book736(定額残業代はオトク。本当なの?)

 

残業代もパケット定額のようにできる?


飲食業界の「長時間労働とサービス残業」がなくならない理由
http://nikkan-spa.jp/708422

( - 引用開始 - )
「飲食店は客待ちの待機時間が多いので、経営者の本音は『接客時間だけが労働』です。例えば、月45時間とか月60時間の時間外労働の割り増し賃金をあらかじめ基本給に組み込む『定額残業代』を導入して人件費を抑える企業がかなりあります。最低賃金で換算している場合が多く、長時間労働でも労務コストが抑えられる『悪夢のサイクル』が完成します」
( - 引用終了 - )

飲食業界の「長時間労働とサービス残業」がなくならない理由 | 日刊SPA!飲食業界の「長時間労働とサービス残業」がなくならない理由 | 日刊SPA!  



人件費を減らすために、定額残業代を導入する企業もあるようですが、どれほどのメリットがあるのでしょうか。

基本給に定額の残業代を含めたり、各種の手当に定額の残業代を含めたりと、色々な手法があるようですが、そのような手法を用いるからには、何らかの利点があるのかと思うところですが、果たしてどうなのでしょうか。


例えば、基本給の中に月20時間分に相当する残業代(法定時間外割増賃金のこと)を含めて支払っている会社があるとしましょう。その会社で働いている社員、内田さんの例で考えてみます。

内田さんは、毎月、基本給に月20時間分の残業代を含めて支払われています。この前提で、2014年9月に、法定労働時間外の残業を「14時間実施した場合」と「27時間実施した場合」で比較してみましょう。


月に、月14時間の残業ならば、定額残業代の枠である20時間を超えていません。一方、月27時間の残業だと、定額残業代の枠である20時間を超えています。

この場合、実際に支払う残業代はどうなるのか。この点が問題となります。






二度手間な仕組み。


まず、残業を月14時間実施した場合。この場合、定額残業代として支払われる残業代は20時間分ですから、実際に支払うべき残業代、14時間分相当をカバーできています。そのため、残業代の支払いに関しては問題ありません。

一方、残業を月27時間実施した場合。この場合、定額残業代として支払われる残業代は20時間分ですから、実際に支払うべき残業代、27時間分相当をカバーできていません。そのため、追加で、不足分である7時間分を支払う必要があります。

定額残業代に対するイメージは、おそらくスマホのパケット定額サービスのような感じで、一定以上の残業に対しては割増賃金を不要にできると思われているフシがあります。

確かに、スマホのデータ通信料金は定額ですから、ドンドンとデータ通信しても料金は増加しない。一定の通信量に達すると通信速度が遅くなったり、高速通信を維持するには追加料金が必要だったりと、選択肢がありますが、通信料金は定額制が標準です。

しかし、労務管理では、実際に残業した時間に対して割増賃金が必要で、「ウチの会社の残業代は定額だ。だから決まった額以上は支払わないよ」と剥れることはできません。


ここで、「じゃあ、定額残業代には何のメリットがあるの?」と思うはずです。その反応はマトモです。

定額枠を超過すれば追加で残業代を支払う必要がありますし、追加で残業代が発生する可能性があるのだから、勤務時間もキチンと把握しないといけない。ならば、最初から、その都度、残業代を計算する方が作業が少なくていいじゃないか。そう思えるはずです。

基本給や手当に残業代を組み込むのも、わざと残業代の内訳がわからないように煙幕を張るためではないかと疑われかねず、社員から不審がられるでしょう。

とはいえ、残業代を定額で支払うことそのものは法律に違反していませんし、他の費目の中に残業代を含めるのも構いません。ただし、実際に発生した残業に相当する残業代はキチンと支払う必要があるので、ヘンな仕組みで残業代を支払っても、それが減るわけではありません。


わざわざ二度手間になる仕組みを導入する必要はないし、残業代が定額枠に達しなければ人件費をアップさせる仕組みにもなります。

ただ、残業代を多く支払ってもいいから、残業代を計算する手間を省きたい。そういう会社には合った仕組みかもしれません。実際に発生する残業時間よりも常に多く残業代の枠を設定しておけば、確かに若干ではあるものの手間を省くことも可能ではあります。

しかし、いずれにせよ、給与計算は毎月行うものですし、勤務時間の管理も行うのですから、定額残業代の仕組みで省ける手間は誤差程度でしかないでしょう。





山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所