book587(BYODとMDM。)





■通信機器の持ち込みと管理。



最近では、高性能な携帯端末が流通してきて、生活もさらに便利になってきたように思います。

以前だと、携帯電話の機能は、電話だけとか、電話とメールだけ、ネットはオマケ程度という状況だった。画面は小さく、思ったような操作をするにはちょっとシンドイのが携帯電話でした。

しかし、今では、携帯電話でPCと同じことができる。携帯電話といっても、従来のパカパカと開けるケータイではなく、指のタッチで操作するスマートフォンが主流になりつつあり、性能もPCとほぼ同じぐらいのものが使われている。

カメラ機能もあり、さらには、ビデオ撮影する機能もある。テレビ電話のような機能がついている端末もあり、これ以上何をするのかと思えるほど充実しています。

これだけ機能が充実してくると、端末の中には個人的な情報や会社や組織に関する情報がたくさん記録されていて、もし端末を紛失すると、困る場合もあるはず。単純に電話だけできる携帯電話やポケベル(今はもうないかもしれない)ならば紛失してもさほど困らないのかもしれないけれども、PCのように使うスマートフォンだと電話帳、メールの内容、さらにはウェブサービスとアカウントでリンクされているならばそこに保存されているデータなど、芋づる式に情報がつながっていて、1つの端末を失うと多くの情報を失う可能性がある。

また、カメラやビデオの機能を利用して、会社内の情報を持ち出すこともできる。書類をカメラで撮影したり、ビデオで話の内容を録音したり、さらに、ビデオならば一定時間にわたって映像を保存できるので、書類を網羅的に撮影することもできるはず。

さらには、個人情報を抜き取るアプリケーションも流通していて、通信の内容を他者に知られる可能性もある。

便利になると、同時に厄介なことも起こるのが世の中の常ではあります。


最近では、「BYOD」と「MDM」という言葉を目にしたり、聞いたりするときがあるかもしれません。

BYODとは、Bring Your Own Device の頭文字を合わせたもので、自分が所有している通信機器を職場に持ち込むことを意味しています。携帯電話、スマートフォン、タブレット型の通信機器などが Device の代表例です。さらに、ビデオカメラやデジカメも Device の中に含まれるのではないかと私は思います。

また、MDMとは、Mobile Device Management の頭文字で、通信機器を管理することを意味しています。例えば、業務用に利用している携帯電話のシリアル番号を台帳に記録しておくとか、社内に持ち込む通信機器を会社に登録しておく必要があるとか、さらには、アプリケーションをインストールさせて、そのアプリケーション経由で端末の利用状況を把握するという方法もある。

会社側の立場で考えると、情報が漏洩しないように通信端末の管理を厳格にしようとするはず。一方、社員側の立場で考えれば、自分のスマートフォンや携帯電話は自由に使いたいし、会社から使い方や管理方法を決められたくないと思うはず。さらに、通信内容をアプリケーションで把握するとなると、プライバシーを侵害する可能性もあるので敏感な問題になる。






■個人の所有物を管理・監視できるかどうか。


通信機器には2種類あって、「自分で契約して所有する端末」と「会社が契約して社員に持たせている端末」の2つがあります。

後者の場合、会社が契約し所有しているのでしょうから、端末を会社が管理するのは自然なことです。それゆえ、通信内容を管理されても、取り立てて反対するものではない。もし、管理されるのがイヤならば、自分自身で持っている携帯電話などを使えばよいので、不利益なこともない。

しかし、個人的に所有している端末を会社が管理するとなると、物議を醸す。例えば、自分のスマートフォンに通信内容を把握するアプリをインストールするように指示されれば、おそらく嫌だろう。自宅の鍵を会社に渡すようなものだから、気持ち悪いと感じるはず。


私の経験だと、飲食店で働いていたとき、携帯電話などを仕事場に持ち込んではいけないというルールがあった。ルールといっても就業規則で決められているほどのものではなかったと思うが、業務中は携帯電話を持ってはいけないという決まりだった。更衣室の置いておいて、仕事中には持ってはダメだった。

とはいえ、2,000年から2,002年頃の話なので、その頃は携帯電話といっても今のように多機能ではなかったし、通信料金も高かった。だから、ほとんどの人は電話とメールだけで、ケータイのネットを使っている人はそんなに多くなかったように思う。それゆえ、職場内に通信機器を持ち込まなくても差し支えなかったのかもしれない。

しかし、今では暇さえあればケータイの画面を見ている人も多い。ちょっと手ぶらになればケータイをポケットから取り出しコチョコチョといじる。電車の中でずっとケータイの画面を見ている人もいるし、休憩時間の間はずっとケータイを触っている人もいますよね。歩きながらケータイを操作している人や自転車に乗りながらスマホの画面を見ている人もいる。

もう、空気のように通信端末を使っていて、手放すことは考えられないくらいに生活に密着している。

こんな状況で、通信機器を管理しきれるのかどうか。


自分の端末を持ち込むときには、シリアルを会社で記録し、端末を管理することもできると思えるけれども、これだと端末そのものを管理できても、どのように使われているかという部分までは管理できないのではないか。個人所有の端末ならば、必ずしも業務用途にだけ使うとは限らない。むしろ、私的な用途で使うのが普通だろう。

アプリで社員の位置や通信内容の監視をすることもできるが、ここまで露骨なことができるだろうか。ましてや本人が個人的に所有している通信機器に監視アプリを入れるのは難しいだろう。


通信機器の管理はどこまでできるのかについては、法律で判断できる範囲ではない。技術的な方法で管理できるとはいえ、完全な方法ではないはず。



余談ですが、携帯電話に制限を課している一方で、人間の脳には制限を課されないのは興味深い。

人間の脳は映像や言葉、文字を記憶することができるので、スマートフォンと同じぐらい厄介なはずなのに規制されない。ただ、同じぐらいといっても、記憶の容量では通信機器の方がはるかに多いので、人間の脳は放っておいても差し支えないのかもしれない。すぐに忘れますからね、人間の脳は。

さらに、脳を取り外すことはできないので、持ち込むな(!?)とも言えない。この点でも、通信機器と違って脳は規制されないのかもしれない。





山口正博 社会保険労務士事務所
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