15,000円の商品を0円で買うパートのおばちゃん。(Fri.20140627)



携帯・パチンコ・主婦年金…自民が個人負担増案
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140626-OYT1T50018.html



自民党内で、専業主婦に年金保険料負担を求める案や、パチンコ、携帯電話所有に課税する案など、新たに個人負担を増やす施策の検討が活発化している。


 安倍政権の経済政策「アベノミクス」による景気回復が続く今なら、広く薄い負担増は国民に許容されやすいとの認識の広がりが、背景にあるようだ。

 自民党の有志議員で作る「多様な働き方を支援する勉強会」(会長・川崎二郎元厚生労働相)は25日、森女性活力・子育て支援相に社会保障や税の制度改革を求める提言書を提出した。

 提言は、サラリーマン世帯の専業主婦について、「年金保険料を支払わずに基礎年金の給付を受けられる第3号被保険者制度には、不公平感が強い」と指摘。月3000円程度の保険料を負担してもらうよう、5年後の導入を目指して法改正の準備を始めることなどを求めた。
 

 


サラリーマン世帯の専業主婦は、国民年金では「3号被保険者」という身分で扱われています。サラリーマン世帯の専業主婦というと、典型的な例を挙げれば「パートのおばちゃん」です。学生の方ならばご存知かもしれませんが、バイト先に行くと、アレコレと教えてくれる先輩のような方がいて、そういう方はパートの方だったりします。

3号被保険者というと専門用語なので、「あぁ、、何か難しい話なんだろうな」と思うかもしれませんが、国民年金の加入者タイプは大きく分けて3つです。

1号被保険者(以下、1号):学生、自営業の人など。
2号被保険者(以下、2号):会社で厚生年金に加入している人。
3号被保険者(以下、3号):パートのおばちゃん。

大雑把ですが、上記の3つが国民年金の加入者種別です。


1号の人は、国民年金だけに加入しています。保険料は、約15,000円です。学生だと、学生納付特例制度がありますので、在学中は保険料の支払いを免除されている方も多いはずです。

 

年金について - 国民年金保険料 | 日本年金機構年金について - 国民年金保険料 | 日本年金機構  


2号の人は、会社経由で厚生年金に加入している人です。「あれ? 国民年金の話をしているのに、なんで厚生年金なの?」と思うかもしれませんが、厚生年金に加入している人は同時に国民年金にも加入していると扱われます。そのため、国民年金では2号被保険者として分類されているのですね。

ちなみに、厚生年金の保険料には国民年金の保険料も含まれていますので、保険料を二重に支払う必要はなく、厚生年金の保険料を納付すると、自動的に国民年金の保険料も納付したと扱われます。


最後に、3号の人は、何度も書いていますがパートのおばちゃんが分かりやすい例です。3号として扱われると、保険料の負担なしで、保険料を全額支払ったと扱われます。

ニュースでは、「年金保険料を支払わずに基礎年金の給付を受けられる第3号被保険者制度には、不公平感が強い」と書かれていますが、3号の人は毎月の保険料は0円なのですが、約15,000円の保険料を支払ったものとして扱われているのです。つまり、15,000円の商品をタダで毎月貰っていると考えると分かりやすいでしょうか。

1号の人は毎月15,000円の保険料を支払いますが、3号だと0円になる。そして、どちらも保険料を納付したと扱われる。この差が不公平だと指摘されているのですね。

言うなれば、3号の身分はパートのおばちゃんの特権のようなものです。もちろん、3号になれるのは女性だけではありませんので、専業主夫の男性であっても3号の身分を得ることができます。

第3号被保険者(日本年金機構)
http://www.nenkin.go.jp/n/www/yougo/detail.jsp?id=155


不公平感を解消するために、3号の人も、現在は保険料は0円だけれども、これを月額3,000円にしようかと検討されているのです。

3号被保険者制度そのものを廃止してもいいとも思えますが、色々と事情なり抵抗なりがあって、そこまで一気に制度を変更するのは難しいのかもしれません。


3号の不公平感を解消する方法は、保険料をアップさせる方法以外にもあります。

 
1年ぐらい前でしょうが、週20時間以上の契約で働いているパートタイマーも厚生年金に加入させるという話がありましたよね。2014年6月時点では、週30時間以上のパートタイマーの人は厚生年金に加入していますが、30時間未満だと3号になっているはず。

もし、週20時間以上の勤務をしているパートタイマーを厚生年金の加入対象にすれば、現在は3号になっている人を2号に変えることができます。つまり、フルタイム社員と同じように、国民年金を含んだ厚生年金に加入させるわけです。

週20時間以上の勤務時間となると、学生以外のパートタイマーはほとんどが厚生年金の対象になるでしょう。ということは、今は3号であるパートのおばちゃんも2号に切り替わり、厚生年金の保険料を支払うことになります。もちろん、厚生年金の保険料には国民年金の保険料も含まれているので、間接的に国民年金の保険料も支払うことになります。

「じゃあ、それでいいんじゃないの?」と思うところですが、確かに社会保険の対象者を増やせば、多くの3号被保険者を減らせます。3号から2号へ切り替わる人も多くなるでしょう。

しかし、社会保険料の半分は企業が負担するので、この負担は相当なものになるはずです。


もし、国民年金だけで対処した場合、企業への負担はありません。国民年金の保険料を月額0円から月額3,000円に変えても、本人だけの負担ですから、企業側には負担はありません。

しかし、厚生年金に加入させて、3号から2号へ切り替えさせると、3号に対する不公平感を解消できるものの、企業への社会保険料の負担が発生する。



国民年金の保険料を3,000円にするのがいいか。それとも、厚生年金に加入させるのがいいか。

どちらも一長一短ですので、悩むところです。

パートのおばちゃんの立場で考えれば、2号被保険者になってしまった方がトクです。健康保険と厚生年金の保険料は発生するが、国民年金に単独で加入するよりも厚生年金に入ったほうがお得です。

例えば、月給90,000円ぐらいの人が厚生年金に加入すると、本人が支払う保険料は約8,300円で、企業は半分の保険料を負担するのでこちらも同額の約8,300円。合わせると、保険料は16,600円となる(100円未満の端数は取り除いています)。

(参考)
平成25年9月分からの厚生年金保険料額表(日本年金機構)
http://www.nenkin.go.jp/n/data/service/0000012996BOVV9Rekkc.pdf


もし、1号として国民年金に加入していれば、保険料は15,500円。一方、2号ならば、保険料は8,300円になる(本人負担分のみを考慮)。つまり、8,300円で、国民年金に加入でき、さらに厚生年金にも加入できるということになります。単独で国民年金に加入するよりもお得ですよね。

ただ、2号になると、健康保険では被扶養者ではなく自分で健康保険に加入する被保険者になりますが、健康保険の保険料を織り込んでもお得になるケースもあり得ます。


しかし、3号を2号に切り替えて社会保険の加入対象者を増やすとなると、企業は反対するでしょうから、おそらく3号の保険料を0円から3,000円程度に引き上げる結論になるのかもしれません。

山口正博 社会保険労務士事務所
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