book623(就職のために留年する学生。「第一志望は、ゆずれない」)




■大学にいる就職浪人。


「第一志望は、ゆずれない」。

わぁ、懐かしいですねぇ。代ゼミだねぇ。と思っていたら、調べると、駿台のキャッチコピーだった(笑)。

ちなみに、「志望校が母校になる」が代ゼミのキャッチコピー。


大学に進学する高校生ならば、「第一志望は、ゆずれない」という言葉はマッチする。第一志望という言葉は、学校に対して使うというイメージがあるので、学生が上の学校に進学する際にこの言葉を使うのは適切だと思う。

しかし、大学の卒業を控えた学生が、「第一志望は、ゆずれない」といって、就職のために留年するのは、どうなのか。

最近といっても、おそらく数年前からだろうけれども、2008年9月に起こったリーマン・ショックによって、企業が人材採用を控えた時期に、内定を得られない大学生が増えた。その時に、卒業してもしばらくは大学に残れるように、延長在籍の制度を設けた大学があった。確か、半年から1年まで、在籍期間を延長して、翌年度の就活にも参加できるように、大学が対応したと記憶しています。

すべての大学で上記のような対応をしていたかどうかは定かではないのですが、私の出身である明治大学では実施していたように記憶しています。2013年現在では、そういう制度が残っているのかどうかは調べても分かりませんでしたが、在籍期間を延長するメニューを大学側からは用意してはいないのかもしれません。2008年から2009年ごろまでの時限的な対応だったのかもしれない。

おそらく、学生が自主的に判断して、就職のために留年するかどうかを決めている。今はそんな状況なのだと思います。



第一志望の企業から内定をもらえなかったので、来年も同じ企業を受けるため、留年する。

受けた企業すべてから内定をもらえなかったので、来年も就活するため、留年する。

もう中小企業しか残っていないので、就活する気が失せた。


上記のような理由で留年するのが良くあるパターンなのではないでしょうか。

高校受験や大学受験と同じような発想で就職を考えている。そんな考えが伝わってくる理由です。



学校を受験するのと同じ考えで就活を考える。つまり、「受験≒就活」と思われているフシがあって、受験で浪人する人がいるんだから、就職で留年してもいいだろうと考える。

さも一理ありそうな考えですが、学校を受験する場合と同じように就職を考えていいものかどうか。ここが考えどころです。








■新卒の肩書きをキープする大学生。


今や、大学受験のときの浪人と同じ感覚で就職も捉えられるようになってきたのでしょうか。

浪人する人もいれば、いわゆる「仮面浪人」の人もいましたね。

私が大学1年の頃、4月から授業は始まるのですけれども、第二外国語であるスペイン語の授業に出席していた同期の人がいた。夏休みに入る前ぐらいか、夏休みが終わった後かはハッキリと覚えていないけれども、ある時を境に授業に来なくなった。

入学して3−4ヶ月ぐらいの期間だったけれども、周りの人達の話しでは、その人は仮面浪人していて、別の大学に行く準備をしていたとのこと。

せっかく入学した大学を数ヶ月でヤメて、わざわざ他の大学を受験しなおして、そちらに移る。何だか時間もオカネも勿体無いと思うのですけれども、その人には譲れない何かがあったのでしょうね。

浪人や仮面浪人で自分の希望する学校へ行く。そういう選択は以前からあったし、今でもあるのだと思います。


しかし、コトが就職となると、受験と同じようには考えにくい。

もし、就職を理由に自主的に留年すれば、他の人は卒業して大学からいなくなっているのに、一人だけポツンと大学に残る。これは寂しいですよ。

また、大学に延長して在籍するとなれば、学費も必要です。学ぶために在籍しているわけではないのに、学費がかかる。何だかヘンな感じですが、大学に在籍しているということは、その大学にとって顧客ですから、料金は必要でしょう。

大学によっては、延長在籍する場合は、学費を安くするところもあったように思います。今もそのような制度があるかどうかは不明。大学側の措置で留年させるのではなく、自主的に留年するとなれば、学費を減らす理由はあまり無さそうです。



学生気分を会社に持ち込んでいるイベントを探すと結構ありますよね。


例えば、入社式は入学式に該当します。入社や入学の時期は同じ4月ですよね。

お盆休みは夏休み。

社員旅行は、遠足や林間学舎、修学旅行。

年末年始の休みは、冬休み。

退職は卒業式。


年始は4月、年末は3月。学校も、4月が年度初めで、3月が学年末です。


会社の創立記念日は、学校の創立記念日。


会社というのは、学生の頃の価値観や気分を持ち込んで作られている、そんな組織なのかもしれません。見た目は大人、心は子ども。そんな人が仕事をしているんですね。

そういう遊び心のようなものが仕事には役立ったりするものです。


上記のように、学校のイベントと会社のイベントが対応していると、学校の延長線上で就職を考え、学生気分を社会人の世界に持ち込む人がいても不思議なことではなさそうです。



人によっては、公務員試験を受けるとか、大学院に進学する予定だとか、国家試験を受けるつもりだとか。目的を持って留年する人もいるのかもしれない。そういう人はいいとしても、就職がうまくいかなかったからという理由で留年するメリットはあるのかどうか。

留年した後、再度、就活の時期になると、企業の採用選考を受けるのでしょうが、ここで根掘り葉掘り色々と聞かれる可能性がある。

就職留年すれば、名目上は新卒かもしれないが、純粋な新卒ではないので、「なぜ留年したのか」と必ず聞かれるだろう。そこで、どうやって切り返すのか。

単に「同じ会社をもう一回受けたかったから」という理由では、マズいんじゃないか。

「中小企業に行くのが嫌だったから」では、マズいんじゃないか。

「内定を1つも取れなかったから」では、マズいんじゃないか。

どれもネガティブな理由です。


海外留学に行ったとか、どこかの国へ放浪の旅に行っていたとか。何かを残すような時間の使い方をしていないと、印象が良くないのではないか。


就職留年した人たち以外にも「第二新卒」という人たちがいますよね。

第二新卒の場合は、留年せずに就職した人たちなのですが、何らかの理由で入社して数ヶ月で仕事を辞めてしまった人ですから、留年している人よりはまだ前に進んでいる感じはします。


昔、といっても10年ぐらい前は、就職のために留年するとか、第二新卒などという言葉もなく、いずれも「既卒者」として扱われていたように思います。



労働移動が盛んではない固定的な労働市場では、安易に意思決定してしまうと、後から修正が難しいので、望ましい結果を得られそうと判断するまで行動しないという判断もあり得る。例えば、内定をもらえた会社にまず入って、そこで数年働き、そこから将来を考える。そんなプランは立てにくい。


既卒になれば、中途採用の市場に入らないといけなくなる。だから、新卒の身分を維持しておき、次のチャンスに備える。そのために、自主的に留年する人が出てきているのかもしれません。


新卒求人は多いけれども、中途採用の求人は多くないし経験者でないといけないことが多い。もし、職業経験がない状態で中途市場に入ってしまうと、抜け出せなくなる。そう考えて、、新卒身分を維持するために、就職留年する。

よく考えているといえば、考えています。


留年するという判断が良いかどうかは、本人が決めることですから、これに対して良し悪しを言うこともないと思います。



新卒一括採用で人を集める企業は多く、中には新卒しか採用しない企業もあり、それらの企業に行きたければ、どうしても新卒の身分が必要になる。となると、留年して、新卒状態を維持しておき、お目当ての企業に再応募する学生が出てくる。

おそらく、新卒を特別扱いする限り、就職留年する人は今後も出てくると思います。


新卒と既卒では、有利さが異なります。多少ヘンテコな人でも、新卒ならば採用されたりするものです。

私が高校生の頃、「コイツを採用した企業があるのか。大丈夫なのか?」と思うことは1回じゃなかった。能力的に問題がありそうな人でも、新卒ならばドサクサ紛れに企業に入り込むことができると知ったのはその時です。

体さえ健康であればできる仕事ならば、基礎学力に問題があっても、差し支えないのかもしれませんが、それにしても新卒という肩抱きはつくづく便利ですよね。

特定のカラーに染まっていない。企業の思想にそまっていない。型が固まっていない。素直に言うことを聞く。つまり、可塑性が高いという理由で、新卒が好まれているのかもしれない。





リーマン・ショックの時期に始まった就職留年という手段ですが、一度このような手段があると知ってしまうと、それを使う人が出てくるのは仕方のないことです。



事の発端は、2009年頃に、大学側が学生をフォローするために、在籍期間を延長するメニューを学生に提示したところから始まります。

ここで学生は「おっ! そんな仕組みがあるのか」と考え、「じゃあ自分も在籍期間を延長するか」と続く学生が出てくる。

大学側は、在籍期間を延長する希望をあえて拒否することもない。学生はお客さんだから、在籍している限り学費が入ってきます。


一時的なモラトリアム的施策が残存している。それが2013年現在の状況なのかもしれません。



ただ、留年して、形だけ新卒を装っていても、エントリーシートを見れば分かりますから、純粋な新卒と同列で扱ってもらえるかどうかは分かりません。

ぜひ、学生には悔いのない選択をしてもらいたいです。

山口正博 社会保険労務士事務所
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