2014/8/25【効率的に仕事するとブラック企業になる?】



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効率的に仕事するとブラック企業になる?
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すき家はブラック企業?




株式会社ゼンショーが運営するすき家の労働環境改善について、第三者委員会からの調査報告書が2014年の7月31日に公開され、閲覧できるようになっています。

調査報告書
http://www.sukiya.jp/news/tyousahoukoku%20A_B.pdf


2014年3月頃から店舗クローズが増えていき、人手不足が理由であるとか、牛すき鍋の仕込みに時間がかかって他の仕事に割ける時間が減ったからなど、色々とニュースで出てきていましたが、私もすき家のお店を知っていますが、閉店しているお店を見たことはありません。

外で牛丼を食べることがないので、すき家に入って食事をした経験がないのですが、すき家が閉店していると言われていても、大阪のすき家で閉店しているお店を見たことがないのは不思議な感じです。中には入らずとも、外から見ても、いつも通りの通常営業という感じで、何か危機的なことが起こっている雰囲気は感じられません。

ワンオペ、ストライキ、長時間労働、ブラック企業などと言われているゼンショーですが、ネットの情報を読んでいると、さも会社が危ないかのように錯覚してしまうぐらいの感覚になりますが、実際にすき家の店舗を見てみると、週末には満席になるほどお客さんが来ているようですし、駐車場にもクルマがイッパイです。

外観では何も問題なさそうですが、第三者委員会に調査させるほどですから、内部では色々とあったのでしょう。



「労時」が基準の職場。




調査報告書を読んでいると、労時売上もしくは労時という言葉が頻繁に登場します(調査報告書 19ページ)。労時売上と言うと分からない人もいるかもしれませんが、一般名称を使うと、労時売上とは「人時生産性」と同じものです。

人時生産性は飲食店では良く知られている指標ですし、小売店でも使っているはずです。端的に言うと、利益に見合った投入労働時間を計算するための指標で、労働投入量が過大にならないようにチェックするには便利な指標です。

高校生の頃、ラーメンチェーンで働いていたとき、営業日報に人時生産性の数字を書き込んでいたのを見たことがあります。朝の11時にお店を開けて、お昼の時間帯が終わり、15時頃になると、フルタイム社員の人が営業日報に色々と書いていました。天気や営業数字、水道メーターの目盛りも記入しており、その中に人時生産性の項目もありました。

その頃はまだ10代でしたから、人時生産性の読み方も知らず、「『じんじせいさんせい』って何だ?」と不思議に思い、どうやって計算するのかも知らなかったし、何を意味するのかも知りませんでした。ちなみに、人時生産性は、「にんじせいさんせい」と読み、「じんじせいさんせい」ではありません。

人時生産性について知らなくてもいいぐらい繁盛していたラーメンチェーン店でしたから、「売上が、、」、「利益が、、」、「残業が、、」とヘンな圧力がかかることはなく、どんどんとお客さんが来て、数字のことで深刻な状況になったことはありませんでした。


ゼンショーでは労時売上と呼ばれている人時生産性ですが、この指標を基準に店舗ごとの業績や労働時間の配分を決めていたようです。もちろん、これはゼンショーに限ったことではなく、他の飲食店、さらには小売店でも人時生産性の数字を勘案しながら、労働時間の配分を決めています。ただ、ゼンショーでは人時生産性を重視する傾向が強かったため、色々とトラブルが起こったわけです。

労時売上の取扱いについては調査報告書の19ページに書かれています。では、実際に人時生産性に具体的な数字を当てはめて、どのような数値を当てはめると、どんな判断ができるか調べてみましょう。

例えば、会社が設定する人時生産性を9,000円/hとします。ちなみに、人時生産性は時間あたりの粗利益を表す数字ですから、この数字が高ければ高いほど効率的に利益を生み出していると判断できます。

そして、予測される粗利益を370,000円とします。さらに、求める総人時の数値を x とする。この場合、どれだけの労働時間を投入できるか。

計算式は、「人時生産性 = 粗利益 / 総人時」です。総人時は労働時間と言い換えて理解しても構いません。

上記の数字を当てはめると、9,000 = 370,000 / x
x = 370,000 / 9,000
x ≒ 41.11

よって、投入できる時間は、端数を切り捨てると、41時間です。

目標とする人時生産性を決め、想定される粗利益を把握し、計算式に当てはめると、利用できる労働時間の枠を算出できます。その算出した労働時間の枠内で仕事を処理すれば、会社が望む人時生産性の数値を実現できます。


もし、粗利益は一定で、目標とする人時生産性を11,000円にアップさせるとどうなるか。

x = 370,000 / 11,000
x ≒ 33.63

小数点以下を四捨五入すると、投入できる時間は34時間まで減ります。

粗利益が増えていないけれども、人時生産性の数値をアップさせたいならば、労働時間を41時間から34時間まで圧縮する必要があります。


人時生産性をアップさせるには、粗利益(計算上の分子)を増やすか総人時(計算上の分母)を減らすか、どちらかが必要です。低価格路線のすき家だと、粗利益を上昇させる余地はあまりなく、となると総人時をいかに減らしていくかが目的になります。

人時生産性の計算式で数字を当てはめて考えていると、総人時の数字がムダに思えてきて、一線を超えたところで総人時を減らすような行動を起こしてしまうのかもしれません。

総人時の数字を減らすには、計上されない労働時間を発生させる、いわゆるサービス労働が1つの方法になります。計上される労働時間がカットされるので、総人時の数字が減少し、人時生産性をアップさせます。

他にも、1時間残業したものの、記録上は30分だけにする方法もあります。この場合、労働時間が30分だけカットされるので、総人時の数字が減少し、人時生産性をアップさせます。

あとは、15分単位で勤務時間を記録して端数を切り捨てる方法も、総人時の数字を減らす要因になりますので、この方法も人時生産性をアップさせます。

休憩時間を増やして総人時を圧縮こともできます。労働時間であるべき時間を休憩時間に変えれば、総人時の数値が低下するので、人時生産性をアップさせることができます。他にも、休憩時間を取れていないのに取れているように処理するのも総人時を減らすことになり、これはサービス労働と同じです。

上記の総人時を減らす方法は、最初に提示した調査報告書に記載されており、実際にすき家で用いられていたものです。


すき家の代名詞である「ワオンペ」も上記と同じです。3人で仕事をするよりも2人で、2人よりも1人で仕事をする方が総人時が少なくて済みますから、会社が決めた労時売上(人時生産性)を達成するために、限られた総人時枠の中でワンオペにせざるを得なかった店舗もあるのでしょう。


すき家ではないものの、私も飲食店で仕事をしたことがありますが、1人ではすぐに作業が破綻します。

例えば、食事が終わってお客さんがお会計のためにレジに来て、それと同時に店の入口から来客があった場合、1人では同時に対応できません。そのため、より緊急度の高いお会計を先にして、来客にはレジの場所から「いらっしゃいませ」と声をかける程度でした。本来ならば、入り口まで迎えて、席まで案内するのが決まりでしたが、1人だと2つ以上の仕事が同時に発生した途端に思うように動けなくなります。

私の場合は1人で仕事をしていたといっても、あくまで一時的なもので、他の人が手を離せない状況であったため、やむなく1人で処理したのであって、常態的に1人で仕事をしていたのではありません。働いていた店では、アイドルタイムであっても3人はスタッフがいたので、1人で店番をするような場面はありませんでした。



安すぎる牛丼。




すき家では牛丼を250円で販売しているのですが、この値段の安さは私にはどうも安すぎる感じがします。牛丼は自宅でも簡単に作れる料理なので、牛丼を食べたいときは自宅で作って食べるため、私は牛丼店に入ったことはないのですが、お店の外からでも幟に書かれたメニューと価格を見ればその安さが分かります。

私が大学生の頃、学食で食べた牛丼でも、確か350円か380円だった記憶があるので、学食よりも安い牛丼を提供していることになります。学食のメニューはどれも「えーっ!?」と反応するぐらい安いのですが、それを超える安さを提示されると、「安いけれども、美味しくないんじゃないか?」と疑われかねないのではないかと思います。

もちろん、週末には混雑するほどお客さんは来ているようなので、味は美味しいのでしょうが、あの価格の安さには心理的な抵抗感があります。


マクドナルドのハンバーガーも一時は69円や59円まで下がり、2001年か2002年頃だったか、「こんなに安いの?」と思えるほどでした。あの価格だとほぼ原価を回収するぐらいで、ハンバーガーだけでなく、飲み物やサイドメニューで客単価を押し上げて利益を得る構造にしていたのでしょうが、衝撃的な安さでした。

業界でトップになったら、価格で勝負するのがセオリーなのですが、それにしても牛丼やハンバーガーの価格は限度を超えた安さに感じます。


ゼンショー過剰労働問題で牛丼値下げ戦争にピリオド
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140819-00057827-diamond-nb
( - 引用開始 - )
2009年以降、長く続いてきた牛丼値下げ戦争にピリオドが打たれそうだ。最安値を提供してきた牛丼チェーンの「すき家」が、ついに値上げを打ち出したからだ。

すき家を運営するゼンショーホールディングス(HD)は、8月27日から牛丼の並盛を税込み270円から291円に値上げ、その他のサイズも軒並み20~40円値上げする。

値下げ基調が続いてきた牛丼業界の潮目が変わったのは、4月の消費増税。直前まで280円で横一線だった牛丼並盛を、「吉野家」が300円に値上げ。「松屋」も、7月22日からチルド(低温保存)肉を使用した「プレミアム牛めし」を投入、380円という強気の価格を打ち出した。

これに対しすき家だけは、消費増税後も踏ん張って270円へと10円の値下げに踏み切る。だが、外食産業の関係者は、「経営的にはキツかったはず」と指摘する。

というのも、デフレ下の常とう手段は、インパクトのある大幅値下げを打ち出し、1皿当たりの粗利益の低下を客数増で賄うというもの。280円は原価ギリギリで、客数の増加は絶対条件だった。
( - 引用終了 - )


牛丼の値下げと言えばすき家と言っても過言ではない状況でしたが、すき家も牛丼を値上げするようです。

では、値上げするとどういう効果があるか。

目標とする人時生産性が9,000、そして値上げにより粗利益が10%アップしたと考え、370,000×10% = 407,000円になると仮定すると、投入できる総人時の数字はどうなるか。

上記の数字を当てはめると、9,000 = 407,000 / x
x = 407,000 / 9,000
x ≒ 45.22

総人時の数値が41.11から45.22までアップしました。つまり、4.11に相当する分だけ投入する労働時間数を増やせることになります。

ただし、値上げによって客数が減り、粗利益も想定していたほど増加しなかった場合は、総人時の増加幅も少なくなります。


私の感覚だと、牛丼ならば580円が適正価格なのではないかと思っています。1杯250円や300円の牛丼に慣れてしまうと、580円の牛丼は高いと感じるかもしれませんが、例えば、牛丼に味噌汁、お新香、小鉢の4点セットにすれば580円の価格でも納得できるでしょう。

24時間365日営業して、牛丼店をインフラ業のように考えていたようですが、食べたいときに食べれるのは良いとしても、あえてコンビニのように牛丼店が開いている必要があるのかどうかというと、私は必要ないと思います。外で牛丼を食べないタチなので、余計にそう思うのかもしれません。

夜間に仕事をする人が多い場所柄ならば、24時間営業もアリですが、郊外の住宅地に囲まれた店舗で深夜2時や4時にお店を開けておくべきかどうかは疑問です。とはいえ、時間を区切って営業するよりも、コンビニのように24時間営業にした方が商売としては上手くいくのかもしれませんから、簡単には判断できません。









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