book627(有給休暇を廃止すべきか否か。)



■使えない休暇ならば、固定の休日にしちゃえ。



有給休暇を遠慮無く使える職場、そんな職場はそう多くはないのではないでしょうか。

有給休暇があることそのものを知らされない職場。あるけれども他の人が使わないので自分も使えない職場。使えるけれども上司からグチを言われる職場。「ウチはそういうのはないんですよ」と事務を統括するシャチョーのオクサンが言う職場。

その他にも様々な理由で、有給休暇を使いにくい職場は少なくないと思います。

有給休暇は権利だけれども、行使しにくい権利になっているのは確かなことで、会社に勤めたことがある人ならば多くの人がそのことを感じているはず。小規模な会社やお店だと、有給休暇の取得率が0%のところもあるでしょう。


そこで、「じゃあ、有給休暇をなくして、固定の休日にしちゃえばいいんじゃないか。そうすれば、遠慮することもないし、グチを言われることもないだろう」と考え、有給休暇を廃止したらどうかと提案する方もいらっしゃいます。


『有給休暇制度』撤廃のススメ
http://blogos.com/article/67924/

『有給休暇制度』撤廃論の【補足説明】
http://blogos.com/article/68067/


上記のウェブサイトでは、有給休暇を廃止して、固定の休日に変えることで、有給休暇に関する悩みを解消しようと提言されています。

もし、まだ読んでいないならば、どうぞ一読してみて下さい。



権利なのに、使いにくい。だから、廃止して、固定の休日に変えてしまう。

確かに、使いにくい休暇よりは、固定の休日の方が心理的にはラクです。休暇の取得申請をする必要がないし、休暇の取得理由を説明する必要(時季変更するかどうかを判断するため、休暇の取得理由を考慮する企業もある)もない。時季変更したのに、ウヤムヤにされて、休暇そのものがなくなってしまったなんてこともない。

自分で裁量的に使える休暇よりも、強引にスケジュールに組み込まれた休暇ならば、何もしなくても休みになるので、事務手続きはいらないし、休む側もラクチン。


上記のように強引に固定休日として休む方が好まれるのか。それとも、自由裁量で休暇を取得できる方がいいのか。

これは簡単には判断しにくい部分です。


小規模な会社だと、まず有給休暇は取れない。だから、固定休日に変えてしまう方を選択する人が多くなるはず。

一方、中規模以上の企業になってくると、キチンと労務管理がなされはじめるので、有給休暇を取得できるところも増える。


有給休暇の消化率が高い人はそのままでいいと思うだろうし、消化率の低い人は固定の休日にしてくれたほうがいいと思う可能性が高い。

だから、有給休暇を廃止するとなると、判断が分かれてしまう。


上記のように人の判断は分かれるところですが、今回は、有給休暇を廃止して、固定の休日に切り替えることを想定して考えてみましょう。

有給休暇制度を廃止するとして、じゃあどうやって有給休暇に変わる仕組みを用意するのか。固定の休日といっても、どういうカタチで実現するのか。有給の部分はそのままなのか、それとも無給になるのか。


有給休暇を廃止した後、どういう仕組みになるのか。ここについて考えてみたいと思います。







■どうやって有給休暇を固定の休日に変えるか。



「有給休暇をなくして、固定の休日を増やす」。これだけを聞くと、漠然としたイメージしか浮かびません。

固定の休日を増やすといっても、日曜日や土曜日のような日を増やすのか。それとも公的な祝日を増やすのか。それとも、また別の方法で対処するのか。

さらに、無給の休日にするか、それとも有給状態を維持したまま固定の休日に変えるのか。


1,休日の増やし方。2,無給か有給か。この2点が問題となります。



まず、休日の増やし方から考えましょう。

休日を増やすならば、法定労働時間を現行の40時間から32時間に変更すれば、週休2日から週休3日に自ずと変わります。

法定労働時間が週40時間の場合、週5日勤務で、1日あたり8時間労働にすれば、週休2日になる。一方、法定労働時間を32時間に変えると、週4日勤務で、1日あたり8時間労働にすれば、週休3日になります。

1ヶ月を4週間だと仮定すると、週休2日から週休3日へ移行した場合、1ヶ月あたり4日の休日が増える。それが1年間となると、4日×12ヶ月ですので、48日の休日が追加されることになります。

1年で48日も休日が増えるとなると、これは増えすぎです。有給休暇は、もっとも少ない付与日数で10日であり、もっとも多い場合でも20日ですから(労働基準法39条2項)、週休3日に切り替えて有給休暇を廃止するとなると、年に48日の休日が追加されるので、やっぱり休日が増えすぎです。


また、週休何日にするかは会社ごとに決めることなので、現状で週休2日にすらなっていない企業もありますし、法定労働時間を短縮しても残業しちゃうと元の木阿弥です。


「休日が増え過ぎるならば、勤続年数に応じて固定休日の日数を決めればいいんじゃないか?」と思う人もいるかもしれない。

確かに、勤続年数に応じて休日の日数を決めれば、先ほどのように休日が大量に生じることもない。しかし、勤続年数に応じて休日の日数を決めてしまうと、それは以前の有給休暇の仕組みから変化がないことになります。有給休暇を廃止しておきながら、有給休暇の仕組みを使うとなれば、「じゃあ有給休暇はそのままでいいんじゃないの?」と言われかねない。


次に、無給か有給かという点について。

有給休暇を固定の休日に変えるとなると、他の休日と同じ扱いになる。土曜日や日曜日、祝日、これらの休日と同列に扱うのでしょうから、無給にするのが妥当です。

もし、固定の休日に変わったのに、有給の状態を維持するとなると、これもまた有給休暇との違いがハッキリとしなくなります。「有給の休日にするぐらいならば、有給休暇をそのままにすればいいんじゃないの?」と指摘される。



じゃあ、有給状態を維持した状態で、休暇を固定化させる方法はないのか。有給休暇と固定休日のイイトコどりができる。そんな仕組みがないのかどうか。

あります。

それは、計画有給休暇の仕組みで実現できます。

計画有給休暇制度は、有給休暇そのものは廃止しない方法ですが、「有給+休暇を固定化」という2つの効果を得られます。


「でも、有給休暇をそのままにするならば、話が振り出しに戻るだけなんじゃないか?」と思うところです。

お盆と年末年始に計画有給休暇を充当するのが妥当な解決策だと私は思います。

夏と冬に連休を取得する慣習がありますから、無給で休みにしてしまうのではなく、ここで有給休暇を一気に消化して、有給でお盆や年末年始を休むようにするのが現実的な解決方法です。

『お盆と年末年始に有給休暇を使う。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-168387

お盆と年末年始はほとんどの会社で連休になるのですから、ここに計画有給休暇を重ねあわせて、集中的に休暇を消化してしまえば、休暇の利用を促進できるでしょう。


取りたくても取れない、取りにくい有給休暇を廃止するのも悪い案ではないものの、有給休暇に変わる仕組みを提示できない以上、計画有給休暇で対処していくのが妥当だと思います。

山口正博 社会保険労務士事務所
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