book607(病欠に有給休暇を使うと、困るかもしれない。)



有給休暇を使えば給与が減らない。だから便利。




病気で仕事を休むとき、そのままだと当日の給与がなくなるので、事後的に有給休暇で処理している。そんな会社、少なくないのではないでしょうか。

私自身も、病気で休んだ時に有給休暇で振り替えてもらっていた経験があります。便利で助かりますよね。

よくあるのは、風邪で休んだ日に有給休暇を充当する場面。結構あるんじゃないでしょうか。冬の時期ならば、インフルエンザで休むときに有給休暇を使うとか。ただ、インフルエンザの場合は、会社によっては特別有給休暇が設定され、手持ちの有給休暇を使う必要がないところもありますね。

他にも怪我をしたときも有給休暇を使うかもしれない。捻挫したとか、骨折とか、打撲とか。業務中の怪我ならば労災で対処しますが、私的な怪我の場合は自己対処になりますから、有給休暇を使う場合があるはず。


病気や怪我で休むときに有給休暇を使うと、便利で助かるのですけれども、場合によっては不都合な結果を招くこともあります

例えば、普段は休暇を使いにくい職場だと、病欠ぐらいしか休暇を使う方法がない。そのため、わざと病欠で休み、休暇を消化する人が出てくる可能性がある。旅行に行くとか、温泉に行くという理由では休暇を取りにくいけど、病欠ならば休暇を使える。そういう職場だと、上記のような有給休暇を充当する仕組みが悪用されるかもしれない。

普段から休暇を利用できる職場ならば、あえて病欠で有給休暇を消化しなくてもいいでしょう。仮病を使ってまで休暇を利用する動機がありませんから、仕組みを悪用される可能性は低い。


良かれと思って運用している仕組みが、思わぬ結果を招く。病欠に有給休暇を充当する場面がその好例なのかもしれない。







病欠に有給休暇を使うのは、諸刃の剣。




有給休暇を消化する目的で病欠されてしまうと、本来出勤するべき人がいなくなるわけですから、出勤している他の人に影響が出る。さらに、他の人の仕事が増えて、残業になり、勤務時間が延びて、人件費を増やすかもしれない。

病欠に有給休暇を充当している会社は、就業規則にこの点について書いていないはず。「病気で欠勤するときは、有給休暇を欠勤日に充当する」なんて就業規則には書けませんものね。有給休暇は自由に利用するのが前提ですから、休暇の使用用途を限定するような規定を就業規則には書けない。

だから、有給休暇の病欠振替は、就業規則に基づかない暗黙の処理になってしまう。さらに、就業規則に基づかないから、運用方法が定まらず、仮病で有給休暇を消化するような人まで出てくる。


病欠に有給休暇を充当することは悪いことではないし、法律で禁止されているわけでもない。

労働義務の無い日には有給休暇は使えないのですが、有給休暇をどのように利用するかは当事者が決めることであって、欠勤日を有給休暇に振り替える場合もある。

「じゃあ、病欠で有給休暇を使えないようにすればいい」と思うところですが、実際はそうならない。

社員さん自身は病欠時に有給休暇を使うことを望むでしょうし、会社もその望みに応じるでしょう。つまり、当事者の思惑が一致しているために、病欠時に有給休暇を使わないようにする可能性は低い。

もし、会社で、上記のように有給休暇を欠勤日に充当しているならば、仮病で有給休暇を消化する人が出てくることを覚悟しないといけないでしょう。


便利な仕組みには、副作用があるものです。





山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所