book634(時間の分だけ仕事は膨張する。)





■空いてるスペースがあれば埋めたくなる。



突然ですが、タンスの中にモノを収納する余裕があります。この時、あなたならば何を考えるでしょうか。

「あっ! まだ入るわ。新しい服を買っても大丈夫ね」と思うでしょうか。
「いや、このタンスはこれぐらいが適度な収納状態だ」と思うでしょうか。

おそらく、多くの人は、前者のように思うのではないでしょうか。


人は、余裕があると、その余裕を何かに使いたくなる。そういう性格なのかもしれません。


収納以外にも、他に例があります。例えば、ノートを書くとき、ほとんどの人は左上から右下に向かって書いていくはず。左上からズラズラっと書いていって、隙間を空けると勿体無いので、なるべく余白が生じないように詰めて書く。そんなノートのとり方をしていた人、もしくは今している人、結構いるのではないでしょうか。

こんなことを言っている私も、学生の頃は、ノートを使うとき、左上から書いていって、あまりスペースは作らないタチでした。

余白を作りながらノートをとると、ページを多く消費するので、ノートを買う頻度が高くなります。だから、なるべく詰めてノートに文字を書く。

このようにノートを使うのは当たり前と思っていましたし、今でもこんな風に使っている人はたくさんいるはずです。



今では、ネット環境、通信機器、飛行機や新幹線など、時間を短縮する手段が充実しています。

以前ならば、相当な時間が必要だった作業も、今では一瞬で終わることができたりします。

ドンドン便利になって、本来ならばもっと短時間で仕事が終わるはずだけれども、働く時間は変わらない。むしろ増えたりする。不思議ですよね。

便利になれば、人が働く時間は減るはずですが、実際はそうなっていない。

便利になると、使える時間が増える。だから、やることをもっと予定に詰め込んじゃえ。そんな風に人は行動しているのかもしれません。




プラスティックの衣装ケースを買ってくると、満タンになるまで服を詰め込む。

タンスがあると、入るだけ入れる。空いている場所があると、「まだ服を買っても大丈夫」と思う。

下駄箱に履ききれないほどの靴をミッチリと入れ込む。

小さい冷蔵庫から大きな冷蔵庫に買い換えると、スーパーでイッパイ買い物をしてしまう。


人は余裕を見つけると、その余裕を何かに使いたくなる。そういう性なのでしょうね。


仕事でも上記と似たような状況に遭遇します。同じ仕事に取り組むとして、持ち時間が3時間だった場合と持ち時間が2時間だった場合とを比較すると、後者のほうがサクサクと仕事を終わらせる。こんなことありますよね。


仕事の内容や量を一定にして、時間だけを長短させた場合、時間の長い方は時間の分だけ仕事を引き延ばそうとするもの。一方、時間が短いと、その制約の中で、どこまで完成できるかを考えて、行動するようになる。


時間に余裕があると、その余裕の分だけ仕事が膨張する。これはノートや収納と同じです。


もし、時間に制約があれば、仕事の膨張を止めることができるはず。そのために、法定労働時間という制約があるのかもしれません。








■仕事を増やすことは簡単。けれども、仕事を減らすのは難しい。



労働基準法では、労働時間は、1日8時間、1週40時間までと制約されています。この時間を超えて働くと残業代が必要になるのはご存じの方も多いはず。

仕事をしていると、「なぜ8時間に制約するのか、自由にやらせてくれ」と思うときもあるかもしれません。確かに、仕事をどれだけやるのかは、当事者が決めるべきであって、法律で制約することに納得出来ない人もいるかもしれません。


ここで、ちょっと考えてみて下さい。

仕事に制限時間がなかったらどうなるか。


法定労働時間というのは、一種の制限時間ですよね。仕事に関連する制限時間というのは、法定労働時間だけじゃなく、個々の作業や製品の納期、調理の時間、パッキングの時間など、様々あります。

もし、法定労働時間による制限時間が余計だと感じるならば、他の仕事での制限時間も余計なものでしょうか。

例えば、3分で終わるべき調理を、10分もかけていたら、料理が冷めたり、材料が傷んだりするはず。30分で終えるはずのパッキングに60分も要していたら、他の仕事に使える時間が減ってしまう。


日常業務で制限時間を重視しているのに、なぜか労働時間となると制限時間は不要だと考えてしまう。

不思議ですよね。


もし、法定労働時間が1日6時間になれば、それに合わせて仕事も変わるはずです。「1日8時間でも足りないのに、6時間なんて有り得ない」そう思う方もいらっしゃるでしょうが、本当でしょうか。

1日8時間あるとして、その8時間の利用密度は均一でしょうか。人間が一度に集中できる時間は45分だと言われているので、8時間ぶっ通しで仕事の密度を維持するのは、まず無理です。

もちろん、仕事には気分転換が必要ですし、休憩も必要です。しかし、それを除いても、1日8時間という枠は大きいのではないかと思います。

もし、法定労働時間が1日6時間だったらどんなふうに仕事をするか。もし、法定労働時間が1日4時間だったらどんなふうに仕事をするか。そんなことを考えてみるのもいいかもしれません。



法定労働時間という制限時間がなければ、おそらく仕事の密度は今よりも低下するのではないかと思います。

人は、締め切りがなければ、動かない。人は、自由にすると、行動しない。適度にプレッシャーがかからないと、人は動かないものです。


だから、法定労働時間という制約を法律で設けて、半ば強引に制限時間を設けている。そんな風に考えることもできるでしょう。労働基準法のルールは何かと邪険に扱われる傾向があって、「そんな法律は無い方がいい」という人もいるかもしれません。

しかし、仕事に制限時間があるのは、法定労働時間で大きく時間を制約しているおかげなのかもしれません。


山口正博 社会保険労務士事務所
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