あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

有給休暇と残業代を相殺できる?

帳消し



「たかの友梨」に是正勧告=仙台店、残業代勝手に減額-労基署
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201408/2014082200762&g=soc


 美容サロン「たかの友梨ビューティクリニック」の仙台店が、エステティシャンらの残業代を勝手に減額したなどとして、仙台労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが22日分かった。勧告は5日付。弁護団の太田伸二弁護士は「仙台だけでなく、全国の店でも同様の事例がある」と全社的に労働環境の改善を求める考えだ。
 
 弁護団によると、仙台店では、従業員が有給休暇を取得すると、残業代から有給分を無断で差し引いて支給していた。また、給与から社会保険料などを天引きする制度を導入する際は、従業員が選んだ代表者と協定を交わす必要があるのに、本人の承諾を得ずに店側が選んだ従業員と協定を結んでいた。
 
 仙台店のエステティシャンら女性4人(うち2人は退職)が6月に仙台労基署に申告していた。



「たかの友梨社長、組合活動に圧力」 従業員ら申し立て
http://www.asahi.com/articles/ASG8X4K6TG8XULZU00D.html


 「たかの友梨ビューティクリニック」を経営する「不二ビューティ」(本社・東京都)の従業員が加入するブラック企業対策ユニオンは28日、同社の高野友梨社長(66)から、組合活動をしていることを理由にパワーハラスメントを受けたとして、宮城県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。

 同ユニオンが公開した当日の高野社長の言葉を録音したデータによると、高野社長は席上、組合に入っている女性を名指しして、「間違っているとはいわないけれども、この業界の実態をわかったときに、どうなんだろうか」と組合活動を非難した。さらに「労働基準法にぴったりそろったら、(会社は)絶対成り立たない」「つぶれるよ、うち。それで困らない?」などと問いただした。

 ほかの従業員にも「組合に入られた? 正直に言って」と組合員であるかどうかを確かめようとした。




たかの友梨:通報者に精神的圧迫 女性社員が保護申告
http://mainichi.jp/select/news/20140829k0000m040095000c.html


 エステサロン大手「たかの友梨ビューティクリニック」を経営している「不二ビューティ」(本社・東京都渋谷区)が給料から違法な天引きをしているなどと労働基準監督署に内部通報したところ、長時間の詰問など精神的な圧迫を受けたとして、仙台市内の店に勤務していた宮城県の女性社員が28日、厚生労働省に公益通報者保護の申告をした。加入する「エステ・ユニオン」も宮城県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。

 申告書などによると、女性は5月に同社に労組の結成を通知、給与からの制服代の天引きや未払い残業代の支払いなどを求めて団交を重ねたが解決せず、労基署に違法な状況を申告した。仙台労基署は8月5日に違法な給与の減額分の支払いなどを命ずる是正勧告を行った。

 労組がこの経緯を公表しようとすると、店を訪れた高野友梨社長が全従業員を集めて食事会を開き、女性を名指しして「(労基法通りにやれば)潰れるよ、うち。潰してもいいの」などと述べたという。

 女性は職場に行けない状況が続いているといい「幹部に囲まれ名指しで非難され、恐怖以外のなにものでもなかった。公益通報者にこうした攻撃は許されない」と話している。




従業員が有給休暇を取得すると、残業代から有給分を無断で差し引いて支給していた。

筆者が最初に見たニュースがこれで、有給休暇を取得すると、残業の部分と相殺されるという内容。

「残業代から有給分を無断で差し引いて」とはどういうことかというと、例えば、有給休暇を取得して、1日8時間分が有給休暇として処理され、一方で、8時間相当の残業が別の日に発生していたとしたら、有給休暇で8時間分の賃金が支払われているので、8時間分の残業については賃金無しとしたのか。

それとも、基本部分の給与に上乗せされた25%の割増賃金部分のみを対象に、有給休暇中の賃金に相当する額を減額したのか。

実際の処理方法は上記の2つのいずれかと思います。


有給休暇と法定時間外勤務の割増賃金を相殺する根拠は無く、両者は別物です。有給休暇は有給休暇として扱い、残業は残業として扱わないといけないので、上記のような処理が行われていたとすれば、適切な処理ではありません。




給与から社会保険料などを天引きする制度を導入する際は、従業員が選んだ代表者と協定を交わす必要があるのに、本人の承諾を得ずに店側が選んだ従業員と協定を結んでいた。

これは悩ましい部分で、たかの友梨に限らず、労働組合が無い企業では似たような状況になっている会社は多々あるはずです。

労働組合があれば、それが労働者の代表として協定を締結できるのですが、組合が無い場合、労働者の代表を挙手や選挙で選ばないといけないので、この手続をまどろっこしく感じ、「じゃあ、佐藤さんが従業員代表ということで」というように経営側の人が従業員の代表を選んでしまったりしている会社も少なくないはず。

これと似たような事例では、ワタミでもありましたし、店側が選んだ従業員と協定を締結している会社は他にもあるはずです。

そのため、この点については、たかの友梨に限ったことではありません。


たかの友梨では、インセンティブ型の報酬体系になっていて、成果に応じた報酬が支払われ、労働基準法の時間ベースの労務管理には馴染まない職場のようです。

上記の朝日新聞デジタルのウェブサイトでは、音声データが公開されているので、興味のある方は聞いてみると良いでしょう。


もし、労働基準法通りに労務管理できないならば、雇用ではなく請負契約に切り替える(請負契約には一長一短あり)か、それとも報酬におけるインセンティブの割合を低下させて、固定支給の割合を増加させる方法もあります。他にも、インセンティブ部分は全て賞与に集中させ、給与は固定報酬のみにするのも1つの方法です。

雇用契約だと、どうしてもインセンティブ型の報酬体系に馴染みません。時間と報酬をリンクさせるのが雇用契約であり労働基準法ですから、「成果に応じて支払う」企業には合いにくい仕組みになっています。

とはいえ、法律違反の状態をそのままにするわけにはいきませんので、上記に書いたように、「請負契約に切り替える」、「報酬におけるインセンティブの比重を下げる」、「インセンティブは賞与で、固定給は給与で、というように分ける」などの方法を用いて対処する必要があります。


美容サロンでは固定で給与を支払っていたら回らなくなるという事情もあるようですから、法律に違反しないように、商売の実情に合った労務管理に変えないといけないでしょう。


残業代と有給休暇を相殺しない会社になるためには?

 

 

年次有給休暇を使って残業をなかったことにできる?

有給休暇と残業の相殺の例は、他にも考えられます。

例えば、月曜日に10時間勤務して、8時間を超えた時間が2時間ですから、この2時間が法定時間外労働であり、残業になります。月曜日に2時間の残業が発生したので、翌日の火曜日に年次有給休暇を取ることで、前日の2時間分の残業を無かったことにできるのかというと、それはできないのす。

年次有給休暇1日分が8時間分の労働時間に相当するとすれば、月曜日の残業時間が2時間で、年次有給休暇を労働時間に換算すると8時間分ですから、残業の2時間と年次有給休暇の8時間を相殺すると、まだ6時間分の相殺枠が残ってるんじゃないか、と考えることもできるのかもしれません。

年次有給休暇1日分で8時間相当なのだから、別の日に2時間の残業を4回できるんじゃないか、そんなふうに思ってしまうところです。

仮に、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、この4日間連続で10時間勤務をしたとすると、それぞれの日に残業が2時間ずつ発生し、合計で8時間の時間外労働となります。

ならば、金曜日に年次有給休暇を取れば、月曜日から木曜日まで発生した合計8時間の時間外労働を帳消しにできるのか。つまりは、相殺ですけれども、そんなことができるのかというと、できません。

法定労働時間は1日8時間、1週間あたりだと40時間ですから、これらの基準のどちらかを超えたら、その時点で残業は確定します。

月曜日に10時間働いたら、2時間の時間外労働は、その日のうち、月曜日のうちに確定となり、後日に年次有給休暇を取ったとしても、月曜日の残業を相殺で帳消しにすることはできません。

そうしたいという使用者側の気持ちは分かりますが、相殺を認めてしまうと、残業を帳消しにするために年次有給休暇を使わせられる可能性がありますので。

月曜日から木曜日まで毎日10時間ずつ働くと、4日間ですでに週40時間に達していますから、これ以上の時間外労働を回避するために、金曜日は年次有給休暇で休んでもらって、時間外労働の時間数を8時間に止める。このように年次有給休暇を使うならば可能です。

これ以上の時間外労働が1週間のうちに発生しないように、年次有給休暇を金曜日に入れておくことで、実労働時間の増加を避けていく。これならば残業時間と年次有給休暇を相殺していませんから問題はありませんし、長時間労働を回避する工夫の1つになりますね。

 

 

 

 

 

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