book748(休日に健康診断を受ける。これは仕事?)

 

誤差の範囲か、それとも勤務時間の範囲か。


会社に所属して仕事をしていると、年に1回、定期に健康診断があります。これは労働安全衛生法という法律で決まっている健康診断で、会社に努めている人(学生など一部を除く)は毎年1回は受信するように決められているものです。

身長、体重、視力、聴力、他には心電図や採血、問診、胸部X線検査などもあります。検査の項目を知りたい方は、下記のPDFで紹介されていますので参照ください。


労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/130422-01.pdf


年1回の健康診断は、時期は決まっていないものの、いつの時点かで実施しますが、健康診断の当日に、診断のために要した時間は仕事の時間になるのかどうか。この点は昔からずっと話されてきて、今でも労務管理で話題になる点の1つです。


例えば、休日や有給休暇の日に健康診断を受けるように会社から求められたら。どう思うか。つまり、勤務日に健康診断を受けると、仕事を中断しないといけないし、診断を受けている時間も勤務時間として扱われるので、休みの日に健康診断を受けさせるという状況です。


健康診断をいつ、どの時間に受けるかは会社が決められるので、休みの日に健康診断を受けるように手配しても構わない、と考えるのか。

それとも、

定期の健康診断は「受けない」という選択ができないので、任意ではなく義務で受けないといけない。だから、仕事の時間と同じように、健康診断に要した時間は勤務時間として計算するべき、と考えるのか。

判断が分かれるところで、悩んでしまいますよね。





法律がないならば、当事者が決める。


結論から先に書くと、どちらの判断も正しいです。休みの日に健康診断を受けさせるのは構わないし、健康診断に必要な時間は仕事の時間と同じように扱うのもOK。

「え~!? どっちでもいいって、、困りますぅぅ、、」と反応したい気持ちはよく分かりますが、客観的な基準がないので、どちらでも構わないと言わざるをえないのです。


仮に、健康診断に必要な時間を勤務時間として扱ったとしたら、どうなるか。先ほどの立場だと、後者の立場で判断したらどうなるかを考えてみましょう。

定期健康診断に必要な時間は、1人あたり30分から1時間程度です。早い人だと20分もあれば終ってしまう人もいるし、採血や胃カメラなどまで対象になっている人だと1時間ぐらいは想定しておく必要があります。

長く見積もって、健康診断に必要な時間は1時間だとしましょう。そして、時間あたりの賃金を1,500円だと想定すれば、健康診断に要した時間を勤務時間として扱えば、1,500円の賃金が社員さんに追加されます。

1,500円の価値をどれぐらいだと見積もるかは人によって違いますが、定期健康診断は年に1回なので、1,500円の賃金が追加されるのも年に1回です。つまり、1年という期間に、わずか1,500円というお金が上乗せされるだけです。1年は365日、1日あたりだと、4円程度です。

もし、健康診断に必要な時間に給与を支払えと会社に求めると、会社も賃金が発生している時間に対して厳格になる。仕事に関係しないことはさせない。例えば、軽い雑談ですら禁止されかねないし、喉が渇いたから飲み物を飲みたいと思っても休憩時間じゃないからダメとか、トイレは3時間に1回だけとか。社員が時間に対し過剰にキッチリすれば、それに反応して会社も時間に対して過剰にキッチリとなり、お互いにギスギスした関係になる。

もちろん、時間は曖昧に管理せず、キッチリ管理する方が良いのですが、いわゆる「遊び」の部分を無くすぐらい詰めてしまうと、かえって不都合な状況を招くかもしれません。



健康診断の日を固定すると、その日は休みの人もいれば、出勤日の人もいます。休みの人は健康診断のためだけに会社まで来ないといけないでしょうし、出勤日の人は勤務時間中に抜けて健康診断を受けるので、診断に要した時間は勤務時間に含まれる。この点で両者には扱いの違いが生じますが、健康診断の実施日を固定していると、この違いを解消するのは無理です。

他にも、勤務時間帯が違う人もいますよね。もし午前中に健康診断を実施すると、夕方から出勤する人、夜から出勤する人、こういう人たちも勤務時間外に健康診断を受けないといけない。午前中に出勤している人は勤務時間中に健康診断を受けるけれども、それ以外の人は勤務時間外に健康診断だけを受けないといけない。


月曜日から金曜日まで、始業時間と終業時間は同じ、休みの日も同じ、そういう社員ばかりの会社ならば、一斉に同じ時間に健康診断を受けられるでしょうから、上記のような扱いの違いは発生しません。しかし、そのような会社ばかりではありませんから、どうしてもある程度の誤差を受け入れないといけないのです。


健康診断の日を固定せず、社員の休日に健康診断の実施日を合わせるとなると、同日に健康診断を実施できません。

社員数が多い会社だと、健康診断サービスを販売する業者に依頼し、専用のワゴン車で会社まで乗り付けてもらい、会社で一斉に健康診断を実施するでしょう。会社の会議室や食堂を一時的に健康診断の会場に切り替えて、胸部X線検査は業者のワゴン車内で行う。

一方、社員数が少なければ、個別にどこかの病院やクリニックで受けてもらうところもあるでしょう。これならば、個人ごとにスケジュールに合わせられます。しかし、会社から遠い場所に病院があるかもしれないし、移動するとなると移動時間の扱いはどうなるんだという新たな問題もあります。

どちらも一長一短です。


会社の全額負担で健康診断を受けられるのですから、そのために必要な時間は誤差の範囲だと認めたほうが、物事はスンナリと進むように私は思います。





山口正博 社会保険労務士事務所
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