

問題は、上記の2つが逆転した場合です。つまり、「固定の残業代 < 実際に必要な残業代」という形になったときにトラブルが発生します。

毎月、固定で30,000円分の残業代が支払われているけれども、現実に働いた残業時間に応じた残業代を計算すると、38,270円になった。この場合、「固定の残業代 < 実際に必要な残業代」なので、足りない割増賃金(30,000 - 38,270 = -8,270)、8,270円を追加で支払う必要があります。


必要な割増賃金をカバーできていれば問題ないのですが、オーバーした時が厄介です。「固定なんだから、オーバーしても支払わなくていいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、それはできないんです。

「じゃあ、固定で残業代を支払う意味なんてないじゃないの」と思ったら、あなたの頭は正常です。

残業代を固定しても、給与計算の段階で、法定時間外労働の時間数を把握し、その時間数に応じた割増賃金を計算して、固定の残業代と照らし合わせ、過不足がないかチェックする。その結果、不足があれば追加で割増賃金を支払う。

どうです? これでも固定残業代に魅力を感じますか?

もはや固定残業代というよりも、「仮払い残業代」と表現したほうが適切です。


毎月、その都度、割増賃金を計算すれば1回で済むのに、固定の残業代があると、それと照らし合わせる作業が発生する。労務管理を面倒臭くするのが固定残業代なのですね。


残業対策では、「残業代」を削減するのではなく、「残業」を削減するのが正解です。発生してしまった残業代はもうどうしようもなく、支払う以外に手段はありません。

残業代が発生する前の段階、つまり残業の段階で対処するのが正攻法です。


1日8時間。これが標準的な所定労働時間ですが、8時間も同じ密度でミッチリと仕事をしているわけではありません。

お菓子を食べながらミーティングしたり、飲み物を飲んでコーヒーブレイク。作業の手を止めて、同僚と冗談で笑い合う。勤務時間にはこのような時間が多分に含まれていますから、実質の労働時間は1日6時間とか5時間ぐらいに圧縮できるのではないでしょうか。

もちろん、上記のような時間のすべてがムダではないですし、ある程度の気分転換は仕事に必要ですが、実質の労働時間は想像しているよりも短いはず。


仕事のやり方を変えて残業を減らす。妙な仕組みで残業代を減らさない。これがキモです。





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