組合健保のウマ味が無くなる。(Thu.20140807)



企業健保:財政難にあえぐ 高齢者医療費の負担増重く
http://mainichi.jp/select/news/20140803k0000e020134000c.html


 企業の健康保険組合が財政難にあえいでいる。要因は、2008年度の後期高齢者医療制度発足時より1.5兆円増えた高齢者医療費の分担金だ。そうした状況で厚生労働省は、大企業健保にさらに負担を求めようとしている。より懐が苦しい市町村の国民健康保険(国保)の立て直しを狙ったものだが、その場しのぎの感は否めない。

 「(法定上限の)12%の保険料で予算が組めなくなったらどうすればいいのか」。東武百貨店などの健保、東武流通健保組合(8315人)の担当者は、危機感をこう言い表した。

 同健保は14年度、年収に対する保険料率を0.3ポイント引き上げ、10.8%とした。中小企業の従業員や家族が入る全国健康保険協会(協会けんぽ、約3500万人)の10%(都道府県平均)を超えている。収入額の43.4%に達する高齢者医療費の分担金が重くのしかかる。

 高齢化に伴い、高齢者の医療費は急増している。75歳以上の後期医療は08年度の発足時、加入者は1300万人で窓口負担を除く医療費は10.3兆円だった。それが14年度予算では1600万人、14.4兆円に膨らんだ。高齢者の保険料で賄うのは全体の1割。5割は税で、残り4割を企業健保などが支えている。65~74歳の前期高齢者(約1600万人)の医療費(約6・5兆円)には税投入がなく、やはり半分近くを勤め人の保険料に頼っている。

 健保は従業員700人以上の企業などが運営できる。健保を持つ大きな利点は、自助努力で保険料を抑えられることだ。なのに自力では克服できない高齢化によって、保険料率が国の補助金を受ける協会けんぽを上回るのでは、健保を維持する魅力は色あせる。

 東武流通健保は03年に栃木県那須町にあった唯一の保養所を売却、10年ごろには人間ドックへの補助も廃止し、9人いた専従職員は6人に減らした。11年度以降は積立金が底を突き、ほぼ毎年保険料を上げざるを得なかった。

 同健保も名を連ねる大企業の健康保険組合連合会(健保連、1410組合、約2900万人)は14年度、高齢者医療費の分担金に計3・3兆円を負担する。後期医療発足時に比べ8000億円増えた。総支出に占める割合は45%。8割の1114組合が赤字で、赤字総額は3689億円に達する。
 

 

会社に勤めている人の場合、健康保険に加入するとなると、健康保険組合に加入するか、都道府県単位の協会けんぽに加入するか。大きく分けて選択肢はこの2つです。

社員数が多い会社だと、健康保険組合があり、健保組合に加入することで健康保険を利用できるようになっている傾向があります。一方、社員数が多くない会社だと、都道府県単位の協会けんぽに加入して健康保険を利用している人が多くなります。

なぜ1つに集約せず、組合健保と協会けんぽの2つを設けているかというと、健康保険組合は自分たちで組合の構成員と保険料をコントロールできるので、協会けんぽよりも有利に健康保険を利用できる場合があります。

例えば、若い人たちが組合健保に多い場合、医療費は少なくて済むので、保険料が低くなります。支出が少ないので、集める保険料も少ないのです。一方、中高年の組合員が多いと、医療費が多くなるので、保険料が高くなります。支出が多いとそれだけオカネもたくさん集める必要がありますので、保険料が高くなります。

若い人が多い業界、例えばIT系の企業だと協会けんぽよりも組合健保を利用したほうが有利になるでしょう。中高年の社員の退職を促し、社員を若返りさせて、除々に組合健保の保険料を下げる方法もあります。

「じゃあ、若い人は健康保険組合に入ってもらって、中高年の人は協会けんぽに入ってもらえばいいんじゃないの?」
と、こういうオイシイところ取りを考えるかもしれませんが、組合健保に入るか協会けんぽに入るかは企業単位で決まるので、年齢別に分けるわけにもいきません。


保険料を低くできるという点以外にも、健保組合が独自に、インフルエンザ予防接種の費用を補助したり、人間ドックの費用を補助するところもあります。他にも、スポーツクラブへの優待とか、マラソン大会への参加補助という特典も考えられます。


健康保険は加入者が怪我をしたり病気にかかったりした場合に給付をする制度ですが、加入者への給付のためだけに保険料を集めているのではなく、高齢者向けの医療を支えるための費用も保険料に含まれています。

健康保険組合も高齢者向け医療の支援を行う必要があり、保険料の一部が高齢者医療の財源に組み込まれています。それが健保組合の保険料を引き上げる原因になり、中には協会けんぽよりも保険料が高くなる健保組合もあって、健康保険組合に加入している利点が薄れてしまっている組合もあります。



高齢者医療費の分担金が問題の焦点ですが、これは何か。

健康保険料の内訳は、医療に使う分、介護に使う分、高齢者医療を支える分、大きく分けてこの3つから構成されます。給与明細には「健康保険料」としか書かれていないこともあり、保険料の内訳は給与明細では分からないはずです。40歳未満の人と40歳以上の人の保険料を比較すれば、介護保険料については把握できますが、高齢者医療を支えている部分についてまでは分かりません。

例えば、平成26年度の大阪府の健康保険料は10.06%ですが、このうち高齢者医療へ回っている割合はどれぐらいなのか。それを知りたいところです。

高齢者医療への支援分を知るには、国民健康保険料の内訳を参考にすると、おおよその割合が分かります。国民健康保険では、所得の8%が医療分、所得の2%から3%が高齢者医療への支援になり、さらに2%程度が介護に相当する部分になります。

例えば、東京の世田谷区だと、6.30%が医療分、2.17%が高齢者医療の支援分、1.62%が介護分になっています。

保険料の計算方法 - 世田谷区
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/101/112/237/240/d00032129.html

他の市町村でも、高齢者医療の支援分は2%から3%程度です。ということは、組合健保や協会けんぽでも、2%から3%程度が高齢者医療への支援に充当されていると考えておおむね合っていると思われます。

10.06%の保険料の場合で、3%が高齢者医療への支援分だとすると、7.06%が医療用の保険料で、3%が加入している本人以外の高齢者へ回っていることになります。


健康な人がそうでない人を支えるのが健康保険制度の構造ですが、腰が痛いので病院に、膝が痛いので病院に、風邪をひいたので病院に、道路でコケて膝をケガしたので病院にと、程度の軽い怪我や病気まで健康保険でカバーできてしまうのが健康保険制度の良さではありますが、そのために負担する費用が増える原因にもなっています。

例えば、1万円未満の医療費の場合は健康保険を使えないようにするとか、医療費10万円未満の場合は自己負担を3割から5割にアップするなど、軽い病気や怪我の場合は病院を使わず、ドラッグストアで薬を買って対処するように誘導でもしないと保険料を下げられないでしょう。





山口正博 社会保険労務士事務所
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