book656(競業禁止されたら、転職できないよ。)




■「転職=同業他社に行く」人が多いんじゃないの?


1つの会社でずっと働き続ける人もいれば、途中で退職して他の仕事をする人もいる。

何らかの理由で仕事を変える場合、新たにどんな仕事をするか。


例えば、広告代理店で働いていた人が転職するとなると、おそらく次の仕事でも広告に関連する仕事を選択する可能性が高いはず。

他にも、板前として仕事をしていたならば、転職しても板前になる人が多いでしょう。また、レストランのコックだったならば、他のレストランでコックを続けるかもしれない。

つまり、働く場所は変わっても、仕事そのものはあまり変化がない。それが転職なのです。


もちろん、前職とは全く関連性がない異分野で新たに仕事を見つける人もいます。しかし、多くの人は、以前の経歴を活かすために、前職と同じ職種で仕事を見つけるのではないでしょうか。


会社によっては、就業規則に「同業他社で働いちゃいけません」という類の決まりがあって、同業である他の会社に転職しないように制約しているところもあります。

しかし、同業他社で働けないとなると、実質的に転職そのものを制約することにもなり、辞める社員さんにとっては困りモノです。


とはいえ、会社側には、自社のノウハウ的なものを他社に持っていかれると困るという気持ちがあって、同業他社への転職を制約したいという動機もありますよね。


会社の都合と退職する社員さんの都合、この両者をどうやって調整するか。ここが考えどころです。











■同業他社に行くな = 転職するな?


人間の能力は思っているほど汎用性は高くないと私は思います。

広告会社で働いていた人は、転職しても広告関連の仕事をするはず。
板前として働いていた人ならば、転職してもまた板前として働くはず。
パイロットとして飛行機を操縦していたならば、他社でもパイロットとして働くはず。

「転職=同業他社へ行く」これは自然なことで、パイロットをやっていた人がトラックの運転手になるとか、広告会社で働いていた人が居酒屋で働くとか。

こういう流れには無理があります。

今までの経験がゼロからになるので、どうしても二の足を踏んでしまうはずです。


もちろん、気分を変えたいので、異業種で仕事をするのもアリですが、多くの人はあまり乗り気になれないと思います。


もし、同業他社で働いてはいけないと決められたら、実質的に転職を禁止されるようなものです。

ただ、会社側の都合でどうしても禁止したいならば、禁止期間に応じた所得補填をするのが妥当ではないかと思います。

もし、1年間、同業他社へ行くことを禁止するならば、1年分の収入を退職手当に上乗せする。これぐらいやらないと、退職する人は禁止規定に同意できないでしょう。

不利な条件を受け入れるには、相応の対価が必要です。何も用意せずに、「同業他社に転職するな」と言われても、納得できませんからね。


よほどのノウハウや秘密情報を知っている社員さんならば競業避止義務を課されるのも納得できるのですが、さほどの情報を持っていない社員まで競業避止義務を課すのは度が過ぎる感じがします。

なんとなく競業避止義務の規定を就業規則に入れるのではなく、どういうポジションの社員がその義務の対象になるのか、義務を課すならばどういうフォロー(退職金の上乗せなど)をするのか。

対象者、フォロー策、この2点を考えた上で、競業避止義務の規定は作る必要があります。






山口正博 社会保険労務士事務所
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