book746(帰り道に用事を頼まれた。これは業務?)




「帰宅のついでに製品のサンプルを持って行って」。


18時42分に仕事が終わり、「さぁ、帰るかな」と思ったその時、職場の製品担当者である山下さんから、「このサンプル、今日中に取引先まで持って行ってくれる? 確か通勤途中に取引先があったはずだから、帰宅途中に寄れるよね?」と木村さんは言われた。

サンプルということは、木村さんのが所属する会社は何らかの製造系の会社か、それとも食品を製造する会社でしょうか。オーダーメイドの製品を作り、その試作品ができたので発注先に渡そうとしているのか。それとも、食品を作る会社が飲食店にサンプルを持って行こうとしているのか。そのような場面をイメージすれば良いかもしれません。

「仕事が終わった後に取引先に行くのか、、」と木村さんは思うが、「渡すだけだから。数分で終わるからさ」と山下さんは木村さんを説得した。

職場と自宅が近いと、どこかに寄って何かをしてと頼まれる可能性はあまり無いかもしれませんが、自宅が職場から離れていると、色々な場所に立ち寄れます。上記のように、帰宅のついでに取引先に寄ってとか、個人的なことだと、電車通勤ならば途中の駅で降りてフィットネスクラブに行くとか、ジョナサンに立ち寄って食事をしてもいい。東急ハンズで買い物をしてもいいし、紀伊國屋書店に寄って本を買ってもいい。

とはいえ、帰宅途中にあまり色々と行動すると、労災関連で物議を醸すので、ほどほどにしておくのが賢明です。


職場と自宅を移動する経路上に取引先の会社があり、帰宅途中に立ち寄れるからついでに用事を済ませて欲しいと言われる。これは日常的に起こりそうな出来事ですよね。


ただ、仕事が終ってから、仕事に関連する用事を任せられると、「用事を処理するための時間を労働時間として含めないといけないんじゃないか?」とか、「残業代は出るの?」とか、疑問点がフツフツと湧いてくる。

他にも、「確かに仕事に関連する用事かもしれないが、サンプルを渡すだけで、数分で終わるんだから、その程度は誤差として考えるべきだろう」と思う人もいるかもしれませんね。





誤差と考えるか。仕事の時間に織り込むか。


ちょっと寄って、渡すだけ。時間も数分。「それぐらいならばいいだろう」そう思う方もいらっしゃるでしょうし、誤差と判断することに私もまぁ納得できるところです。

ただ、サンプルを取引先に渡しに行く行為は、厳密には仕事を構成する要素の一部ですから、誤差として無視するのではなく、キチンと勤務時間として計上すべきとも考えられます。

上記の2つの判断、どちらにも一理あり、判断に迷うところですよね。


もし、サンプルを渡す時間を勤務時間として計算するとしても、職場外でも行動ですから、厳密にその内容を把握するのは厄介です。3分で終ったかもしれないし、10分かかったかもしれないし、取引先の応接室で待たされてトータルで30分かかったかもしれない。イレギュラーな要素がある中で、これは勤務時間、これは勤務時間じゃないとキチンと分けるのは厄介です。仮にキチンと両者を分けられたとしても、勤務時間として計上できるのは数分もしくは10分程度です。

面倒な割に手間に見合わない結果で、何だか諦めたくなる気持ちになりますね。


解決策としては、サンプルの受け渡しに必要な時間を予め勤務時間として計上しておく方法です。木村さんは18時42分に仕事が終わりましたが、所定労働時間は18時30分だったとしましょう。そして、取引先にサンプルを渡す時間を10分だとみなして、勤務時間を10分プラスする。つまり、実質的に終業時間を18時52分に変えて、用事の時間を勤務時間として織り込みます。

もちろん、これはあくまで用事に要する時間を「みなしているだけ」ですから、厳密な処理ではありません。理想としては、用事に要した時間を厳密に把握できるのが良いのですが、それをするとなると不経済ですから、会社と社員さんの間で納得できる妥協案を出すのが現実の解決策です。

「渡すだけだから。数分で終わるからさ」と山下さんは木村さんを説得したのですが、「渡すだけだから。数分で終わるからさ。必要な時間として勤務時間も10分増やしておくから」とでも言えば、木村さんも「まぁ、それなら」と納得しやすいでしょう。



山口正博 社会保険労務士事務所
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