有給休暇と残業代を相殺。たかの友梨の労務管理(Fri.20140829)



「たかの友梨」に是正勧告=仙台店、残業代勝手に減額-労基署
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201408/2014082200762&g=soc


 美容サロン「たかの友梨ビューティクリニック」の仙台店が、エステティシャンらの残業代を勝手に減額したなどとして、仙台労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが22日分かった。勧告は5日付。弁護団の太田伸二弁護士は「仙台だけでなく、全国の店でも同様の事例がある」と全社的に労働環境の改善を求める考えだ。
 
 弁護団によると、仙台店では、従業員が有給休暇を取得すると、残業代から有給分を無断で差し引いて支給していた。また、給与から社会保険料などを天引きする制度を導入する際は、従業員が選んだ代表者と協定を交わす必要があるのに、本人の承諾を得ずに店側が選んだ従業員と協定を結んでいた。
 
 仙台店のエステティシャンら女性4人(うち2人は退職)が6月に仙台労基署に申告していた。



「たかの友梨社長、組合活動に圧力」 従業員ら申し立て
http://www.asahi.com/articles/ASG8X4K6TG8XULZU00D.html


 「たかの友梨ビューティクリニック」を経営する「不二ビューティ」(本社・東京都)の従業員が加入するブラック企業対策ユニオンは28日、同社の高野友梨社長(66)から、組合活動をしていることを理由にパワーハラスメントを受けたとして、宮城県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。

 同ユニオンが公開した当日の高野社長の言葉を録音したデータによると、高野社長は席上、組合に入っている女性を名指しして、「間違っているとはいわないけれども、この業界の実態をわかったときに、どうなんだろうか」と組合活動を非難した。さらに「労働基準法にぴったりそろったら、(会社は)絶対成り立たない」「つぶれるよ、うち。それで困らない?」などと問いただした。

 ほかの従業員にも「組合に入られた? 正直に言って」と組合員であるかどうかを確かめようとした。




たかの友梨:通報者に精神的圧迫 女性社員が保護申告
http://mainichi.jp/select/news/20140829k0000m040095000c.html


 エステサロン大手「たかの友梨ビューティクリニック」を経営している「不二ビューティ」(本社・東京都渋谷区)が給料から違法な天引きをしているなどと労働基準監督署に内部通報したところ、長時間の詰問など精神的な圧迫を受けたとして、仙台市内の店に勤務していた宮城県の女性社員が28日、厚生労働省に公益通報者保護の申告をした。加入する「エステ・ユニオン」も宮城県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。

 申告書などによると、女性は5月に同社に労組の結成を通知、給与からの制服代の天引きや未払い残業代の支払いなどを求めて団交を重ねたが解決せず、労基署に違法な状況を申告した。仙台労基署は8月5日に違法な給与の減額分の支払いなどを命ずる是正勧告を行った。

 労組がこの経緯を公表しようとすると、店を訪れた高野友梨社長が全従業員を集めて食事会を開き、女性を名指しして「(労基法通りにやれば)潰れるよ、うち。潰してもいいの」などと述べたという。

 女性は職場に行けない状況が続いているといい「幹部に囲まれ名指しで非難され、恐怖以外のなにものでもなかった。公益通報者にこうした攻撃は許されない」と話している。




従業員が有給休暇を取得すると、残業代から有給分を無断で差し引いて支給していた。


私が最初に見たニュースがこれで、有給休暇を取得すると、残業の部分と相殺されるという内容。

「残業代から有給分を無断で差し引いて」とはどういうことかというと、例えば、有給休暇を取得して、1日8時間分が有給休暇として処理された場合に、一方で、8時間相当の残業が別の日に発生していたとしたら、有給休暇で8時間分の賃金が支払われているので、8時間分の残業については賃金無しとしたのか。

それとも、ベース部分の給与に上乗せされた25%の割増賃金部分のみを対象に、有給休暇中の賃金に相当する額を減額したのか。

実際の処理方法は上記の2つのいずれかと思います。


有給休暇と法定時間外勤務の割増賃金を相殺する根拠は無く、両者は全く別物です。有給休暇は有給休暇として扱い、残業は残業として扱わないといけないので、上記のような処理が行われていたとすれば、適切な処理ではありません。




給与から社会保険料などを天引きする制度を導入する際は、従業員が選んだ代表者と協定を交わす必要があるのに、本人の承諾を得ずに店側が選んだ従業員と協定を結んでいた。


これは悩ましい部分で、たかの友梨に限らず、労働組合が無い企業では似たような状況になっている会社は多々あるはずです。

労働組合があれば、それが労働者の代表として協定を締結できるのですが、組合が無い場合、労働者の代表を挙手や選挙で選ばないといけないので、この手続をまどろっこしく感じ、「じゃあ、佐藤さんが従業員代表ということで」というように経営側の人が従業員の代表を選んでしまったりしている会社も少なくないはず。

これと似たような事例では、ワタミでもありましたし、店側が選んだ従業員と協定を締結している会社は他にもあるはずです。

そのため、この点については、たかの友梨に限ったことではありません。





たかの友梨では、インセンティブ型の報酬体系になっていて、成果に応じた報酬が支払われ、労働基準法の時間ベースの労務管理には馴染まない職場のようです。

上記の朝日新聞デジタルのウェブサイトでは、音声データが公開されているので、興味のある方は聞いてみると良いでしょう。


もし、労働基準法通りに労務管理できないならば、雇用ではなく請負契約に切り替える(請負契約には一長一短あり)か、それとも報酬におけるインセンティブの割合を低下させて、固定支給の割合を増加させる方法もあります。他にも、インセンティブ部分は全て賞与に集中させ、給与は固定報酬のみにするのも1つの方法です。

雇用契約だと、どうしてもインセンティブ型の報酬体系に馴染みません。時間と報酬をリンクさせるのが雇用契約であり労働基準法ですから、「成果に応じて支払う」企業には合いにくい仕組みになっています。

とはいえ、法律違反の状態をそのままにするわけにはいきませんので、上記に書いたように、「請負契約に切り替える」、「報酬におけるインセンティブの比重を下げる」、「インセンティブは賞与で、固定給は給与で、というように分ける」などの方法を用いて対処する必要があります。


美容サロンでは固定で給与を支払っていたら回らなくなるという事情もあるようですから、法律に違反しないように、商売の実情に合った労務管理に変えないといけないでしょう。



山口正博 社会保険労務士事務所
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