介護サービスを使わないと、死人が出る。(Mon.20150209)




認知症の妻殺害で逮捕の夫「介護疲れた」 日常的に介護 札幌市
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20150209-00000013-fnn-soci


 7日、北海道・札幌市の住宅で71歳の女性が死亡しているのが見つかった事件で、警察は、女性の夫を殺人の疑いで逮捕した。
 逮捕された札幌市の無職・長岡 進容疑者(71)は、7日午前10時ごろ、自宅の寝室で、同居する妻の律子さん(71)の首を絞めて、殺害した疑いが持たれている。
 警察の調べに対し、長岡容疑者は「介護に疲れて、首を絞めた。間違いありません」などと、容疑を認めているという。
 警察によると、律子さんは、5年ほど前から認知症を患っていて、長岡容疑者が、日常的に介護していたという。
 長岡容疑者は、律子さんと長男との3人暮らしだった。
 警察は、当時の状況などを調べている。



「妻(or 夫)の介護は自分でやらなくちゃ」、「父親(or 母親)の介護は自分がやらなくちゃ」、このように思いながら家族を介護している人もいらっしゃるはず。

自分の家族ですから、自分で面倒を見てあげなきゃいけないという気持ちになるのは自然なことです。ただ、家族の面倒をみるといっても、数日や数週間ならば、まぁ特に問題なく対応できますが、それ以上の期間となると色々と問題が生じます。

介護と育児はセットで話されることが多い(法律でも育児介護休業法のように両者がセットになっている)のですが、両者には違いがあり、最大の違いは、「期間の違い」です。

育児は一定の時期が来れば終わります。生まれてすぐは手がかかりますが、保育園や幼稚園に行く頃になると、そろそろ「育児」という表現は薄れていきます。さらに、小学校に入学すれば、もう1人で留守番をしてくれるし、買い物だって1人で行ける年齢になります。

一方、介護は、いつからいつまでという期間がハッキリしていません。妻の面倒をみるとしても、2週間だけなのか、1ヶ月なのか、半年なのか、それとも4年なのか。終わりが見えないのが介護です。場合によっては、被介護者が死ぬまで介護しないといけない場合もありますから、介護する人の負担は想像よりも大きいのですね。


介護に疲れて、妻の首を締めて殺してしまった事件ですが、認知症の妻を5年ほど介護していたのですから、夫の肉体的、精神的な負担はかなりのものだったはずです。

妻を殺してしまったのは確かにダメですけれども、介護を経験した人ならば、この夫に同情する気持ちを持ってしまうはずです。

日常的に介護をしていたと書かれているので、おそらく介護サービスを使わず、自分で妻の介護をしていたのかもしれません。さらに、家族は、自分と妻、そして長男、合計3人だけです。つまり、自分以外に介護をしてくれる人がおらず、追い詰められていた可能性もあります。

しかも、妻は怪我で介護されているのではなく、認知症ですから、介護の難易度も高かったはずです。精神系の疾患ですから、いつ治るか分からないし、訳の分からない人を妻は言うし、急に怒ったり、泣いたり、怒鳴ったり、夫の負担は想像しにくいほどのものでしょう。


自分で介護を抱え込むと、死人が出る。私はそう思っています。介護に疲れて、刺殺、ベランダから落とす、お風呂に沈める、介護放棄して遺棄致死させるなど。介護に行き詰まると、命に関わります。

だから、介護サービスを積極的に使うべきであって、「家族だから自分でやらなきゃ」と思い込んではいけないのです。

介護サービスを購入して、空いた時間で仕事をして収入を得る(高齢者の場合は年金ですが)。そして、その収入で介護サービスを購入する。このように他の人の力を借りながら介護をすれば、ある程度のお金はかかりますが、死人が出る可能性は低くなるでしょう。



介護に限らず、子育ての際のベビーシッター、夫婦間の家事を代行するサービスなども同様です。

以前にトラブルを起こしたベビーシッターがいましたが、シッターのサービスも命を守る効果があります。育児の負担が原因で、自分の子供を虐待する人、さらには虐待の結果、自分の子を死なせてしまう人が過去おり、ニュースになったこともありました。

ベビーシッターは届出が必要になる。(Wed.20141029) - 労務管理のツボをギュッと押す社労士ですベビーシッターは届出が必要になる。(Wed.20141029) - 労務管理のツボをギュッと押す社労士です


「自分の子だから自分たちで育てなきゃ」と思い込むと、場合によっては子供の命に関わる状況にもなります。今では家庭が核家族化していて、他の人と協力して子育てする環境が乏しくなりました。「乳母」という存在など、もはや日常的に言葉すら聞かなくなりました。大河ドラマでは乳母がちょくちょくと登場しますけれども、2015年の現在では乳母が自分の子供の面倒を見てくれる場面はほとんど無いでしょう。

「家族の面倒は自分たちでやらなきゃ」と思い込むのはなぜでしょうね。お金が勿体無いという面も確かにあるでしょうが、介護サービスもシッターサービスも高額というほどのものではないし、介護に至っては介護保険からの補助もあります。


家庭の家事も、夫がやるか妻がやるか、多くの家庭でモメているはず。

(妻)「ゴミ出しはあなたの仕事でしょ!」、(夫)「外に行くんだろ? ついでにゴミ置き場に持っていけばいいじゃないか」、こんなイザコザを人は繰り返しているのでしょうね。


何でもかんでも自分でやりたがる人がいますが、介護も育児も、そして家事も、トラブルの原因はそういう人たちではないかと思います。

私もなるべく何でも自分でやりたがる傾向があるのですけれども、社会は分業によって発展しますから、単独でゴリゴリと事を進める人がいると、発展を阻害します。

不思議な話ですが、個人が無力になればなるほど社会が発展(色々な商売が生まれる)し、個人で何でもやろうとする(他人の力を借りないので商売が発展しない)と社会が停滞します。


介護、育児、家事、これらの分野では、「自分でやらなきゃ」という価値観を考えなおして、外部のサービスを積極的に使ってみてはいかがでしょうか。





山口正博 社会保険労務士事務所
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