ボーナスを人質にして有給休暇を取らせない(Tue.20140812)

有休取ったら「ボーナス減らす」 これって違法じゃないんですか?有休取ったら「ボーナス減らす」 これって違法じゃないんですか?  

 



Aさんは、大手企業から中堅メーカーに転職してきた30代の男性。新しい会社のさまざまなルールの違いに戸惑ってきたが、一番納得できないのが「有休消化」に対する考え方である。

前職では有休の消化は強く推奨されており、Aさんの消化率はほぼ100%だった。しかしこの会社では消化する人がほとんどいない。なぜなら、ボーナスの査定に大きく響くからだ。


転職先では有休を1日消化するたびに、ボーナスが1万円減らされる。20日間の有休を消化すると、20万円のボーナスがゼロになってしまう。これは実質的に有休を取らせないしくみではないかと人事に問い合わせたところ、こんな回答が返ってきた

「うちの会社の場合、ボーナスは言ってみれば皆勤手当みたいなものなんです。休んだ人のペナルティで給与を減らしているのではなく、皆勤してくれる人を奨励しているだけなのですよ」


これを書いている時点が2014年8月ですから、もう夏のボーナスを受け取った人も多いはずです。何に使うかワクワクするところですが、有給休暇の取得状況によってボーナスの支給額が変わる会社があるようです。

 

有給休暇を積極的に取得しているとボーナスが減額され、逆に、有給休暇を使わないとボーナスが減額されずに支給される。これにより皆勤を奨励している。これが企業側の主張です。

 

確かに、ボーナスの減額がされるとなると、有給休暇を取得せずに出勤しようと思う人はいるはずです。しかし、ボーナスをいわば人質にして有給休暇を取得しにくいようにするのは、なかなか卑劣な方法です。

 

ボーナスの支給条件や支給額の計算方法が就業規則や賞与規定でキチンと決まっているならば、恣意的な判断が入りにくいので、今回のようなトラブルも起こりにくい。しかし、支給条件も計算方法もハッキリしない会社だと、今回のように、有給休暇を利用している人はボーナスを減額するという処理ができてしまいます。

 

「有給休暇を取得した人に不利益な扱いをしてないけない」と言うのは簡単ですが、ボーナスで有給休暇をコントロールされると、対処が難しくなります。

 

「有給休暇の取得」と「ボーナス減額」との間に因果関係があるかどうか。この点が問題の焦点になります。両者に因果関係があれば、今回のような処理を無効にできるかもしれませんが、因果関係を証明できないとなると厄介です。

 

毎月の給与は変動させにくいのですが、賞与ならば会社の裁量でコントロールしやすい。つまり、給与と賞与では位置づけが異なるため、賞与を人件費の調整弁のように使っている会社だと、毎月の給与は少ないがボーナスがかなり多いという傾向があります。さらに、毎月の給与は基本給と手当でガチガチに固められているのですが、賞与となると支給条件も計算方法も企業の裁量で決定できます。

 

そのため、企業側が設定した条件を満たさない場合や、減額する上限に当てはまると、不支給になったり減額されたりします。例えば、賞与の計算期間に在籍していたものの、支給日には在籍していなければ賞与が支給されないルールを決めている会社があります。在籍した計算期間に相当する賞与は受け取れるべきとも思えますが、賞与規定や就業規則で支給日在籍を要件にしていると、賞与はゼロになります。

 

他にも、遅刻が多い人、早退することが多い人、残業が多い人などが賞与の減額対象になる場合も考えられます。

 

賞与の支給条件や計算方法を企業が任意に決められるのですから、有給休暇を取得した人を賞与の減額対象にしても、それは企業の裁量の範囲だと言えなくもない。しかし、ボーナスを減額されるという嫌がらせで皆勤へのインセンティブを与えるのは邪道です。

 

皆勤へのインセンティブを与えるならば、やはり皆勤手当を設けて対応するのがベターです。

 

イヤラシイ労務管理をしていると、徐々に人が企業から離れていき、行く末はブラック企業と言われ、会社そのものが消えてしまうでしょうから、「自分がやられてイヤなことはしない」のが労務管理の基本になるのかもしれません。

山口正博 社会保険労務士事務所
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