book689(固定残業代にして、手当に残業代を含めて、残業代をケチろう。)




誰かが手引きをしているの?


残業代に関する話題は絶えませんね。普通に割増賃金を計算して、普通に支払うだけで残業代の話題はなくなるのでしょうが、現実にはそうはいかないようです。


就活中の学生が気づきにくい、募集要項の落とし穴
http://bylines.news.yahoo.co.jp/uenishimitsuko/20140301-00033140/

上記サイトでは、下記のような事例が紹介されています。

月給 220,000 円(基本給+現場手当)
現場手当(30 時間分の固定時間外手当)を含みます。

月給 220,000 円(「営業手当」を含む)
毎月60 時間相当分の時間外労働手当を「営業手当」として支給します。


前者では、現場手当が残業代となっていて、30時間分の残業代に相当するようです。さらに、基本給と現場手当が混ざっていて、内訳が分からないようにもなっています。

後者は、月給の中に営業手当が含まれていて、その営業手当が60時間分の残業代に相当する内容となっています。こちらも、ベースとなる給与と残業代として扱われている営業手当の内訳が分からないようになっています。


このような募集要項を提示している企業は昔からあったはずで、つい最近出てきたものではないでしょう。

時間外割増手当という名称を使わず、現場手当とか、営業手当という名称を使い、基本部分の賃金と残業代の境目を分かりにくくして煙幕を張る典型的なゴマカシノウハウです。

他にも、30時間、60時間というように残業代に上限を設けているのは、いわゆる固定残業代や定額残業代によるゴマカシノウハウです。また、年俸制に残業代を含めるのも似たようなものですね。


上記のように、各種の手当や残業代に時間制限を設ける方法が残業対策として用いられているようですが、こういうノウハウは会社内の人が発案するのでしょうか。社長とか役員の人とか、他には社長の奥さんや事務の人とか、そういう人たちが手当や時間制限を設けて残業代を減らすように仕掛けを作っているのか。

それとも、外部の人、社労士や弁護士、税理士などが残業代を不適切に減らすノウハウを教示しているのか。

普通に残業を管理していれば、割増賃金も普通に計算して支払うでしょうから、上記のようなゴマカシをすることもなさそうです。となると、誰かが手引きして教えているんじゃないか、そう思えてきます。






スマホのパケット定額と残業代は違う。


時間外割増賃金ではなく、現場手当や営業手当という名称にすれば残業代を減らせるということはありません。また、30時間とか60時間というように、残業時間に上限を設定してそれ以上の残業は認めませんなどとムクれることできません。


2014年時点では、1人1台の割り合いでケータイを持っていても不思議ではなくなり、スマホを持っている人も多くなりました。

スマホの契約では、パケット通信を自由にできる定額サービスがあり、一定の料金でタップリとネットを使えるのが特徴です。

そういうパケット定額サービスと同じような感覚で残業代を扱うと、ナントカ手当とかカントカ手当を用いて残業代を支払ったり、時間に上限を設けて残業代を固定化してしまいます。


ただ、現場手当や営業手当という名目で残業代を支払うことそのものはOKです。ただし、必要な割増賃金がキチンと支払われていることが前提です。

もし、20時間の残業が発生すれば、20時間分の割増賃金を現場手当や営業手当という名称で支払う。これならば、名称に問題があるでしょうが、法的には問題ありません。


残業時間を30時間や60時間に固定する固定残業代や定額残業代でも、固定枠の範囲内で残業をしているならば法的にOKです。

例えば、30時間の固定残業代を支給していて、23時間の残業を実施するとか、14時間の残業を実施するとなれば、法律に違反はしていません。ただし、30時間の枠を超えた場合、例えば37時間の残業が発生したならば、超過した7時間分については、追加で割増賃金を支払う必要があります。

残業の枠を固定することそのものは構いませんが、固定した枠を超えた時に割増賃金を精算する必要があるので、事務作業で二度手間が発生し、固定残業代や定額残業代にメリットはありません。

後から精算するぐらいならば、最初から残業時間に応じた割増賃金を計算すれば1回で事務作業は済みますから、やはり普通に残業代を計算するほうがいいですね。


13時間分の残業は、どんなにコネクリ回しても、13時間分の残業です。
21時間分の残業は、どんなにコネクリ回しても、21時間分の残業です。

ゆえに、普通に残業を取り扱うのが最も経済的です。




山口正博 社会保険労務士事務所
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