book683(派遣を規制したほうがいい?それとも規制しない方いい?)




■派遣を減らせば、フルタイム社員が増える。本当?


<派遣法>「無期」来春目指す 厚労省、改正案提出へ
http://mainichi.jp/select/news/20140130k0000m040101000c.html


派遣受け入れ期間の上限(現行3年)を事実上撤廃、3年を超えて派遣社員を使う場合、民主的な手続きで選ばれた労働者の代表から意見を聞いたうえで人を入れ替えれば、派遣先企業の判断で無期限に派遣を使うことができるようになる。

 派遣会社と無期限の雇用契約を結んだ人は期間の制限を受けず、これまでも無期限派遣が可能だった通訳などの「専門26業務」は廃止。派遣先による事前面接を解禁する案は削除され、待遇面では派遣先の正社員と「バランスを考えた均衡処遇を推進する」とした。

 経団連の米倉弘昌会長は「派遣社員にとっても(権利が)保障され、バランスが取れている」と評価した。一方、「NPO法人派遣労働ネットワーク」は「雇用安定と待遇改善への期待を裏切った」として建議撤回を求める声明を発表。事務職への派遣で7年間働いている千葉市の女性(32)は「派遣を抜け出したいと思っている人には正社員の仕事を得ることがますます厳しくなる」と語った。




派遣労働の規制については、もう何年もずーっと話が続いていて、常に経営者側と労働者側で意見が対立し、合意に至ることはなかったんじゃないかと思えるほどです。

経営者側の主張は、「規制しないほうが派遣で働きやすいし、派遣形態での雇用も増える」と展開され、労働者側は、「派遣を規制すれば、フルタイムでの雇用が増える。だから、派遣労働は減らしていくべき」と主張を展開する。

いつものパターンと言えばそうなります。

経営者側の主張と労働者側の主張、どちらに説得力があるでしょうか。


おそらく、人によって答えが分かれ、1つに答えが集約されることはないでしょう。

経営者側は、派遣という働き方があった方が働く人の選択肢が多くなるので望ましい、と考えている。確かに、フルタイムとパートタイムの二者択一だと、長時間勤務か短時間勤務の2つしかないので、本来ならば働けるはずの人が働けなくなる可能性がある。だから、派遣というメニューも用意すべきと主張する。

労働者側は、派遣という働き方があると、フルタイムで働ける人が派遣社員になってしまうので、いわゆる正規雇用が減ってしまう。だから、派遣労働を規制し、フルタイム雇用が増えるようにすべきだと主張する。

どちらも、それなりに説得力があり、間違った主張ではありませんよね。






■過去も今も、そして未来も平行線のまま。


「派遣労働を規制すれば、フルタイム雇用が増える」という点に私は疑問を持っています。

派遣を規制すれば正社員が増えるかのように話を展開するのが労働者側の典型パターンですが、本当でしょうか。

現実はそんなに単純なトレードオフは成立しないでしょう。


もし派遣社員を利用できなくなれば、「在籍している社員で対応する」、「パートタイム社員を増やす」、「契約社員を増やす」、「請負契約で仕事を依頼する」など他の選択肢を企業は選ぶのではないでしょうか。さらに、2014年時点だと、クラウドソーシングという選択肢もあります。

もし、派遣労働を規制して、派遣労働者が10万人減ったら、フルタイムの雇用が10万人増えるかというと、それは非現実的です。

「派遣社員が減る→フルタイム社員が増える」この流れの因果関係を説明するのは難しいでしょう。企業にとって選択肢は1つだけではありませんから、フルタイム雇用以外の選択肢を選ぶ可能性は十分にあります。


あまり話されていない事実として、実は正社員よりも派遣社員の方が賃金が高い場合があります。

派遣社員は低賃金だと思われていますが、賃金だけを見れば必ずしもそうではありません。私は大学生の頃に派遣形態でのバイトを経験したことがありますが、派遣先で直接に雇用されている人と派遣である自分自身の賃金を比べると、私の方が20%ほど高かったのです。

もちろん、派遣社員よりもプロパー社員の方が常に待遇が劣るというわけではありませんが、同時に、プロパー社員よりも派遣社員の方が常に待遇が劣るというわけでもありません。


派遣社員が減ればフルタイム社員が増えるという点が間違いないならば労働者側の主張を支持したいのですが、派遣を減らしてもおそらくフルタイムでの雇用は増えないでしょうから、派遣を規制するべきか否かと聞かれれば、私は必要以上に規制しない方がいいと答えるでしょう。





山口正博 社会保険労務士事務所
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