book647(ダンダリン第10話 - タイムカードに計上されていない労働時間)




■残業代未払い問題は、段田をおびき寄せるための架空話?



やっと、第10話(http://www.ntv.co.jp/dandarin/story/10.html)まで来ました。

今回は、残業代の未払いが焦点ですが、アプリドリーム社長の飯野が段田に対する恨みを持って復讐しているので、単純な残業代未払いだけの話ではない。

ドラマに登場する会社であるアプリドリームでは、ICカードを使って社員の勤務時間を管理していて、勤怠データはデータベースにまとめられていて、個人別に参照できるようになっています。

ICカードを使って勤怠管理というと、さもキッチリしているというイメージがしますよね。


西東京労働基準監督署に残業代未払いの相談に来た美月ですが、本当に残業代未払いがあったのか。ドラマを観ていると、社長の飯野が段田をおびき寄せるために残業代未払いの問題があるかのように見せかけているだけなのではないか。そういうようにも理解できます。

実際に残業代が未払いになっているのか。それとも、残業代の未払いは実際にはなく、さもそれがあるかのように作出して、飯野が段田をおびき寄せて復讐しようとしているのか。

ドラマを観ていると、どっちか分からなくなった。


観終わって、考えてみて、おそらく残業代未払いと復讐は片方だけじゃなく、両方ともドラマに織り込まれているのだろうと私は思いました。つまり、実際に労働時間の改ざんなどがあって、残業代の未払いはある。さらに、その問題を嗅ぎつけて、段田が近寄ってくる。

わざと美月を西東京労働基準監督署に相談に行かせ、段田に残業代未払いの問題を認識させ、自分の会社に来させる。

調査の過程で、会社から指示を受けてアプリドリーム社員の美月が南三条の車に乗り、彼を罠にはめた。


アプリドリーム社長の飯野がすべてシナリオを作ったのではないか。そういう見方もできます。

残業代の未払いも段田凛を惹きつけるために意図的に行っていたのかとも思えますが、怨恨といえども、ここまで手のこんだことをしますかね。とはいえ、これはドラマですから、あえてストーリーとして作っているのかもしれません。


段田への復讐については最終回の話にするとして、今回は残業代の未払いがどういう経緯で起こるかを考えてみましょう。







■勤務記録の改ざんはどこの会社でも起こりうる。


勤務時間を記録する方法で最も知られているのは、タイムカードですよね。

細長く、硬い用紙に、マス目がイッパイ付いていて、タイムカードの打刻機に付いている始業と終業ボタンのいずれかを選択し、カードを打刻機に入れて、「ウィーン、ガチャコ」と音が鳴って、カードが打刻機の上に飛び出てくる。

日常的な光景ですよね。


もちろん、タイムカード以外にも勤務時間を記録する方法はいくつもあります。大学ノートを使って、ボールペンで始業時間と終業時間を記入する飲食店もありますね。私が大学時代に働いていたお店ではこの方式でした。タイムカードが当たり前だと思っていたので、「ずいぶんとアナログな方法を使うんだなぁ」と思ったものです。

他には、銀行のキャッシュカードのような磁気ストライプカードを使って、専用の記録機にそのカードをスキャンする方法を採用している会社もあります。

あとは、ドラマで出てきたような、ICチップ入りの社員証をカードリーダーにかざして勤務時間を記録するシステムもありますね。駅の自動改札機のようなゲートを会社の入り口に設置して、SuicaやICOCAのようにカードをかざして記録する会社もあるかもしれませんね。

社員数が多い会社だと、管理する勤怠データも多いので、こういう大掛かりなシステムが導入されているはずです。

他にも、ネットで勤務時間を管理するインターネットサービスもあります。


上記のように、勤務時間を管理する方法は様々ですが、どんな方法を用いても、不正が起こる可能性はあります。



ダンダリンで登場するアプリドリームでは、ICカードを使って勤怠管理していましたが、この方法でも不正は起こります。

例えば、10時が始業時間となっている会社があるとして、始業時間の1時間前(9時)に出勤して、その時点ではICカードで勤務時間を記録しない。そして、9時から仕事を開始し、9時57分に始業の記録をさせる。

こうすれば、実際は9時から仕事は始まっているのだけれども、記録上は9時57分から仕事が始まっているように見える。

勤務記録に表れない勤務時間ができあがります。


始業時ではなく、終業時にも同じような不正が起こる可能性があります。

18時が終業時間だとして、18時3分の時点で終業打刻を済ませて、その後も仕事を続ける。そして、実際に仕事が終わったのは19時43分だった。この場合、記録上は18時3分で仕事が終わっているように見えます。しかし、実際は19時43分まで仕事を続けていたので、1時間43分の「見えない労働」が発生していますよね。


始業前に仕事を始めたり、終業後も仕事を続ければ、記録には表示されない労働時間が発生します。


タイムカードやICカードシステムで記録された勤務データを正しい情報だと思い込む人もいますが、それはあくまで記録であって、正しいかどうかは別問題です。

タイムカードやICカードなどを使って勤務時間を管理していると、「チャンと時間が記録されている」と思いがちです。チャンとした道具を使うと、結果までチャンとしていると推測される。人の感覚はそういうものです。


例えば、Tシャツに短パン姿の人とスーツを着た人、この両者を比べて、どっちが信頼感があるかと言われれば、後者を選ぶ人が多いはずです。

人は、中身(データが正しいかどうか)ではなく外見(立派な道具を使っているかどうか)で判断することも少なくありません。

だから、データや文書で勤務時間が記録されていると、さも正しい記録であると思いがちなのですね。


ドラマでは、勤務記録の一覧を見て、問題なさそうと判断していましたが、コンピューターで記録しているならば、細かな操作ログも残っているのではないかと思います。例えば、始業時間を本来の時間よりも遅い時間に変更しているとか、終業時間を本来の時間よりも早い時間に変更しているとか、そういう変更のログが残っているかもしれません。

もちろん、ログを残さないシステムの場合はそういう記録は得られないし、本来の始業時間よりも遅く打刻したり、本来の終業時間よりも遅く打刻したりすれば、そもそもデータが入ってこないので、改ざんの記録も残らない。

記録された後から変更したりすれば痕跡が残るけれども、データが記録される段階で操作されていると痕跡が残らないので、残業代の未払いを発見するのが難しくなります。


タイムカードの打刻機の周りを撮影する監視カメラを設置したり、デジタルデータで勤務時間を管理する場合はデータ操作のログを残すなど、それなりの対策法はあります。

とはいえ、勤務時間に関する部分は不正が起こりやすいので、事前に対策を講じても、人間が管理しているデータである以上、不正行為が入り込む余地はあるんですね。










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山口正博 社会保険労務士事務所
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