book738(台風が来た。JRが止まった。休業手当は必要?)




午後2時に閉店するお店。


2014年10月13日に、大阪にも台風19号が来ました。フィリピン東部で動いていたときは、900hPaの勢力で、規模が大きい台風だったものの、四国から近畿地方に来る頃には、960hPa程度まで弱まっており、13日には大阪でも風や雨が強くなったものの、台風というにはちょっと大袈裟な程度でした。

10月11日か12日に、JR西日本が13日の午後4時以降の在来線を全てストップさせると決め、13日には予定通りに電車が止まりました。そのため、お店は午後2時までで営業を終えて閉店し、シャッターが閉まっているお店が多々ありました。

午後4時以降は電車がJRが動かないので、それまでに電車通勤の人が帰宅できるように、午後2時で営業を終了させていたのでしょう。


早めにお店を閉めるとなると、問題になるのが労働基準法26条の休業手当です。

労働基準法26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

例えば、1日8時間の勤務で契約している人を、4時間の勤務で終わらせて帰宅させると、残りの4時間分は休業になります。本人の希望で早退した場合には休業ではありませんが、会社側の判断で勤務時間を短縮させた場合(使用者の責に帰すべき事由による休業)には休業として扱われます。

では、台風がやってきたので、営業時間を短縮して、店を早く閉めたら、労働基準法26条(以下、26条)の休業になるのかどうか。ここが考えどころです。


台風は自然の現象なので、それによって店を早く閉店しても使用者の責任にはならない。だから、26条の休業にはならない。シンプルに考えると、このような結論になるはずです。

しかし、一方で、台風が来ても、お店を営業し続けることは可能なのだから、営業が可能であるのにあえて閉店したとなれば、それは使用者の責任で営業時間を短縮したことになり、26条が適用される。こう考えることも可能です。



随分と前のことですが、2008年の9月に発生したリーマン・ショックで、多くの企業に影響があり、操業を停止し休業したところもありました。この頃に、雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金が用意され、それを利用した企業もあるでしょう。

この助成金を使うには、休業手当を支払う必要があり、休業手当を支払うということは、26条が適用されて使用者の責任で休業させていることになる。つまり、リーマン・ショックで商売に影響が出て休業すると、それは使用者の責任として扱われていたのです。

経済災害だと使用者の責任になり、自然災害だと使用者の責任になるのかどうか。ここが問題です。






台風は毎年やってくる。対処法を決めておく。


台風でお客さんが少ない。だから、営業時間を繰り上げて閉店する。台風が来ると、このパターンが最も多いはずです。

風で物が飛んできて、それがお店の中に飛び込み、店の什器が壊れた。だから、修繕するまでは営業を停止する。このような状況ならば、26条の休業にならない。他にも、洪水で店舗の1階部分に水や泥が入り込み、営業できなくなった場合。この場合も26条の休業にはならない。

よくあるパターンは、店の設備は台風で壊れていないし、水や泥が店に入り込んできたわけでもなく、台風で来客が少ないので営業時間を短縮する場面です。確かに、お客さんが少ない、もしくはほとんど来ないのに、あえて店を開けていても仕方がないので、早めに店を閉めて帰ったほうが賢明です。


ただ、2014年10月13日は、台風19号だけでなく、JRの運休が重なりましたので、営業しようと思っていても、電車通勤の人が午後4時以降に自宅へ帰れなくなるので、やむを得ず営業時間を短縮したところも多かったはず。

大阪の百貨店やショッピングセンターも、午後2時で閉めたところがいくつもあり、もしJRが運休しなければ、いつもの閉店時間まで営業していたかもしれませんが、それもできなかった。

地下鉄やバスは動いていたようなので、JRの電車に乗らずとも、バスと地下鉄を組み合わせれば移動できるだろうとも思えますが、普段とは違う通勤経路を利用するとなると、交通費や労災の扱いも面倒ですから、営業時間を短縮して閉店するのは妥当な判断だったと思います。

このような状況でも26条を適用させるとなると、さすがに酷です。

ただ、JRが通常通りに動いていたら、どうなっていたかは判断が分かれるところです。


チェーン店のお店は台風が来ても店を閉めない傾向があります。飲食店でも小売店でも、小規模なお店だとアッサリと店じまいするのですが、チェーン展開する飲食店や小売店だと、風が吹いても、雨が降っても、いつも通りにお店を開けています。

営業時間を短縮してしまうと労働基準法26条が適用される可能性があるから店を閉めないとも考えられますが、店によって対応が違うと感じます。


規模の違いはあれども、毎年、台風はやってきます。台風が来るたびに、休業なのかどうか。JRが止まったので、バスや地下鉄を使った。その交通費はどうなるのか。などと考えるのではなく、台風が来たときの対処を決めておくのが良いでしょう


「台風が近づいた場合、会社の判断により、営業時間を短縮する。もしくは臨時休業にする場合がある。その場合、労働基準法26条の休業手当は支払わない」と就業規則に書いておくのも一考です。

ハッキリと台風の影響だと分かる場合には、休業手当を支払わなくても、社員本人にとっても納得できるし、休業手当の支払いを回避するために強引に出勤させられる方が厄介です。




山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所