book670(残業代不払いはこうやって起こる。Part 3)




■3回連続で自己申告だ。


監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成24年度)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/chingin-c.html

参考1)賃金不払残業(サービス残業)の解消のための取組事例集
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/chingin-c_05.pdf

前回は、上記の事例2を題材にしましたが、今回は事例3を使います。


前回までの内容は下記の通りです。
残業代不払いはこうやって起こる。Part 1

残業代不払いはこうやって起こる。Part 2


今回の事例は、

『長時間労働及び賃金不払残業に係る具体的な相談があったことを契機として、監督署が夜間の内定調査を行い、あらかじめ時間外労働を行っている労働者がいることを確認した上で臨検監督を実施した。その際、労働者の自己申告に基づき残業管理簿に記載されていた時間外労働時間数と、監督署が内定調査で把握した時間外労働時間数との間に大きな相違が認められた』

という内容です。

Part1とPart2にも共通していますが、自己申告で時間を管理しています。

「残業代の未払い = 自己申告で時間管理」このように結びつけてもいいぐらい、自己申告で勤務時間を管理している会社が残業代を不払いにしているという印象を持ちかねない。

ウェブサイトで紹介されている事例は4つだけですから、他の会社も同様とは一概に言えませんが、自己申告で勤務時間を管理していると、どうしても「ちょっとぐらい修正してもいいんじゃないか」、「本来の始業時間はもっと早いんだけれども、9:55と書いちゃえ」そんな気持ちになってしまうものです。

自分で時間を変えられるとなると、軽い気持ちで変えちゃう。自己申告による管理だと、人の気持が入り込みやすくて、結果として正確な時間が記録されない状態になってしまうのかもしれません。


ただ、勤務時間を自己申告で管理することそのものはいいんです。チャンと正確に時間が記録されていれば。

しかし、自分の手で時間を記録できるとなると、恣意的な判断が入りやすくなり、正確に時間を記録したくても、何らかの障害が生じて、できない状況になってしまいやすい。

だから、自己申告以外の方法で勤務時間を管理する方が望ましいとされているわけです。

もちろん、簡素な方法で勤務時間を管理しているところであっても、正確に時間を管理できているところもあるでしょうから、一概に「自己申告による管理だから不適切」とは言い切れません。


事例3の業種は商業で、企業規模は約400人。商業ですから、卸売りの仕事か小売、あとは飲食店の可能性もあります。

400人の社員がいる会社ですから、1店舗だけで商売をやっているとは考えにくいので、小売ならばショッピングセンターやスーパー、衣類をチェーン展開して販売しているお店かもしれません。もし、飲食業ならば、こちらもチェーン展開しているお店かもしれません。


余計なことですけれども、事例3の賃金不払残業の状況に書かれている内定調査は、内定調査ではなくて、「内偵調査」でしょうね。内定を調べても労働時間のことは分からないでしょうから。おそらく、厚生労働省でこのファイルを作成した人のミスタイプでしょう。時間が経てばコッソリ差し替えられるはずです。




■残業管理簿を廃止してICレコーダーを導入。


勤務時間を記録する方法は色々あって、タイムカードが代表的ですが、他にも先ほどのような自己申告による管理がありますし、ノートに始業時間と終業時間を記入する方法、出勤簿を作って記入する方法、磁気カードやICカードを使って管理する方法などがあります。


珍しいのは、時間が記録された紙をレジから出力して管理するお店がありました。

私が高校生の頃にバイトをしていた居酒屋で、そこではタイムカードではなく、お会計のときに使うレジで時間を管理していました。

具体的には、従業員ごとに付番された番号をレジに入力し、点検キーのようなものを押して、レシートと同じ紙を出力する。出てきた紙には、従業員ごとの番号と日時が印字されていて、それを伝票を刺す千枚通しに刺しておく。これで打刻完了でした。

この方法だと、打刻機は要らないし、タイムカードを毎月用意する必要もない。時間を記録する方法としては意外なものでしたが、こういう方法もあるのだなと高校生の頃に思いました。


話を戻すと、自己申告よりはICカードの方が時間を記録する方法としては望ましいです。

ただ、Part1やPart2からの繰り返しですが、道具だけで残業代の未払いを防げるわけではなく、ICレコーダーで時間を管理しているというと、「キッチリしている」というイメージを抱きがちですが、あくまでレコーダーを正しく使っているという前提です。

始業前に仕事を始めたり、終業時間を記録した後も仕事を続けたり。こういうことが起こると、ICカードでも残業を把握できなくなります。


チャンと使ってこそ道具は役に立ちます。







山口正博 社会保険労務士事務所
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