book688(ドワンゴの就職受験料に行政指導。ユニークさは常に批判される。)

良いアイデアほど反対される。


以前、ドワンゴの就職受験料について書いたのですが、

book643(就活には受験料が必要です。) - 労務管理のツボをギュッと押す社労士です


そのとき、面白い発想だと思っていたのですが、東京労働局が指導したようです。

ドワンゴ就職受験料、厚労省が中止求め行政指導
http://www.yomiuri.co.jp/net/news0/national/20140302-OYT1T00197.htm?from=ylist


 来春卒業予定の大学生らの採用を巡り、大手IT企業「ドワンゴ」(東京)が入社希望者から受験料を徴収する制度を導入した問題で、厚生労働省東京労働局が「新卒者の就職活動が制約される恐れがある」として、職業安定法に基づき、次の2016年春卒の採用から自主的に徴収をやめるよう行政指導をしていたことがわかった。

 同社は「対応は今後、検討する」と説明している。

 ドワンゴは、インターネットで応募手続きが簡単になり就職希望者が殺到しているため、「本気で働きたい人に絞り込む」目的で受験料制度を導入した。受験料は、運営する「ニコニコ動画」の語呂合わせなどで2525円に設定。交通費などが多くかかる地方在住者は免除し、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の学生に限って徴収するという。

 同社などによると、行政指導があったのは2月中旬。厚労省は「受験料制度が他社にも広がれば、お金がない学生の就職活動が制約される恐れがある」として問題視。来春卒業予定者の採用では、既に手続きのピークを過ぎているとして事実上、不問にしたが、16年春卒の採用からは徴収しないよう求めたという。

 労働者の募集に関し、職安法は「いかなる名義でも報酬を受けてはならない」と規定。厚労省は指導の中で、ドワンゴの受験料が「報酬」にあたるかどうかは明確に判断しなかったといい、同社の担当者は「受験料は報酬にはあたらない」との認識を示している。




新卒者の就職活動が制約される恐れがあるということらしいのですが、わずか2,525円で制約されるほどなのでしょうか。

おそらく、東京労働局には、ドワンゴを皮切りに他の企業にも広がると困るという懸念があるのかもしれない。ドワンゴだけならば大きな問題にはならないだろうけれども、他の企業が「おぉ、これは良いアイデアだ」と考え、同じように就職受験料を集めだすと、複数社に応募する人の経済的負担が大きくなるので、ストップをかけたのかもしれません。

「本気で働きたい人に絞り込む」目的ということなので、目的は妥当です。また、交通費などが多くかかる地方在住者は免除し、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の学生に限って徴収するので、対象者の範囲も適度なものです。さらに、集めたお金は全額寄付する(すでに集めたお金は日本学生支援機構に寄付した)ので、お金の使用用途も適切でしょう。


大学生の就活は、1社だけに応募して終わるものではなく、5社とか12社、人によっては30社も50社も応募する人もいて、本気の学生を企業が絞り込むのが難しい。そのため、何らかのフィルタリングを実施して、採用プロセスの負担を軽減し、同時に強い気持ちを持った学生を集めるために就職受験料という仕組みをドワンゴは導入したのでしょう。

労働局から指導されるほどのことなのかどうか。私は良い工夫で好感を持っているのですが、人によっては感じ方が変わるのかもしれませんね。


何でもそうですが、ユニークなアイデアは反対されるものです。もちろん、今回の件は東京労働局が悪いということはなく、労働局の懸念は妥当です。他の会社もドワンゴに続いてしまうと、確かに学生には負担になります。

しかし、新卒採用に伴う企業の負担を考えれば、就職受験料で応募者を選別することは悪い方法ではありません。




「とりあえず感覚の就職活動」もイケナイ。


とりあえずインターンシップに参加する。
とりあえず会社説明会に申し込む。
とりあえずエントリーシートを出す。
とりあえず適性試験を受ける。
とりあえず筆記試験を受ける。
とりあえず面接を受ける。

「数を打てば当たる」という感覚で就職活動する学生は今も昔もたくさんいて、そういう人達がいるから、採用にフィルタリングが必要になります。「とりあえず就活」に悩まされている企業は少なくないはず。

似たような内容のエントリーシートを大量に延々とチェックして処理しないといけない人達の気持ちを考えると、就職受験料を設定するのも無理のないことです。

就職受験料を嫌がって応募しない人がいれば、むしろ企業はそれを望んでいるはずです。


何年か前に、ソフトバンクモバイルが新卒の人に営業をさせて、成績を出した人に内定を出すというような採用方法を導入していたのですが、ずいぶんと顰蹙を買って、その採用方法をヤメてしまったことがありました。

ソフトバンクモバイルの場合も、ケータイ販売の仕事を本当にやりたい人を選んで採用したいと思っていたが、さほどノリ気でない人が大量に応募してきて困っていたので、営業成績で採用するかどうかを決める方法を導入したのかもしれません。


大学生の「とりあえず就活」がなくならない限り、企業の採用フィルタリングは形を変えて今後も実施されるでしょう。

ただ、大学生にも都合があって、なるべく多くの会社に応募して、内定を多く得ておかないと困るから、数を打つ就活をやめられない。

大学生の都合、そして企業側の都合。この両者が重なると、お互いに疲労する就職活動と採用活動が発生するのです。


私が大学生の頃、同期の人で、1社だけ応募して、その会社の内定を得て、そのまま就活を終えてしまった人もいた。確か、大学3年の春頃に内定を得ていたので、大学生活を1年10ヶ月ほど残して就活を終えた超早期終了タイプの就活だったようです。


誰もが自分の希望する会社1社に応募して、そこに入れば就活の苦労もなさそうですけれども、現実はそうはならないのかもしれません。

大学生側で応募社数を減らすのはムリでしょうから、やはり企業側で就職受験料のようなフィルタリングを実施していくのが妥当な解決法なのだと思います。



山口正博 社会保険労務士事務所
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