清廉な女子アナウンサーはどこにいる? - 日テレ女子アナの内定取り消し(Tue.20141125)

日テレ・ホステス女子アナ内定取消 被害者に「わがまま」「入社されても困る」との声も | ビジネスジャーナル日テレ・ホステス女子アナ内定取消 被害者に「わがまま」「入社されても困る」との声も | ビジネスジャーナル  



アナウンサーとして内定を得ていたものの、銀座のクラブで働いていた経歴を伝えていなかったという理由で内定を取り消されたという話が最近ニュースになりました。

日本テレビでの出来事で、テレビ局ではあまりこの件については報道されておらず、どこのテレビ局でも起こりうるようなことですから、あまりホイホイと報道しにくいのかもしれません。


内定を取り消された本人は、すでに内定を得て、2015年4月に入社する予定で研修を受けている最中だったが、2014年の3月に銀座のクラブでの就業歴を会社に伝えたところ、今回の内定取り消しに至ったとのこと。

内定取り消しというと、すぐに「企業側がイケナイ」と反応しがちですが、今回の日本テレビ側にも相応の言い分があり、サクッと結論を出しにくいところです。


日本テレビ:

銀座のクラブでの就業経験を事前に伝えなかった。虚偽申告であり、過去に作成した誓約書の内容に反する。

アナウンサーには清廉性が求められるので、ホステスとしての就業経験は清廉性を損ない、アナウンサーに相応しくない。

上記2点の理由により、内定を取り消す。


内定者:

確かに、銀座のクラブで働いた経験があるが、その程度で内定を取り消されるのは酷だ。人事担当者は大丈夫だと回答したのに、後から結論が変わった。


ホステスとしての就業経験が内定を取り消すほどの理由なのかどうか。この点が最大の焦点です。

大阪でも、梅田や京橋のような繁華街ではホステスが働いていそうなお店がたくさんあります。仕事の中身は、お客さんの話し相手になって、お酒をグラスに注いでお客さんに渡す、男性客の自慢話を聞いたり、愚痴を聞いたりと、多岐にわたります。私は実際にこの手のお店に行きませんので、詳しい実態は把握していませんが、時折テレビで放送される内容の範囲では知っています。

ホステスとかクラブというと、いわゆる性的な風俗店を連想する人もいるかもしれませんが、そういうお店とは違いがあります。飲食の場であり、会話をする場所なので、単純に言うと飲食店です。ただ、男女間のいやらしいイメージを持つ人もいます。



薬物の使用歴、殺人、詐欺、強盗など、重大な悪い行為が過去にあり、それを隠していたならば、内定取り消しも納得できます。しかし、クラブでの就業経験は法律に違反するものではないでしょうし、アナウンサーの清廉性というのも曖昧で、これらの理由でもって内定を取り消すのは行き過ぎです。


ただ、企業には採用に際しての自由があります。採用活動そのものが差別の連続です。書類選考、筆記試験、何回もの面接、人をふるい分けるには差別しないといけないので、何が差別かと言われれば、「全て」と答えることになる。

美人の女性が採用される。学歴を基準に採用される。留学経験を基準に採用される。外国人の採用枠を増やす。女性を積極的に採用する。男性を主に採用する。日本人を主に採用する。イケメンを採用する。

採用の基準は企業ごとに違い、どのような基準で採用するかは企業の自由です。ある人にとって有利なポイントがある人にとって不利なポイントになり差別だと感じる。

「採用の基準=差別の基準」と言ってもいい。差別の結果、採用される人とそうでない人が分かれる。つまり、採用とは差別なのです。


全く同じではないものの、類似事例として、三菱樹脂事件があります。

三菱樹脂事件

学生運動に参加していたことを会社に伝えなかったので、本採用を取り消されたという事例。この事例では、採用自体はされたものの、本採用を拒否されたので、今回の事例とは同じではありません。今回は、試用期間前の内定を取り消されたので、三菱樹脂事件と同じとは言いにくいが、類似事例ではあります。


他に、日立就職差別事件もあります。

日立就職差別事件

こちらは、韓国籍であることを伝えず採用され、後からそのことが発覚し、採用を取り消されたという事例です。


三菱樹脂事件では和解で決着し、原告は復職しています。日立就職差別事件では、日立製作所が敗訴しています。


学生運動をしていても、韓国籍であることを隠していても、原告側が勝っている(三菱樹脂事件では和解だが、復職しているので実質的に勝訴)のが過去の判例です。

では、ホステスの就業経験を会社に伝えなかったらどうかと言われれば、上記の2例よりは軽度の理由ですし、日本テレビ側が勝つ見込みはあまりなさそうです。



随分と前からですが、女子アナウンサーはタレント化しています。

純粋なアナウンサーというと、ニュース番組で淡々とニュース原稿を読み上げるイメージがあり、堅実なイメージがある。だから、清潔感や清廉性のようなものが必要なのかもしれない。

しかし、タレントとなると、他の人との違い、いかに自分が目立つか、そういう要素がポイントになる。アナウンサーになる前に銀座のクラブで働いていたという経歴、これはタレントとしては話のネタになるでしょう。テレビカメラの前で話せば、「えぇ~っ !?」と周りの人は反応するはず。

タレントアナウンサーとして位置づけるならば、テレビ局はスキャンダルな要素を逆手に取って利用するぐらいでもいい。

内定を取り消された本人は名前も顔も出て、注目度が上がっているので、他のテレビ局が引き込んでしまうのもいい。日本テレビの採用選考をクリアしているので、採用選考のコストを省けるため、他局にとっては都合が良い。


「わがまま」という反応もあるみたいですが、これは本心ではなく、嫉妬では? アナウンサーになれる女性は限られていますから、採用されなかった女性から嫉妬されている可能性があります。女子アナウンサーという華やかな職業に就いた人に嫉妬する女性がいても不思議ではありませんが、ホステスとしての就業経験と内定取り消しのバランスが問題の焦点ですから、「わがまま」という表現は当てはまりません。


「『人事部は事実を把握していなかったのか』と追及される」と書かれている部分がありますが、いくら人事部といえども、本人が申告してこない情報まで把握するのは難しい。最近は個人情報関連でナンダカンダと制約が多いので、アレコレと他人を調査しにくい。あくまで本人が伝えてきた情報で判断するしかないのが現状です。内定者を一人一人いちいち調査しているほど採用担当者もヒマではないでしょうから、事前に把握するのはやはり非現実的です。


「ホステスとしての就業経験」と「内定取り消し」、この両者のバランスがとれていれば内定取り消しは妥当となるし、バランスがとれていなければ内定取り消しはダメという結論になります。



山口正博 社会保険労務士事務所
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