book630(産休と育休は同じもの?)




■同じ休みだけれども、似て非なるもの。


妊娠、出産するとなると、会社を休んで、準備を整える。この流れ自体はよく知られているところなのですが、「会社を休む」という部分で、ちょっと混乱を起こしている方もいらっしゃるのではないかと思います。

出産のために休むとなると、それはいわゆる「産休」と呼ばれるものなのですが、これを「育休」と解釈している方もいるのではないか。また、出産後に乳幼児を育てるために休むときは、「育休」という名目で休みますが、これを「産休」と考えている方もいらっしゃるのではないか。

つまり、育休と産休がゴチャ混ぜになって、「どっちも同じものだろう」などと考えられてしまっている。「まさか、産休と育休を区別できないなんてことはないだろう」と思う方もいらっしゃるでしょうが、意外と区別していない方もいらっしゃるのではないか。


休みという点ではどちらも同じですし、子供関連での休みという点でも同じです。しかし、両者にはチャンと違いがありますので、ここはキチンと分けておきたいところです。






■出産前後の休みが産休。子育て中の休みが育休。


産休は、正式には「産前産後休業」という名称で、労働基準法65条に書かれている内容です。

出産関連というと、健康保険のイメージが強いですけれども、労働基準法にも出産関連の規定があるのですね。

ちなみに、産前産後休業のときには、健康保険から「出産手当金」が支給され、さらに出産時には「出産育児一時金」もあります。

休みは労働基準法で、給付は健康保険で、ということです。


一方、育休は、「育児休業」という名称で、関連する法律は、育児介護休業法です。

1歳未満の子供を育てる際の休みを育児休業と表現し、こちらは産前産後休業とは違うものとして位置付けられています。

育児休業中の給付は、健康保険ではなく、意外にも雇用保険から支給されます。出産育児関連の給付は健康保険にまとめられていると思うところですが、雇用保険にも関連する給付はあるのです。

産前産後休業と健康保険の出産手当金がセットになり、出産時には健康保険の出産育児一時金、その後の育児休業の段階では、雇用保険の育児休業給付が登場する。

他にも、育児休業の時期には社会保険料の免除もあります。さらに、産前産後の時期にも社会保険料の免除がされる予定ですが、平成25年9月の段階ではまだ実施されていません。


産休や育休の仕組みがあっても、人の価値観がそれについて行かないと、うまい具合に仕組みは動かないもの。

産休しか取れず、育児休業は権利があっても取れない職場があったり、産休どころか妊娠すると、仕事を辞めることを前提に話を進める職場があったり、産休も育休も取得できる職場もあったり。

職場によって、産休と育休の運用はバラバラです。

産休は労働基準法での義務ですし、育休も申し出があれば取得させないといけない(http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h23_9.pdf)ところですが、なかなかスンナリとはいかないみたいです。


産休は、産前に42日、産後に56日ありますので、約3ヶ月です。産前産後休業でも3ヶ月の休みを取ることになりますので、権利といえども、休む本人は気を使うでしょうね。

さらに、育休となると、約1年の休みになりますので、こうなるとさすがに休めないという気持ちになってしまうのではないでしょうか。


2013年9月時点では、育休を3年にするという案も出ているようですが、1年の産休ですら取得が困難なのに、3年となると、もう絵に描いた餅になってしまうのではないかと思います。

私が思うに、今必要なのは、制度の充実ではなく「価値観の変化」です。

出産、育児関連の制度はもう十分に整っていますから、あとは職場の同僚や上司、経営者の価値観が変わり、出産や育児を受け入れるかどうか。ここがキモになるだろうと思います。


子供を理由に、当たり前のように早退したり、遅刻したりする人がいて、あまりいい気分になれない人もいるでしょう。子供がいない女性や男性にとっては、仕事のツケが自分に回ってきて納得出来ない気持ちもあるはず。

出産、育児で本人が休むとなれば、本人の賃金は発生しない(社会保険料など細かいものは除く)のですから、そこで生じた余剰の人件費を、休んだ本人をフォローする同僚などに手当として上乗せして、金銭的に納得してもらうのも一つの方法だと思います。

制度が充実しても、人の価値観がそれに伴わないと、空回りになってしまい、勿体無いところです。


山口正博 社会保険労務士事務所
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