育休を取得した看護師を不利益扱いして病院が敗訴。(Sat.20140719)



育休で昇給見送りは違法=勤務先に賠償命じる―大阪高裁
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014071800816&j4



 3カ月の育児休業を理由に昇給させないのは違法などとして、京都市の看護師三尾雅信さん(44)が、勤務していた病院側を相手に、給与などの未支払い分を求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁(小松一雄裁判長)は18日、育児・介護休業法に違反するとして、15万円の賠償を命じた一審京都地裁判決を変更し、約24万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 判決によると、三尾さんは2010年度に3カ月間の育児休業を取得。病院側は11年度、就業規則に基づき職能給を昇給せず、12年度には昇格試験を受けさせなかった。



判決を出したのが、2014年の7月18日、問題が起こったのが2010年から2011年にかけてなので、裁判というのは随分と時間がかかりますよね。

育児休業を3ヶ月間取得したところ、病院が就業規則で決めているように職能給を昇給せず、昇格試験も受けさせなかった。そのため、本来得られるはずだった給与が得られなくなり、その賠償を求め、裁判で勝訴したという内容です。


「育休の取得」と「昇給、昇格の見送り」、この2つの間に因果関係を認めたのがポイントでしょうか。他にも、職能給や昇格試験について就業規則にそれに関する記載があったのも勝訴の要因かもしれません。

「就業規則に基づき職能給を昇給せず」と書かれているので、この病院の職能給は年功給のようなものとして扱われていたのではないかと思います。つまり、勤続年数ごとに職能給が決まっていて、例えば勤続2年でプラス月額8,000円、勤続5年でプラス月額27,000円というように、勤続年数で職能給の内容が決まるようになっていた。

もし何らかの成果や成績に基いて職能給を決めるならば、「就業規則に基づき」とは書かない可能性が高いですから、今回の職能給は年功的に決まる給与だったと考えるのが自然です。


さらに、2012年の昇格試験は、おそらく職能給のアップと連動していたのではないでしょうか。前年に職能給がアップした人を対象に昇格試験を実施しているとすれば、職能給がアップしない場合、昇格試験も受けられないようになるはずです。

今回、裁判で看護師が勝訴したのは、病院の就業規則にハッキリと職能給の扱いや昇格試験について就業規則に書かれていたからでしょう。就業規則に基準が書かれていれば、それを取っ掛かりにして裁判官は判断できるので、後は「意休の取得」と「昇給・昇格」の間の因果関係の判定ができれば、判断を下せます。


もし就業規則に職能給や昇格試験に関する記載が無かったら、今回の判例のようにはならなかったかもしれません。就業規則にあまり手を加えていない会社で今回と同じことが起こったら、おそらく看護師は敗訴していた可能性が高いでしょう。


15万円、24万円の賠償額とのことで、随分と少額の訴訟です。本人訴訟の可能性もありますが、弁護士に依頼したとしたら、費用倒れしそうな額です。

この程度だと諦めてしまう人も出てきそうですが、男性でも育児休業を取得するのが普通になるには必要な裁判だったのかもしれません。




山口正博 社会保険労務士事務所
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